著者
坂井 優美 木村 智博 福田 誠 橋本 治 岡田 勝也 伊藤 真理 川原 潮子 岩波 基
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.31-44, 2010 (Released:2011-09-14)
参考文献数
23
被引用文献数
2 2 1

兵庫県南部地震以降,廃棄物学会を中心に,地盤工学領域では応用地質学会や日本粘土学会等が災害廃棄物の調査を行うようになった.本研究では2007年新潟県中越沖地震を例に,廃棄物行政の実態を俯瞰し,住民に求められる危機管理の方向性を現地調査やアンケート等で明らかにした.また,東京都等の震災廃棄物対策を参照しつつ,地盤材としての有効性を検討した.この一連の流れで,徹底した分別回収がなされたこと,家族や住民間の協力で非常時の自主防災の成否につながったこと,膨大な廃棄物でも適正処理により環境影響を低減出来る可能性が筆者らの調査で示唆された.さらに廃棄物に内在する重金属にも言及し,新潟県内海岸部での調査結果や処理技術の現状も参考のために概観した.
著者
阿部 佑一 坂井 優美 鬼立 めぐみ 原 正 久保田 隆廣
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.85-91, 2019 (Released:2019-05-17)
参考文献数
10

要旨:皮膚疾患に多用されるステロイド外用剤は,著しい治療効果をもたらす重要な成分である.外用剤の混合による配合変化に関する情報は必須であるが,十分な検討は行われていない.本研究では,実臨床でもステロイド外用剤と混合されることのあるザーネ® 軟膏との配合変化について検討した.油脂性基剤であるステロイド軟膏はザーネ® 軟膏と混合すると高温になるほど基剤が不安定になり,ステロイドの種類によっては含量が著しく低下した.ザーネ® 軟膏とo/w 型ステロイドクリームの混合では基剤は安定していた.ステロイド含量は高温条件下で低下したが,ステロイド軟膏との配合変化より緩やかであった.そのためザーネ® 軟膏との混合はステロイドクリームのほうが好ましいと考えられる.しかし,ステロイドの種類や製品によっては配合変化する組み合わせがあるため,患者の症状や薬剤の保存状態,コンプライアンスに合わせた薬剤選択が重要である.
著者
梅澤 慎吾 岩下 航大 坂井 優之 大野 祐介 宮永 豊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C3O2155, 2010

【目的】<BR>昨今、立脚期油圧制御を備えた高機能膝継手が多数開発され、その代表格C-LEG(OttoBock)の研究報告は以前から行われている。しかしそれらは健常側で運動制御が可能な片側切断の症例や、両側切断では限られた環境での杖歩行が多数を占める。一方、両大腿切断者の二足実用歩行をゴールに据えた場合、高機能膝継手を選択する意義や活用のポイントはこれまで議論されていない。今回の報告では両側切断と片側切断で運動制御の違いを比較し、両切断者に高機能膝継手を処方した場合に歩行自立度に及ぼす影響を検証することを目的とした。<BR>【方法】《症例》30歳、男性、身長170cm。鉄道事故による両膝離断。H19年7月切断術施行。左右断端長45cm、両股関節に可動域制限なし、荷重痛により断端末荷重不可。H19年9月3日より当センター入所。床から車椅子の移乗がプッシュアップ台利用にて自立。訓練期間(4ヶ月)を区分すると内容は次の通り。《C-Leg試用前2ヶ月》開始1ヶ月がソケットと足部のみのスタビー義足を使用し、立位バランスと歩行訓練。後の1ヶ月で段階的に義足長を本来の身長に合わせ、同様の訓練を実施しながら膝継手の変更を試みる。<BR>《両側C-Leg変更後2ヶ月》遊脚期の膝屈曲による足部クリアランスの確保を念頭に置き、平地で杖なし持続歩行が可能となった段階で応用歩行へ移行。坂道の下り・歩行時の減速・方向転換など立脚期油圧制御(イールディング機能)を最大活用することに重点を置き習熟を図る。<BR> 【説明と同意】 研究の目的、方法、予想される臨床上の利益、協力者が不利な扱いを受けないこと、データ管理に注意を払うこと、結果の公表の仕方などを本人に説明し、可能な限りで個人情報の開示を行う旨を了解済みである。<BR>【結果】《C-Leg変更前》固定膝と遊脚期油圧制御膝継手(OttoBock3R60)の組み合わせで約1kmの持続歩行を獲得。これは平地や両側に手摺りのある階段など条件付きの環境にて両T字杖で行っている。一方、屋内外を問わず、坂道の下りは杖使用でも動作獲得は達成されなかった。<BR>《C-Leg変更後》約2ヶ月で屋外杖なし歩行自立、片側手摺りを利用しての階段交互昇降と杖なしでの坂道歩行自立。また約3kmの屋外持続歩行や公共交通機関の利用が杖なしで自立となる。最終では実際に職場で訓練を実施。想定される様々な動作を行い、車いすを用いず遂行可能であることを確認。一方、車での通勤を可能にする環境整備(車の改造、駐車場の確保)も進めた後に退所。復帰後半年間はパートタイム、後にフルタイムで職場復帰を果たす。<BR>【考察】これまでの両大腿義足の訓練は「転倒の恐怖感」が自立への障壁になっていると推測される。片側大腿切断の場合、1.坂道の下り2.歩行時の減速や方向転換など日常生活で頻回に繰り返される動作の多くは、速度調整や安定性の保障などを健常側下肢によって行っている。これに対して両大腿切断者は1.2の動作で転倒しない為の保障を得られず、積極的な動作獲得への取り組みが行えないと考えられる。一方でC-Legの特筆すべき機能として1.強力な油圧抵抗で大腿四頭筋の遠心性収縮を代用し、一方の膝を緩やかに屈曲させながら他方の足部接地を行う時間的猶予を与える(坂道の下りが自立する可能性) 2.歩行時踵接地から爪先離地まで、一連の歩行動作を行わなければ油圧抵抗がキャンセルされず不意な状況で膝折れを起こさない(方向転換時の安定性向上) 3.C-Legをエネルギー効率の面で優位とする報告があり、義足歩行を継続しながらも過負荷にならず、実生活を視野に入れやすいなどの特長がある。今症例のC-Leg使用前、使用後を比較すると坂道下り動作の獲得が達成されたこと、また持続歩行距離に決定的な違いを見出すことができる。この結果は恐怖感が軽減され、省エネルギー歩行が可能であれば、多様な動作のチャレンジが可能となり訓練過程で身体能力がさらに向上し、より高い目標を掴める可能性があることを意味する。訓練で重要となるのは、膝折れを起こさないように立脚期股関節伸展を行う通常歩行、意図的に膝折れする方向に荷重する坂道の下り、この相反する動作の仕組みを説明し、膝継手の特長を義足ユーザーとセラピストが共通理解のうえで反復・習熟を図ることが重要である。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>両膝を失った状況で公の環境に順応するには、たとえ残存機能を最大限発揮したとしても、ある程度義肢に依存しなければならない側面がある。このようなケースでは膝継手の特長を理解し、調整を適宜セラピストが行うことも求められる。膝継手の特性が両切断者の身体面・精神面にいかに影響を及ぼすかについては、同様の症例でC-Leg並びに、他の膝継手を比較し、定量的・客観的な評価を行っていく必要がある。<BR><BR>
著者
柴田 愛子 坂井 優
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.96-104, 2002-02-15

分析の目的: 中央政府から地方政府への移転支出の配分構造を公正と効率及び政治的影響の視点から分析する。中央政府から地方政府への移転支出は、地方交付税交付金、地方譲与税、国庫支出金からなり、地方交付税交付金は多額で国家予算の2割を超える。その財源は、国税3税(所得税、法人税および酒税)の32%に平成元年より消費税の24%、たばこ税の25%が追加された。移転支出はナショナルミニマムの達成を目指すとされる。つまり公平性の観点からの所得再分配である。しかし、ナショナルミニマムの達成を超えた移転が行われている可能性も示唆される。つまり、移転支出は人口、面積等の客観的指標の他に、政治的要因も影響を与えているといわれる。また、長年そうした移転支出が行われていれば、公共投資の生産性の面で非効率な公共投資も行われるであろう。そこで、公平と効率の面、および、政治的影響の視点から移転支出を分析しようとする。分析手法:モデルを構築し、自己組織化マップ(SOM)と統計的手法を併用する。(SOMについてはAppendixを参照)次のようなモデルを導入する。Y=a+bx+e Yは移転支出で、Xは以下に示す変数であり、eは誤差項である。Xには人口と面積という客観的指標に、県民実質所得と政治的要因を加えた。そして、生産力の指標と地方債現在高の要因も付加した。A.まず、1991年の都道府県別クロスセクションデータを用いて分析する。1991年の単年度データを分析した理由は、自民党単独政権最後の第39回衆議院選挙(1990年)の結果を政治的要因の指標とした為である。いわゆる「55年体制」が終わり連立政権が成立したのは1993年の第40回衆議院選挙である。単年度分析では、回帰分析した後、自己組織化により作られたクラスタ内のノードを利用して、都道府県のクラスタ分析をした。B.さらに、この分析結果を踏まえ、1977年から1995年の時系列データの統計分析とクラスタ分析について検討する。分析結果:A.1991年の単年度分析の結果は、いくつかの政治的要因変数は有意ではないが、しかし、ほとんどの変数は5%水準で有意である。また調整済みの決定係数は0.975と非常に高く、モデルの当てはまりはよい。上記結果は都道府県を総括した結果である。しかし、地方により経済、社会、文化の事情は異なる。そこで、データを細分化して類似した都道府県をクラスタにまとめ、そのクラスタごとの分析を試みた。都道府県のデータ(上記説明の10要素)を入力データとし、自己組織化マップ(SOM)を使い図を描き、ノード数の大きなクラスタを第1、第2クラスタとして選択した。そして、移転支出の公平性と効率性についてみれば、全国データとクラスタデータでは、違いが見られた。また、政治的要因については、全国データの分析をよりわかりやすく理解できる結果を得た。B.この分析結果を踏まえ、1977年から1995年の都道府県パネルデータの統計分析とクラスタ分析について検討する。統計分析(固定効果モデル)は所得以外の仮説を支持した。さらにSOMによるクラスタ分析は公平性の仮説、つまり、所得が減れば、移転支出が増加するを支持した。分析の独創性:1991年の都道府県のクロスセクション分析において、SOMのクラスタ手法が利用され、結論が導かれた。幾つかのクラスラリングの手法はある。しかし、問題は都道府県別の限られたデータをさらにクラスタに分けるとデータ数が減ってしまう。そして、クラスタごとの統計分析をするのに問題が生じる。そこで、SOMという新しい手法によるクラスタリングを試みた。SOMでは、入力データに類似したデータを自己組織化で作るという特徴がある。SOMでクラスタリングマップを作った場合は、データ数が不足するという問題をある程度解決できる。さらに、パネルデータをクラスタに分け自己組織化マップで分析し、統計手法を併用することで、仮説を新たな角度から検討することができる。結論:SOMは特にクラスタリングに優れ、可視的な手法が、評価される。例えば、パネルデータの都道府県の自己組織化マップ上の動きは、今後の研究方向を示唆する。そして、自己組織化マップは、これからの研究開発が期待される手法である。