著者
金好 純子 古田 貴音 塩田 俊 赤阪 信二 柳本 裕子 栗久 宏昭
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.19-26, 2014-01-15 (Released:2014-03-31)
参考文献数
30
被引用文献数
5 4

レモン3品種の自然交雑種子を播種し,1果実当たりの三倍体の出現数は,0.36~0.70個体/果であった.発芽した実生における三倍体出現率は,重量が大粒種子の1/3未満1/5以上の小粒種子では46.6~59.6%,1/5未満の極小粒種子では37.5~47.6%で高いことから,レモンでは二倍体どうしの交配においては,小粒の種子を選抜すれば,効率よく三倍体が得られることが明らかになった.自然交雑実生から得られた三倍体は,88.2%が花粉を形成したが,花粉量は少なく,種子数は1個未満が80%で無核性の系統が多かった.また,‘道谷系ビラフランカ’の自然交雑実生から三倍体を選抜し,レモン新品種‘イエローベル’を育成した.樹勢は強く枝梢は密に発生し,枝梢の長さは中で節間は短い.枝梢のとげの発生割合は65.8%で多い.成熟期は果汁割合が高くなる12月中旬である.果実は球~長球形で,果実重は約214 gである.果皮はやや滑らかで,果皮は5.1 mmで薄く果汁が多い.香気は中である.種子は1果当たり2.9個で少ない.酸度は約5.3%でまろやかな食味である.このように‘イエローベル’は,酸度が低い,果汁が多い,種子が少ないなどの特長があり,レモンの需要拡大への利用が期待される.
著者
新田 浩通 栗久 宏昭 小笠原 静彦
出版者
広島県立農業技術センター
雑誌
広島県立農業技術センタ-研究報告 (ISSN:09184848)
巻号頁・発行日
no.80, pp.19-33, 2006-07

1995年-1996年に広島県内の再開発ブドウ園約15haで7月下旬頃から1年生枝の表皮が黒褐色を呈し、一部の枝ではその後症状発現部から上位葉が急激に萎凋し、褐変枯死する症状の多発生がみられた。そこで、本症状の発生実態調査を行うと同時に、防除法について検討し、以下の結果を得た。1.ブドウの枝枯症は、当該地区の主力品種である'マスカット・ベリーA'と'ピオーネ'の両品種に発生した。なお、1年間中間育苗後、1995年春に栽植された2工区と1996年春に栽植された3工区の全園では発生が認められたが、1994年春に購入苗を直接栽植された1工区では発生が認められなかった。2.当該地区における本症状の発生は、罹病苗木の混入と1年間の中間育苗によって助長されたものと考えられた。3.枝枯症の発生園では、栽植2年目に簡易被覆栽培を導入した結果、90%の園で発生が認められなくなった。4.八日谷ブドウ園で発生した枝枯症は、分離された菌がDohiorella属菌であり、病徴、菌の特徴および接種試験の結果から、ブドウ枝枯病であると診断された。5.ブドウ枝枯病が多発した園では、栽植2年目以降に果房の穂梗部に枝と同一症状が発生した。これらの病害は、接種試験により、枝と同一病菌によるブドウ房枯病と診断された。6.分離したブドウ枝枯病菌の生育温度は5-40℃で、生育適温は26-30℃付近であった。7.ブドウ枝枯病罹病枝からの分生子の飛散は4月頃から始まり、4月下旬-7月上旬にピークがみられ、7月下旬から極めて少なくなった。このことから、本病の要防除時期は、発芽期から梅雨明け頃までと考えられた。8.粗皮剥ぎと枝病斑の除去による耕種的防除対策は、多発園では必ずしも安定した防除効果を発揮しなかった。9.フルアジナム剤は、室内試験で菌糸伸長抑制効果および発芽抑制効果とも顕著な抑制効果を示した。