- 著者
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大西 修也
石川 幸二
金 大雄
林 南壽
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2003
当調査研究は、文化財の保存と修復に欠かせない基礎資料を最新の光学機器(ミノルタVIVID910デジタイザー)とデジタル技術を応用して作成し、その復原的研究をめざしたものである。国内調査は対馬・黒瀬銅造如来坐像を対象に平成14年に実施、韓国調査は磨崖仏や大型石仏を対象とした野外調査が中心であるため、文部省科学研究費補助金の支援と現地関係機関各位の協力を得て行なわれた。平成15年度調査:慶尚北道にある奉化郡物野面北枝里磨崖石仏及び栄州広域市可興里磨崖三尊仏の実測調査と3Dデジタル化作業を行った。北枝里磨崖仏は、高さ6メートルに及ぶこの地域最大の磨崖石仏で、新羅彫刻のもつ北方的要素の解明に欠かせない重要な作品と見られている。可興里磨崖三尊仏は、2003年6月下旬に起きた洪水で遺跡の一部が崩落、三尊石仏を彫刻した岩盤も背後の母岩から剥離していることから、遣跡保存に向けた総合的な科学調査の一環として、緊急調査を行った。ただし、可興里三尊仏には屋蓋施設がないため、太陽光が弱まる夕刻から夜間にかけて作業を行わなければならず、昼間に宝閣を有する北枝里磨崖石仏を、夕刻から可興里三尊石仏の実測調査を行う手順で実施した。平成16年度調査:忠清北道忠州市の中原鳳凰里磨崖石仏、及び忠清北道清州市の清原飛中里三尊石仏の実測とデジタル化作業を行った。中原鳳凰里磨崖石仏は、北の高句麗仏教の南下を示す重要な遺跡といわれるが、急峻な山腹にあるために発電機をはじめとする大型機材の搬入が難しく、光学機器を設置する足場も確保できない状況であるため、これまで大規模な調査が行われてこなかった。今回行った遺跡のデジタル化と高精細画像の収集により、写真や拓本では判読できなかった群像の詳細(菩薩半跏思惟像と脇侍菩薩の着衣や荘厳)が明らかになった。平成17年度調査:〓里廃寺址出土石造如来立像は、破損して12個の断片に分離した上半身と光背を接合した本体と台座からなる。本体は慶州国立博物館で保管され、台座は慶州市月城郡陽北面の寺址に残されたままである。博物館の調査では、如来立像の上半身部分と収蔵庫に保管されている断片3個、廃寺址の調査では高さ1.7mに達する八角台座をデジタイザーで実測した。なお〓項里廃寺には、第一層塔身の四面に仁王像を浮彫りした五層石塔が二基残っており、完形をとどめる西石塔の浮彫のデジタルデータを収集した。