著者
奥村 直彦 小林 栄治 鈴木 秀昭 両角 岳哉 濱島 紀之 三橋 忠由
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.222-234, 2000

ブタの品種特異的な塩基配列を明らかにする目的で,2種類の毛色関連遺伝子の多型を調べた.ランドレース,大ヨークシャー,デュロック,バークシャー,ハンプシャー,メイシャン,モンカイ,ニホンイノシシについて,メラニン細胞刺激ホルモンレセプター(MClR)遺伝子の第2膜貫通領域を含む612bpの塩基配列を調べた.また,KIT遺伝子のエクソン16から19にわたる約4Kbpについて,上記の8品種に加えヨーロッパイノシシとユカタンマイクロブタの塩基配列を調べた.MClR遺伝子については測定した品種全体で多型部分が8箇所あり,6種類のハプロタイプが得られた.ハプロタイプの1つはデュロック特異的であった.ランドレース,大ヨークシャー,バークシャー,ハンプシャーは互いに共通の配列を有しており,MClR遺伝子の情報のみではこれらを識別することは不可能であった.メイシャンの配列はモンカイと同じであり他の全ての品種と異なるハプロタイプを持っていた.KIT遺伝子ついては,全品種で62箇所の多型が認められ,11種類の異なったハプロタイプが得られた.KIT遺伝子の17番目のイントロンの最初の塩基は優性白色ブタと有色ブタとで明確に異なっていた.イントロン部分の配列比較の結果,塩基置換の類似性が観察された.すなわち,ニホンイノシシ,メイシャン,モンカイ,バークシャーの配列は類似しており,これらは東洋起源と推察される.ヨーロッパイノシシ,大ヨークシャー,ランドレース,デュロックの一部で配列は類似しており,これらは西洋起源と推察される.また,鹿児島県産の一部のバークシャーの配列はユカタンマイクロブタと類似していた.本研究で対象とした2つの遺伝子には,毛色の異なる品種それぞれに特異的な多型が存在していた.