著者
宮崎 大 久保田 哲史 林下 浩士 鍜冶 有登 小林 大祐 吉村 昭毅 和田 啓爾
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.956-960, 2010-12-15 (Released:2011-02-09)
参考文献数
15
被引用文献数
1 3

症例は41歳,女性。既往歴特記事項なし。銀杏60個を摂食し,4時間後から嘔気,嘔吐,下痢,めまい,両上肢の振戦,悪寒が出現した。6時間後救急要請,当院に搬送となった。来院時呼吸数30/min,脈拍94/min(整),血圧152/90mmHg,SpO2 99%(室内気)と安定しており,意識も清明であった。血液検査では白血球増多,呼吸性アシドーシス,軽度の乳酸値の上昇が認められた。頭部CTでは明らかな異常所見はみられなかった。銀杏中毒と診断し,pyridoxal phosphate(PLP)400mg(8mg/kg)を経口投与し,症状は改善した。入院,経過観察としたが,症状の悪化はなく,第2病日に退院となった。後日,来院時の血清4-O-methylpyridoxine(MPN)濃度は339ng/mlと高値であることが判明した。銀杏中毒は栄養状態の不良な前後に頻発していたが,最近では減少している。原因物質としてMPNが証明されており,中枢神経でビタミンB6(Vit B6)と拮抗して作用し,痙攣を起こすことが推測されている。本症例では痙攣は発症していないが,PLP投与により症状は軽快した。銀杏中毒に対してはPLPを速やかに投与すべきである。
著者
細川 悠紀 福本 まりこ 吉田 陽子 岡田 めぐみ 藥師寺 洋介 上野 宏樹 川崎 勲 依藤 亨 三田 育子 中本 収 林下 浩士 細井 雅之
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.113-117, 2014-02-28 (Released:2014-03-11)
参考文献数
7

症例は20歳女性.非妊時BMI 32.0.妊娠28週に腹痛を発症,血清アミラーゼ上昇,高中性脂肪(TG)血症,高血糖,腹部超音波検査で膵腫大を認め,急性膵炎と診断された.治療を開始したが糖尿病性ケトアシドーシス(DKA),DICを併発,第3病日子宮内胎児死亡が確認された.帝王切開にて死児の娩出後,高TG血症,DKAに対しヘパリン,インスリン持続投与に加え血漿交換を施行,急性膵炎に対する治療を行い臨床所見の改善を得た.妊娠中はリポ蛋白リパーゼ(LPL)活性が低下するため,正常妊娠においてもTGは高値となるが,特に糖代謝異常合併妊娠においてはTGの上昇が顕著である.本症例は膵炎発症時,すでにHbA1cが高値(NGSP値 9.8 %)であり,未診断の糖代謝異常を基礎として高TG血症となり,急性膵炎に至ったと考えられた.妊娠初期に糖代謝異常を早期診断し適切な管理を行うことで胎児死亡を防ぐことができた可能性がある.