著者
金山 良春 根来 伸夫 岡村 幹夫
出版者
大阪市立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

自然発症高血圧ラット(SHl)およびWKYラットの大動脈由来の培養血管手滑筋細胞(VSMC)を用いて,各種成長因子,血管作働物質を作用させた場合のcーmyc protoーoncogene(cーmyc)の発現の程度を比較し,Ca培抗薬やα_1ブロッカ-により抑制されるかどうかを検討した。SHR由来のVSMCは,胎児血清PDGF,EGF,アンギオランシンII,エンドセリンー1,エンドセリンー2,エンドセンリンー3の刺激に対してWKY由来のVSMCに対し有意に高いcーmycの発現を示した。しかし,TGFーβに対してはcーmycの発現の増強は示さなかった。一方,SHR由来のUSMCの種々の成長因子やアンギオテンシンII,エンドセリンなどの血管作働物質によるcーmycの増強それた発現はCa拮抗薬である,ニフェジピン,ジルチアゼムによりWKY由来のVSMCのcーmycの発現の程度に抑制された。また,α_1ブロッカ-である塩酸プナソシンによっても抑制されることを認めた。cーmycの発現にはCa^<++>とプティンキナ-ゼCが関与すると考えられているが細胞内Ca^<++>の動員に重要とされているイノシト-ル1.4,5ー3リン酸(IP_3)のアンギオテンテンIIに対する反応性をSHR由来のVSMCとWKYのそれとを比較したが、SHR由来のVSMCのIP_3反応はWKYの4ー5倍の反応を示した。このことよりSHR由来VSMCのcーmyc発現の増強の要因の一つはアレギオテンシンIIに対するIP_3反応の増強とそれに続く細胞内Ca^<++>の上昇の増強が関与している可能性が考えられた。