著者
楽木 章子 藤井 厚紀 東村 知子 八ッ塚 一郎
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.149-155, 2018-03-12

養子、養親、および養子の実父母に対して学生が有するイメージに焦点をあて、学生が養親当事者と交流することによって、そのイメージがどのように変化したかを、当事者との交流前と交流後のアンケート調査を比較することを通して明らかにした。分析の結果、①養子の実父母についての批判的なイメージが同情的なイメージに変化すること、②養子についての「かわいそうで心配な」イメージが減少し、これに代わって「その他(自由記述)」の回答が顕著に増加することが見出された。また自由記述の回答の増加を、養子に関するイメージの多様化として捉え、単語の出現頻度、新出単語、単語同士の連関に着目して再分析した結果、「普通」という単語の出現、および、「普通→子ども」「普通→家庭」という連関が新たに生じていることが見出された。このことから、当事者との交流は、学生に養子縁組家庭を身近なイメージをもたらす効果があることが明らかになった。This paper focused on stereotypes of adoptive family in Japan, i.e. adoptive parents, adopted children, and their birth parents. An adoptive mother was invited to talk about her experience to University & College student in 5 classes. The effect of the talk was examined by comparing the pre- and post-class questionnaires. The results revealed that (1) negative images of birth parents changes to sympathetic ones, (2) free description about adopted children in questionnaire significantly increases contrary to decreased pity stereotypes. Focusing of the words in free description, the word "ordinary '" was newly appeared and the word "ordinary" and "children/family" were linked together. It was found that the tales by an adoptive mother made the students feel closer to adopted families.
著者
楽木 章子 東村 知子 八ッ塚 一郎
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
no.25, pp.75-85, 2019-03-12

家族関係の多様化にも関わらず、今なお、大多数の日本人にとって、「家族とは血縁で結ばれた親子を基本にする」という直結規範(産むことと育てることを直結させる家族観)が、その根底にある。この家族観は、「血縁のない親子をも認める」という分離規範(産むことと育てることの分離を是認する家族観)と対立し、養子縁組家庭の存在を意識的・無意識的に疎外している。本研究では、圧倒的多数派(直結規範)による支配的言説と、これに対する圧倒的少数派(分離規範)の対抗言説を言説領域ごとに検討する。具体的には、(1)学校という空間における支配的言説とその対抗言説、(2)実父母に対する支配的言説とその対抗言説、(3)身近な人々による支配的言説とその対抗言説、(4)メディアによる支配的言説と対抗言説を取り上げ、これらを具体的な事例に即して検討する。
著者
中山 満子 野村 晴夫 池田 曜子 東村 知子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ママ友関係について調査検討を行った。ママ友への役割期待では、自律性、類似性、支援性の因子が得られた。特に支援性への期待が高く、女子大生の友人関係と似ていることも示唆された。同時に自律性への期待が女子大生より有意に高いことも特徴であった。悩みの類型では、子ども関連群、ママ友パーソナリティ関連群、多様群が得られ、この類型により関係のとらえ方傾向、対処方略に差異が認められた。
著者
東村 知子
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.140-154, 2004 (Released:2004-04-16)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

日本の高校教育は,高校全入の時代を迎える一方,多数の不本意入学者や高校中退者という新たな困難に直面している。サポート校は,こうした事態に対応するものとして生まれ,現在まで急速に発展してきた。サポート校とは,通信制高校に在籍する生徒の卒業資格取得をサポートする私塾であり,不登校や高校中退を経験した生徒が数多く通っている。本研究では,あるサポート校C学院においてフィールドワークを行った。C学院における教育実践は,以下の3つの特徴―(1)教師と生徒が親密な関係にあること,(2)ふだんの授業では,学習よりも生徒が学校を楽しいと感じることが重視されており,高校卒業資格取得については特別な授業が設けられ,徹底した指導が行われていること,(3)教師が生徒一人一人に合わせた丁寧な対応を行っていること―を有していた。これらの特徴が,C学院に多く在籍する,不登校経験のある生徒や学力の低い生徒にとって有効であることを,事例研究から明らかにした。このように,サポート校における教育実践は,一般の学校にはない意義を有するものであるが,サポート校は学校教育を代替することはできない。その理由を,「制度化された教育」と「制度化されない教育」(林,1994)という観点から考察した。「サポート校=制度化されない教育」と「学校=制度化された教育」では,常に後者に正統性が与えられるがゆえに,サポート校は困難や矛盾を抱えることになる。意義と矛盾を共に抱えこむサポート校のあり方は,われわれが暗黙のうちに支えている学校教育制度の正統性に疑問を呈し,その再考を迫るものである。
著者
東村 知子
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.122-144, 2005 (Released:2006-02-18)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究では,就学前障害児の通園施設において,卒園児の親が自らの語る「物語」を通して,通園児の親を支援するという試みを行った。具体的には,かつて施設に在籍した子どもの母親のメッセージを,現在通園している親に伝えることによって通園児の親に対して心理的な支援を行い,世代を超えた親同士のネットワークを作り出すことを目指した。第1部では,この試みを行った背景として,長期にわたるフィールドワークをもとに,障害児をもつ親の抱える問題を通園開始から卒園まで時間軸に沿って詳述し,施設における支援の意義と課題を明らかにした。第2部では,やまだ(2000a)のライフストーリー論にもとづいて筆者が行った具体的な試みについて考察した。その際,物語の「内容」に着目するのではなく,語られた物語と「物語る―聴く」という相互行為が,語り手である卒園児の親と聞き手である通園児の親,および両者の関係性に対してもつ意義に焦点をあてて分析を行った。その結果,語られた物語が,語り手と聞き手の間での行き来を通して,両者にとって自らを映し出す「鏡」のような役割を果たしていること,そのように他者を通して自らの姿を見つめることが,親が障害のあるわが子をしっかりと受けとめ,自信をもって育てていくために必要なプロセスであることを見出した。さらに,通園施設におけるこうした試みを,障害児を育てる親のネットワークづくりのプロセスとして位置づけた。
著者
東村 知子
出版者
公益財団法人 集団力学研究所
雑誌
ジャーナル「集団力学」 (ISSN:21854718)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.69-80, 2006-06-01 (Released:2013-04-16)
参考文献数
4

本研究は、障害児の親のピアサポートグループにおける支援の意義を明らかにするものである。地域の障害児親の会の中で、学齢期の子どもの親が中心となっている「T会」においてフィールドワークを行い、定期的なピアカウンセリングと学習会の2つの活動について考察した。ピアカウンセリングでは、主に教師や周囲の保護者との関係について話し合われ、学習会は、親と学校が新しい障害児教育に共に取り組んでいくための関係づくりの場となっていた。T会の意義として、①親の多様な経験がグループとして蓄えられ、アドバイスに生かされていること、②親にとって必要な時に頼れる「基地」となっていること、③外部の親にも情報を発信し、親と関係者をつなぐ取り組みを行っていることの3点が見出された。
著者
浜田 壽美男 無藤 隆 瀬渡 章子 西村 拓生 本山 方子 天ヶ瀬 正博 鈴木 康史 麻生 武 酒井 敦 掘越 紀香 東村 知子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

園庭には、一方には、教育設備としての園庭があり、他方には、社会資本としての園庭がある。園庭は、子どもの活動の生態系において多様な機能をもち、重層的な意味を有し、生活と学校教育に連続性をつくる機会を提供している。本研究では、園庭の歴史的変遷や園庭デザインの今日的特性、園庭利用の実際と子どもの活動の実態を調査、検討し、園庭の環境デザインの在り方と教育的意義について明らかにした。