著者
土屋 亮輔 栗栖 宏多 後藤 秀輔 小林 理奈 小泉 博靖 櫻井 寿郎 小林 徹 竹林 誠治 瀧澤 克己
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.11, pp.796-803, 2021 (Released:2021-11-25)
参考文献数
19

解離性脳動脈瘤破裂に対し開頭術で治療した2症例を報告した. 症例1は血腫の局在と前大脳動脈 (A1部) のわずかな形態変化から, 同部の解離の破裂と診断した. 血腫除去, および直視下に穿通枝を温存した破裂点を含む母血管のtrappingを施行した. 症例2は右椎骨動脈解離の破裂で, 対側椎骨動脈はposterior inferior cerebellar artery (PICA) endであった. 破裂点を含んだ血管形成的なpartial clippingを行い, 椎骨動脈の血流温存を図った. 穿通枝や母血管の血流温存を図りながら急性期の再破裂予防を達成するという観点からの開頭手術の有効性が示唆された.
著者
横畠 和宏 森国 麻里 小林 誠治 西森 大地 安井 正顕
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1212, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに】劇症型心筋炎は急性心筋炎の中でも重篤な臨床経過をたどるが,回復すれば遠隔期予後は比較的良好とされている。基本的治療は炎症極期における循環動態の破綻を的確に補助し,自然治癒を待つとされており,長期間不動状態となるが,その後の心臓リハビリテーション(以下,心リハ)経過の報告は少ない。今回,劇症型心筋炎症例に対して炎症極期離脱後より介入し,退院後も継続して心リハを行った症例を経験したので報告する。【方法】症例は51歳男性,感冒症状持続にて当院紹介入院。入院後急激に心機能低下,Vfを認めICU入室し,IABP,PCPS導入,大量γグロブリン療法,カテコラミン治療開始となる。2病日にLVEF10%,CCI0.7L/min/m2となった。7病日より左室壁運動は徐々に改善を認め,8病日PCPS離脱,10病日IABP抜去,14病日人工呼吸器離脱,15病日より心リハ開始となった。バイタル,自覚症状をモニタリングしつつ離床を開始した。介入当初より四肢骨格筋の筋力低下を認め,離床に併行して筋力トレーニングを実施した。18病日より歩行開始,23病日に500m連続歩行可能となり病棟ADLは自立,24病日よりエルゴメーターによる有酸素運動を開始した。28病日にCPXを施行し32病日に自宅退院となった。運動耐容能低下や労作時の易疲労は持続しており,退院後2ヶ月間週1回ペースで心リハを行い,運動,生活指導を継続,CPXにて運動耐容能の再評価を行った。【結果】心リハ介入前LVEF20%,CRP1.36mg/dlと左室収縮能,炎症反応は炎症極期に比べ改善傾向であり,退院前LVEF55%,退院2ヶ月後LVEF62%と左室収縮能は正常化した。心リハ介入前後でBNP1102.7→19.6pg/dlと改善を認めた。CPXは退院前AT8.6ml/min/kg,VE/VCO2 slope38.7,退院1ヶ月半後AT11.6ml/min/kg,VE/VCO2 slope28.7と改善傾向を認めたが,end pointは下肢疲労感であった。【考察】本症例は劇症型心筋炎による左室収縮能の低下における末梢循環不全に加えて,炎症極期における鎮静・筋弛緩剤の使用,長期不動によるdisuse atrophyを認めており,筋力や運動耐容能の低下を来たしていた。ICU生存退室者において筋力が著明に低下していることが報告されており,本症例においても同様の筋力低下が問題点に上げられた。本症例の心リハを進める上で,左室収縮能や炎症反応などの疾患特有のリスク管理のもとの離床プログラムに加えて,早期から継続的な筋力トレーニングの実施が,機能障害やQOLの低下予防に有用であったと考えられる。炎症極期離脱し,左室収縮能は退院時には改善を認めたが,筋力低下や運動耐容能の改善には時間を要し,退院後の心リハ継続の重要性を示唆する症例であった。