著者
柊崎 京子 Kyoko Fukizaki
巻号頁・発行日
no.26, pp.1-27, 2010-03-31

介護過程は、介護の「目的」を達成するための「方法」の1 つである。介護過程の教育で最も重要なのは、アセスメントである。本研究の目的は、介護過程の教育上の課題に対する解決と改善を図るために、アセスメントシートを作成することである。 アセスメントシート作成に先立ち、まず「介護過程の概念枠組み」「生活課題(ニーズ)」を整理した。次に、教育上の課題を踏まえ、アセスメントシートを2 つ作成した。1 つは、初学習者対象のアセスメント・トライ版、2 つめは、標準アセスメント様式を踏まえて作成したアセスメント・ベーシック版である。2 つに共通する方法は、(1)アセスメントの思考過程にそってシートを構成する、(2)シート内に思考過程の道筋や、全体像理解の枠組み、生活課題(ニーズ)の判断指標を示す、(3)「情報の分析・解釈・統合」の段階を、『情報の分析・解釈』と『情報の統合』の2 つに分ける(4)『情報の統合』は、〔全体像の理解〕と〔生活課題の根拠と支援の方向性の検討〕を目的とする、(5)〔全体像の理解〕を踏まえて「生活課題(ニーズ)」を検討し、優先順位を判断する、(6)利用者と学生のかかわり状況、アセスメント過程に対する利用者の意見反映状況などを記述する欄を設定。 2 つのアセスメントシートの違いはアセスメントに対する論理構成の違いであり、介護観・実践者観・利用者観は同じである。トライ版とベーシック版の活用は、学生が標準アセスメント様式で記入できるようになるという目的と、論理的思考の訓練という2 つに寄与すると思われる。
著者
柊崎 京子 Kyoko Fukizaki
巻号頁・発行日
no.25, pp.37-66, 2009-03-31

介護過程の一連のプロセスのうち、介護過程の教育及び実習における介護過程展開で最も重要なのは、アセスメントである。アセスメントとは「判断」を導き出す過程である。よって、判断に至るプロセスの中に何を入れるか、どんな指標をもつかは、「判断」の信頼妥当性のエビデンス(根拠・明証性)を示すものである。本学では過去4回介護過程シートを作成してきたが、それはアセスメントの枠組みの理論的検討と、教育方法の検討という2 つの課題を前提とする模索過程の結果であるといえる。本稿では、本学における介護過程シートの変遷を整理することにより、介護過程の教育で何を課題にしてきたかを振り返った。その結果、アセスメントシート作成の土台としてきた視点には4点があることを確認できた((1)利用者の生活に目を向ける、(2)利用者の要望や意向を大切にする、(3)利用者との関係形成や自己覚知の視点を学生がもてるようにする、(4)思考過程の流れに沿ったシートを作成し、シートに思考手順の説明文を記す)。また、2008年試行版シートは、情報の分析・解釈・判断の過程で何をどのように行うかの手順や、判断の指標を学習者に示す方法でシートを作成した。最後に本稿のまとめとして、本学における介護過程シートの変遷や、2008年試行版シートの作成趣旨とその試行結果を踏まえ、今後の改訂に向けた課題と方向性を整理した。
著者
柊崎 京子 人見 優子 畠山 千春
出版者
共栄学園短期大学
雑誌
共栄学園短期大学研究紀要 (ISSN:1348060X)
巻号頁・発行日
no.27, pp.17-49, 2011-03-31

本研究は、「身体障害のある施設利用者の生活ニーズ」を把握するために実施した質問紙調査(先行研究)における「自由記述回答」を分析し、統計的データのみでは把握することのできない個別的なニーズや、主観的ニーズの背景要因について把握することを目的とした。 自由記述を45 サブグループ別に整理した結果、ニーズは一人ひとり個別性があるとともに、施設利用者のニーズは共通性もあることが示唆された。7 領域別に自由記述を分析し、以下の結論を得た。(1)主観的ニーズは、本人要因及び本人以外の要因により発生するとともに、同要因の影響を受けて判断・表出されることが示唆された。(2)本人以外及び本人と環境との相互作用を含む要因は、a)他利用者との関係性や、職員の支援体制及び職員との関係性を含む人的環境、b)施設の物理的環境や物理的な面での構造的問題、c)施設の方針や規則、支援体制などの施設内における内的体制、d)施設の地域環境や地域資源、e)福祉制度である。(3)自由記述に記された要望・意見は、支援の方向性を検討する上で示唆深い。