著者
原田 誠一
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.47-51, 2019-11-30 (Released:2020-01-04)
参考文献数
13

筆者は,複雑性PTSDの病態理解や治療法に関する臨床研究を行う中で,貝谷が独自に臨床研究を進めている不安・抑うつ発作は複雑性PTSDとの共通性が高い病態ではないか,という印象を抱いてきた。本稿では,複雑性PTSDと不安・抑うつ発作に認められる本質的な重なりを示した上で,複雑性PTSDと不安・抑うつ発作の臨床研究が交流する必要性と有効性について述べる。その中で,複雑性PTSDにおける治療論(神田橋による漢方処方,整体~気功,原田による心理教育・認知行動療法)と,不安・抑うつ発作における治療論(貝谷による精神薬理学・薬物療法)が異なる基盤に立っており,我が国独自の治療的アプローチである3者が互いに補完し合うことによって相乗効果を期待しうる点を指摘した。
著者
原田 誠一 岡崎 祐士
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

研究代表者らは、幻覚妄想体験に対する新しい精神療法(認知療法)を考案した。気分障害・不安障害における認知療法の治療効果はすでに広く立証されているが、統合失調症の認知療法は国の内外を問わず十分確立されていないのが現状である。研究代表者らが認知療法の適応を統合失調症に広げる試みを行っている理由は、従来の治療法にあった以下のような重大な問題点・課題に対応するためである。(1)病識がなく通院・服薬を拒否する患者の治療導入を円滑にすすめる方法論の開発が不十分。(2)薬物療法抵抗性の幻覚妄想体験に対する治療法を開発する必要。(3)従来の治療では再発予防が不十分であったため、新しい再発対策が必要。(4)幻覚妄想体験によって生じるスキーマの変化への対応が必要。本年度は欧米における本分野の研究状況をレビューし、代表的な英国の専門書を翻訳・出版した(「統合失調症の認知行動療法」)。また、従来からある他の精神療法と認知療法の比較・検討を行い、認知療法が他の精神療法を補完する役割を果たしうることを示した(原田・臼井・岡崎:ことばの処方.岡崎編.統合失調症の診療学.中山書店、2002)。そして、以上の内容を学会誌に発表し(「都精協雑誌」2002)、初診の場における本法の利用法を述べ(「精神科」2002)、薬物療法との関連にも触れた(「精神科臨床サービス」2002)。加えて、認知療法の内容を当事者・家族に普及する啓蒙活動にも力を入れ、第35回全国精神障害者家族大会(2002.9)で教育講演を行い、家族会の機関紙(「ぜんかれん」2003)で内容の紹介を行った。