著者
藤澤 正一郎 末田 統
出版者
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
雑誌
福祉のまちづくり研究 (ISSN:13458973)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.21-27, 2012-11-15 (Released:2017-06-23)

盲人と視覚障害者のための歩行面触知物(TWSIs)の国際規格ISO23599が2012年3月に発行された。TWSIsは1965年に日本で発明され、その後、盲人と視覚障害者の自立歩行を支援するために世界各国で使用されるようになった。しかし、国によりTWSIの形状とその敷設方法は異なっている。このような事情を反映して発行された国際規格の概説を行う。
著者
三谷 雅純
出版者
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
雑誌
福祉のまちづくり研究 (ISSN:13458973)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.13-23, 2018-03-15 (Released:2018-11-22)

緊急災害放送では、高次脳機能障がい者は、音が聞こえても内容を認識できないことがあるらしい。その実態を確かめるために高次脳機能障がい者を対象に聴覚実験を行った。実験には障がい者のべ32名、非障がい者のべ20名が参加した。設問は①「棒読み」と「リズムを強調した読み」、②「棒読み」と「棒読み」にチャイムを付加した場合、③「朗読」と「歌」で、それぞれどちらが理解しやすいかを聞いた。①から、女性発話者の「リズムを強調した読み」が理解しやすいとした回答が多かった。②で障がい者はチャイムの有無が十分認識できなかった。③は多くが「歌」が理解しやすいと回答した。今後は、緊急災害放送において男女が交互にアナウンスするなどの工夫をし、現在のチャイムでは高次脳機能障がい者の注意喚起ができないので、アラームの工夫が必要である。
著者
徳田 良英
出版者
一般社団法人日本福祉のまちづくり学会
雑誌
福祉のまちづくり研究 (ISSN:13458973)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.40-47, 2009-07-15

現行のスロープ勾配を自走車いすの下り走行の観点から評価する目的で、官能評価、動作筋電図計測および走行速度測定を行った。被験者は健常な大学生で、実験装置は上下の踊り場間の垂直距離が約750mmで途中に水平部分のない屋外の実験用木製スロープ(勾配は1/24、1/21、1/18、1/15、1/12、1/9、1/7の7種類)で、自走用標準型車いすによる両手駆動および片手片足駆動を検討した。結果は以下の通りであった。1)わが国のバリアフリー新法における勾配基準の1/20に近い勾配1/24、1/21および1/18に関して、官能評価、動作筋電図、走行速度の評価で問題は認められなかった。2)わが国の公共建築物に多い勾配1/12〜1/15に関して、官能評価において勾配1/15で両手駆動の85.7%、片手片足駆動の75.0%が「楽」であるのに対して、勾配1/12では両手駆動の57.1%、片手片足駆動の83.3%が「ややきつい」であった。特に片手片足駆動では大腿四頭筋が勾配1/15に比べ勾配1/12の筋活動率が大きかった。走行速度は勾配1/15に比べ勾配1/12が遅かった。以上のことから勾配1/12は利用者にはやや負担のかかる基準であることが示唆された。3)わが国の建築基準法の勾配基準の1/8に近い、勾配1/9および1/7では官能評価、動作筋電図、速度評価から車いす下り走行は相当にきつい状況が伺えた。このことから住宅改修等の個別案件でスロープをやむを得ず急勾配にせざるを得ない場合にはスロープ下り時の身体負担や安全性に対しても慎重に検討が必要と考える。
著者
土橋 喜人 鈴木 克典 大森 宣暁
出版者
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
雑誌
福祉のまちづくり研究 (ISSN:13458973)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-12, 2020-03-15 (Released:2020-12-28)
参考文献数
27

公共交通機関では1970 年代より優先席が導入されてきたが、その実効性に関しては十分に検証されていない。本研究では、札幌市営地下鉄の専用席(優先席に該当)における制度の浸透の背景についてのインタビュー調査、札幌市営地下鉄の専用席と関東圏地下鉄の優先席の利用者実態観測調査および両地区近郊在住者に対するアンケート調査を通して、実情の把握を試みた。インタビュー調査により、導入背景は確認できたが浸透背景までは明確にならなかった。また、観測調査により専用席の制度の実効性の高さが検証された。一方、アンケート調査より、制度(用語)の違い、意識の違い、意識と行動の差等が、札幌の専用席の実効性の高さの要因であることがわかった。市民性にもよるが、専用席の制度は他地域での導入の試行も検討に値する。
著者
宮川 明子 森崎 直子
出版者
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
雑誌
福祉のまちづくり研究 (ISSN:13458973)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.25-34, 2022

<p>高齢者の外出時のトイレの状況について明らかにし、課題や利用しやすいトイレについて検討することを目的とし、403名を対象とし街頭調査を行った。対象者の約6割が外出時のトイレに不安を抱いており、高齢になるにつれ、トイレの使用頻度が増え、トイレの心配が増える傾向であることが示された。また、女性高齢者のトイレの利用しやすい条件として、「待ち時間が少ない(混んでいない)」、「清潔である」、「手すりがある」、「流し方がわかりやすい」、「荷物掛けや荷物置きがある」であることが明らかとなった。これらの高齢者のニーズに応じたトイレの整備や環境を整えることは、高齢者の外出に向けた環境づくりに重要な要素である。</p>
著者
三谷 雅純
出版者
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
雑誌
福祉のまちづくり研究 (ISSN:13458973)
巻号頁・発行日
vol.24, no.Paper, pp.25-35, 2022-08-31 (Released:2022-08-31)
参考文献数
22

注意喚起のため、チャイムのある場合とない場合で聴覚失認者の反応に違いがあるのだろうか。そのことを確かめるために、「小説の朗読」で新しく作った言語音課題と「視覚刺激と一桁の暗算」の視聴覚実験をチャイムのないことを除いては三谷(2019, 2021)と同じ条件で行った。結果を以前に実施したチャイムのある場合の結果と比べると、チャイムの有無で非障害者と中・重度障害者に有意な差が認められた。チャイムのある非障害者の最低スコアー以上であれば内容を理解できると仮定すると、チャイムがない言語音では軽度障害者と中・重度障害者のおよそ25%が理解できた。さらにチャイムがあれば軽度障害者の50%以上、中・重度障害者の25%以上が理解できた。チャイムがあることによってより多くの聴覚失認者が言語的意味を理解できることが確認できた。
著者
李 虎奎 米田 郁夫 繁成 剛 高橋 良至 河合 俊宏 橋詰 努 北川 博巳
出版者
一般社団法人日本福祉のまちづくり学会
雑誌
福祉のまちづくり研究 (ISSN:13458973)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.A1-A12, 2013-03-15

移動動作は日常生活活動の根幹をなす動作である。とくに、外出活動は、日常生活を変化のあるものにし、また社会生活を構築するうえで必要不可欠なものである。したがって、下肢機能が低下し移動が困難になった高齢者の日常生活を潤いのあるものにするためには、安全・楽に外出できる手段を確保することが必要である。本研究では、高齢者のための外出支援機器を開発した。開発した外出支援機器は、転倒のリスクが少ない4輪型とし、また、下肢機能の維持・向上のためにペダルを漕いで推進する方式とし、身体負担を軽減するために電動アシスト装置を組み込んでいる。開発機器について使用評価および走行実験による操作負担の検証を行った結果、下肢機能が低下した移動困難な高齢者の外出を支援する機器としての可能性が示唆された。
著者
三村 泰広
出版者
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
雑誌
福祉のまちづくり研究 (ISSN:13458973)
巻号頁・発行日
vol.23, no.Paper, pp.1-13, 2021-05-10 (Released:2021-05-10)
参考文献数
27

本研究では高齢者の生きがいを支え、医療サービス利用の適正化につながるような「活動」を維持するうえにおいて、より重視すべき居住環境の姿を考察した。愛知県内に居住する60歳以上の方(n=1,250)を対象に、「普段の活動実態」、「居住する地域の環境」、「医療サービスの利用実態」、「生きがい」についてアンケート調査を実施した。結果、「ベンチ等休憩場所がない」、「公共交通が整備されていない」、「病院が少ない」、「散歩・運動のできる公園が少ない」が複数の高齢者の活動に影響を与えており、そしてそのほとんどで当該施設が少なくなるほど、活動量が有意に少なくなることを示した。また、普段の多くの活動量は高齢者の生きがいと強く結びついている一方、医療サービスの利用とはほとんど関連がないことを示した。
著者
西村 顕 小野山 薫 野口 祐子 大原 一興 藤岡 泰寛
出版者
一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
雑誌
福祉のまちづくり研究 (ISSN:13458973)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-9, 2017-03-15 (Released:2017-11-21)

知的障害や発達障害のある子どものキッチンまわりの事故およびそれに対する保護者の対応について、アンケート調査をおこなった。横浜市内の全療育センターの知的通園施設と全特別支援学校(知的障害のみ)の小学部に通う子どもの保護者を対象に1,197部のアンケートを配布し、有効回収部数は794部(66.3%)であった。キッチンまわりで発生した事故(ヒヤリ・ハット含む)について、好発年齢は1-4歳であった。子ども242人(30.5%)にヤケドの経験があり、168人(21.2%)にケガ(切り傷等)の経験があった。保護者の対策としては、口頭注意が中心であり、市販のチャイルドロックやベビーゲートの設置も多かった。