著者
栗田 広暁
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.156-176, 2017 (Released:2021-08-28)
参考文献数
13

本稿では,所得税および住民税において2011年以降実施された年少扶養控除廃止・特定扶養控除縮減による実質的な増税が,家計の消費行動に与えた影響について,「日本家計パネル調査(Japan Household Panel Survey:JHPS)」の個票パネルデータを用いて検証する。分析では,JHPSで調査している1月の非耐久消費財の支出額(食料費,外食・給食費,光熱・水道代,交通費の4項目,それらの合計額)と1月分の増税額の関係を検証した。その結果,すべての分析結果において増税によって家計の消費は変化しないことを支持する結果が得られた。これは,家計が恒常所得仮説に従い,増税に対して消費の平準化を行って消費水準を変えなかったことを示唆するものである。
著者
栗田 広暁
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.181-193, 2019 (Released:2021-07-28)
参考文献数
10

本稿では,わが国の所得税制における扶養控除額の変化を利用し,最適課税論の中心的パラメータであるETI(the Elasticity of Taxable Income with respect to the net-of-tax rate)およびEGI(the Elasticity of Gross Income with respect to the net-of-tax rate)を推計した。データには日本家計パネル調査(JHPS)の個票パネルデータを用い,家計の異質性を十分に反映させながら推計を行った。その結果,ETIの推計値は0.7前後,EGIの推計値は0.5前後であるとの結果が得られ,扶養控除額の変化は,家計が直面する限界税率の変化を通じて所得決定に影響を与えていたことが示唆された。