著者
柏谷 増男 朝倉 康夫 細川 透
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.659-665, 1999

混雑が路線選択行動に与える統計的分析は, 従来からクロスセクション分析により試みられてきたが, マクロデータでは有意な結果が得られていない.本研究では時系列のデータ分析が必要と考え, プーリング推定ータを対象とした推定の結果, 推定式自体の精度は良く, 混雑を表す指標の予想混雑率の逆数の値は1%ないし0.1%の水準で有意となった.ただし, 昭和62年以前の国鉄の推計方式にバイアスがあるとすれば, 断定的な結論は下せない.なお, この結果から推測される弾性値は小さく, 鉄道各社が積極的に混雑率低下に取り組めるほどの乗客数増加は望めない.
著者
柏谷 増男 二神 透 朝倉 康夫
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究では大都市通勤鉄道の混雑緩和に着目して都心居住の実態分析及び都心居住推進のためのモデル開発を行った。まず,我が国大都市圏の通勤鉄道混雑は著しく劣悪であるが,輸送力の増強では対応し得なく,業務核都市等への分散策はかえって混雑を激化させる可能性があり,むしろ都心居住の推進をめざすべきことを指摘している.次に,大阪府を対象として,従業地分布や住宅立地等に見られる地域構造の変化と通勤交通の実態について1970年から1990年または1995年までの国勢調査(5年ごとに実施)データを用いて分析した.その結果,1970年代の大阪市製造業の衰退による工場跡地に高層共同住宅が立地する形で,1980年以降都心住居が顕著になったこと,1980年から1985年の都心3区通勤通学発生交通量は15%増加し,この値は府下市町村の値をも上回っていること,都心3区発生交通量の約60%は都心3区に到着しておりその場合の鉄道利用率は約25%であることが分かった.このことから都心3区居住の通勤通学者の増加は通勤鉄道需要の抑制に大きく寄与したと言える.また,通勤鉄道混雑の評価を利用者の行動にもとづいて分析することが困難なことを指摘し,むしろ通勤交通混雑を社会的制約として取り入れ,それにより低下した土地利用効率をつけ値総額の低下量で測定し,この値を通勤交通混雑の社会的価値とすることを提案している.研究に用いた基本モデルは交通混雑制約を持つ最適土地利用配分モデルであるが,このモデルのラグランジェ関数を分析し立地誘導指標を見いだしたうえで,この方法を大阪府北東部地域へ適用した