著者
柴田 愛子 曽山 典子 岡村 誠 森 徹
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

我々の研究は、法や規則やモラルに反した行為、例えば、いじめが行われている状態を考える。この違反行為を知りながら傍観する傍観者達の行動を進化的非協力ゲームとしてモデル化し、実験で検証した。この理論によれば傍観者が(1)いじめを報告する(2)報告しない(3)確率p^*で報告するの3つの状況はNash均衡である。しかし、3番目の均衡は進化的不安定な均衡(evolutionarily unstable equilibrium)である。そして、日本人大学生を対象とした8回の実験結果から、いじめを排除するサービスは公共財であり、傍観者の生徒からのいじめについての報告が増える条件は、(1)いじめを報告したときの費用(仕返し等)が小さい。(2)生徒がいじめを傍観することから受ける不効用が大きい(3)教師がいじめを取り上げるのに至る必要な最小報告生徒数が少ないことなどが判明した。しかし、最も重要な結論は、(4)クラスの規模が小さくなれば、協力的行動が増え傍観者が減る結果である。この結論は学校のクラスの小人数化政策を支持する。3回の国際学会で報告され、カルフォルニア大学のDaniel Friedmanとイエール大学のShyam Sunderが高く評価した。(論文は英文で投稿中)これらの結果が、日本人に特有なものか否かを調べる為に、現在までに3回の国際混合実験が行なわれた。実験1は関西学院大学(1998.9.24)で、日本とドイツの大学生10名ずつ、実験2はドイツAugsburg大学(1999.9.6)で、日本人大学生10名、ドイツ人大学生8名日本人留学生2名、実験3が天理大学(2000.11.8)で日本、中国、台湾の大学生を40人集めて実施された。その結果、事前協議効果は同国人と外国人に関係なく存在する。また、異なる国籍のメンバーが同一グループを形成する場合、信頼感が薄くなることが判明した。
著者
柴田 愛子 森 徹 曽山 典子 岡村 誠
出版者
公共選択学会
雑誌
公共選択の研究 (ISSN:02869624)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.34, pp.43-59, 2000-06-25 (Released:2010-10-14)
参考文献数
18

Bullying in school is a serious problem in Japan as well as in most other countries. Bystanders rarely report instances of bullying to teachers, parents and other authorities. In this paper, we model bystander behavior by utilizing the theory of non-cooperative games, which assumes that bullying acts are stopped by a classroom teacher only when more than a certain number of students report the instances. Every bystander stands to gain from the resolution of bullying activity. But when a bystander reports this activity, she will have to deal with psychological and/or physical costs if the total number of reports falls below the required minimum. Under this structure of payoffs in our “bullying game” it can be shown that if all bystanders maximize their expected payoffs, there are two stable symmetric Nash equilibria. At one equilibrium, all bystanders report the instances of bullying to their teacher, and at the other equilibrium, no one reports. We conducted a series of experiments in which subjects played our “bullying game” under various values of parameters. The results of our experiments support the expected payoff-maximizing behavior of bystanders. Based on this verification of expected-payoff maximizing behavior through experiments, we develop guidelines for policies which could serve to increase reporting activity of bystanders and dissolve bullying activity. These include reducing the threshold number for reporting from students, increasing the disutility of students' observing bullying behavior, mitigating the psychological and/or physical costs for the reporting of bullying, and scale down of class size. The effectiveness of each policy is then analyzed theoretically and compared with the other alternatives.
著者
柴田 愛子 坂井 優
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.96-104, 2002-02-15

分析の目的: 中央政府から地方政府への移転支出の配分構造を公正と効率及び政治的影響の視点から分析する。中央政府から地方政府への移転支出は、地方交付税交付金、地方譲与税、国庫支出金からなり、地方交付税交付金は多額で国家予算の2割を超える。その財源は、国税3税(所得税、法人税および酒税)の32%に平成元年より消費税の24%、たばこ税の25%が追加された。移転支出はナショナルミニマムの達成を目指すとされる。つまり公平性の観点からの所得再分配である。しかし、ナショナルミニマムの達成を超えた移転が行われている可能性も示唆される。つまり、移転支出は人口、面積等の客観的指標の他に、政治的要因も影響を与えているといわれる。また、長年そうした移転支出が行われていれば、公共投資の生産性の面で非効率な公共投資も行われるであろう。そこで、公平と効率の面、および、政治的影響の視点から移転支出を分析しようとする。分析手法:モデルを構築し、自己組織化マップ(SOM)と統計的手法を併用する。(SOMについてはAppendixを参照)次のようなモデルを導入する。Y=a+bx+e Yは移転支出で、Xは以下に示す変数であり、eは誤差項である。Xには人口と面積という客観的指標に、県民実質所得と政治的要因を加えた。そして、生産力の指標と地方債現在高の要因も付加した。A.まず、1991年の都道府県別クロスセクションデータを用いて分析する。1991年の単年度データを分析した理由は、自民党単独政権最後の第39回衆議院選挙(1990年)の結果を政治的要因の指標とした為である。いわゆる「55年体制」が終わり連立政権が成立したのは1993年の第40回衆議院選挙である。単年度分析では、回帰分析した後、自己組織化により作られたクラスタ内のノードを利用して、都道府県のクラスタ分析をした。B.さらに、この分析結果を踏まえ、1977年から1995年の時系列データの統計分析とクラスタ分析について検討する。分析結果:A.1991年の単年度分析の結果は、いくつかの政治的要因変数は有意ではないが、しかし、ほとんどの変数は5%水準で有意である。また調整済みの決定係数は0.975と非常に高く、モデルの当てはまりはよい。上記結果は都道府県を総括した結果である。しかし、地方により経済、社会、文化の事情は異なる。そこで、データを細分化して類似した都道府県をクラスタにまとめ、そのクラスタごとの分析を試みた。都道府県のデータ(上記説明の10要素)を入力データとし、自己組織化マップ(SOM)を使い図を描き、ノード数の大きなクラスタを第1、第2クラスタとして選択した。そして、移転支出の公平性と効率性についてみれば、全国データとクラスタデータでは、違いが見られた。また、政治的要因については、全国データの分析をよりわかりやすく理解できる結果を得た。B.この分析結果を踏まえ、1977年から1995年の都道府県パネルデータの統計分析とクラスタ分析について検討する。統計分析(固定効果モデル)は所得以外の仮説を支持した。さらにSOMによるクラスタ分析は公平性の仮説、つまり、所得が減れば、移転支出が増加するを支持した。分析の独創性:1991年の都道府県のクロスセクション分析において、SOMのクラスタ手法が利用され、結論が導かれた。幾つかのクラスラリングの手法はある。しかし、問題は都道府県別の限られたデータをさらにクラスタに分けるとデータ数が減ってしまう。そして、クラスタごとの統計分析をするのに問題が生じる。そこで、SOMという新しい手法によるクラスタリングを試みた。SOMでは、入力データに類似したデータを自己組織化で作るという特徴がある。SOMでクラスタリングマップを作った場合は、データ数が不足するという問題をある程度解決できる。さらに、パネルデータをクラスタに分け自己組織化マップで分析し、統計手法を併用することで、仮説を新たな角度から検討することができる。結論:SOMは特にクラスタリングに優れ、可視的な手法が、評価される。例えば、パネルデータの都道府県の自己組織化マップ上の動きは、今後の研究方向を示唆する。そして、自己組織化マップは、これからの研究開発が期待される手法である。
著者
柴田 愛子 森 徹 曽山 典子 岡村 誠
出版者
関西学院大学
雑誌
Working papers series. Working paper
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1_a-15, 1999-10

Bullying in school which would be detrimental to the development of human resources is a serious problem in Japan as well as in other countries. Bystanders rarely report instances of bullying to teachers, parents and other authorities. In our study, bystander behavior is modeled as a non-cooperative game by assuming that bullying can be stopped by a teacher only when more than a certain number of students report the instances. Every bystander stands to gain from the resolution of bullying activity (i.e. the consumption of public goods). But when a bystander reports this activity, that bystander will have to deal with psychological and / or physical costs (i.e. the private costs) if the total number of reports falls below the required minimum. We see that one of the two stable symmetric Nash equilibria is reached, depending on the threshold numbers, payoffs and the costs of reporting. At one equilibrium, all bystanders report the instances of bullying to their teacher. and at the other equilibrium, no one reports. The results of our experiments support our model and the expected payoff-maximizing behavior of bystanders. From this the major policy implication reached is that by lowering the number of students in a classroom, reporting activities of bystanders would increase. Other policy suggestions which could serve to increase reporting activity of bystanders include reducing the threshold number for reporting from students, increasing the disutility of students' observing bullying behavior, and mitigating the psychological and / or physical costs for the reporting of bullying.