著者
オーバーヒューマ パメラ 泉 千勢 林 悠子
出版者
大阪府立大学
雑誌
社會問題研究 (ISSN:09124640)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.119-134, 2005-12

世界の多くの国で、乳幼児保育は公共政策の注目を集めている。質の良い保育サービスの提供と、生涯にわたる学習のための良い基盤を保障することについての議論では、カリキュラムに関する問題が新しく生じている。子どもについて我々は何を理解しているのだろうか。子どもたちは、周りの世界にどのようにアクセスし知識を構築しているのだろうか。大人は、子どもが学びの機会を効果的に高めるために何ができるのだろうか。一般的な価値観、伝統、優先事項等によって、このようなカリキュラム課題に対して答え、規定するためのアプローチの仕方は各国で異なる。The State Institute of Early Childhood Education and Research in Bavaria/Germany(バイエルン州立乳幼児教育研究所)を基盤にした最近の調査研究では、世界12カ国の30人の研究者による、革新的で論理的で実証的なカリキュラム研究が行われた。カリキュラムモデルとして、ヨーロッパ5カ国(デンマーク、フランス、ポーランド、スコットランド、スウェーデン)とヨーロッパ以外の5カ国(オーストラリア、チリ、中国、ニュージーランド、ナイジェリア)のカリキュラムが、その目的と理論的位置づけ、主要な学びの領域、評価方法、小学校との連携、といった点において分析された。本論文では、この国際比較研究での結果の概要を抜粋して紹介し、国家間の共通点と相違点を特定し、研究と政策のアプローチに関して課題を提起する。
著者
林 悠子
出版者
佛教大学
雑誌
社会福祉学部論集 (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.77-94, 2011-03-01

本稿の目的は,保育の質において重要であるとされる「過程の質」は保育者にとってどのように経験されているのかを,保育記録の質的分析より明らかにすることである。筆者が保育者として記した保育記録の内容をKJ法を用いて分析した結果,保育者がその日の実践を振り返り書き残したことは8つのグループに分類でき,その特徴から保育者は子ども・保育者・職員・保護者との関係性を重視していることが明らかになった。グループ間の意味の連関からは,子どもの育ちへの願いを持った保育者が子どもと出会い,子どもの行為の意味を考え,次の関わりを展開する,保育者と子どもとの関わりの積み重ねの中に「過程の質」が見いだせることが考察できた。