著者
小山 秀美 加世田 景示 上西 愼茂 今村 清人 坂元 信一 大島 一郎 片平 清美 河邊 弘太郎 岡本 新 小林 栄治 下桐 猛
出版者
日本動物遺伝育種学会
雑誌
動物遺伝育種研究 (ISSN:13459961)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.3-7, 2019 (Released:2020-01-28)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

黒毛和種で発生する白斑は、品種の特性に負の影響を与え、一部で経済的損失となる損徴の1 つである。本研究では、Fontanesi ら(2012)によって西欧品種で白斑の有無と関連があると報告されたMITF 遺伝子の変異(g.32386957A&gyT )が黒毛和種でも存在することを確認し、白斑の有無との関連性を検討した。材料には鹿児島県産黒毛和種79頭(正常40 頭および白斑39 頭)のゲノムDNA を供し、ダイレクトシークエンス法および対立遺伝子特異的PCR法(AS PCR)により当該変異の確認および遺伝子型判定を行った。その結果、黒毛和種でも当該変異の存在を確認できた。さらに、これらを白斑群と正常群に分け、遺伝子頻度についてカイ二乗検定を試みた結果、両群間の遺伝子型構成に高度な有意差があり(P = 1.53 × 10-6)、当該変異が黒毛和種の白斑の有無にも強く関連することを示した。しかし、一部で例外が確認されたことから、当該変異だけでは白斑発生の全てを説明できないことも示唆された。
著者
奥村 直彦 小林 栄治 鈴木 秀昭 両角 岳哉 濱島 紀之 三橋 忠由
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.222-234, 2000

ブタの品種特異的な塩基配列を明らかにする目的で,2種類の毛色関連遺伝子の多型を調べた.ランドレース,大ヨークシャー,デュロック,バークシャー,ハンプシャー,メイシャン,モンカイ,ニホンイノシシについて,メラニン細胞刺激ホルモンレセプター(MClR)遺伝子の第2膜貫通領域を含む612bpの塩基配列を調べた.また,KIT遺伝子のエクソン16から19にわたる約4Kbpについて,上記の8品種に加えヨーロッパイノシシとユカタンマイクロブタの塩基配列を調べた.MClR遺伝子については測定した品種全体で多型部分が8箇所あり,6種類のハプロタイプが得られた.ハプロタイプの1つはデュロック特異的であった.ランドレース,大ヨークシャー,バークシャー,ハンプシャーは互いに共通の配列を有しており,MClR遺伝子の情報のみではこれらを識別することは不可能であった.メイシャンの配列はモンカイと同じであり他の全ての品種と異なるハプロタイプを持っていた.KIT遺伝子ついては,全品種で62箇所の多型が認められ,11種類の異なったハプロタイプが得られた.KIT遺伝子の17番目のイントロンの最初の塩基は優性白色ブタと有色ブタとで明確に異なっていた.イントロン部分の配列比較の結果,塩基置換の類似性が観察された.すなわち,ニホンイノシシ,メイシャン,モンカイ,バークシャーの配列は類似しており,これらは東洋起源と推察される.ヨーロッパイノシシ,大ヨークシャー,ランドレース,デュロックの一部で配列は類似しており,これらは西洋起源と推察される.また,鹿児島県産の一部のバークシャーの配列はユカタンマイクロブタと類似していた.本研究で対象とした2つの遺伝子には,毛色の異なる品種それぞれに特異的な多型が存在していた.