著者
三宅 茂太 芦刈 圭一 加藤 真吾 高津 智弘 桑島 拓史 金子 裕明 永井 康貴 亘 育江 佐藤 高光 山岡 悠太郎 山本 哲哉 梁 明秀 前田 愼 中島 淳 日暮 琢磨
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.2533-2543, 2022 (Released:2022-12-20)
参考文献数
27

【目的】消化管内視鏡検査(Gastrointestinal endoscopy:GIE)は,多くの疾患の早期発見および治療に有用であるが,GIEはコロナウイルス病2019(COVID-19)大流行期における高リスク処置と考えられている.本研究は,医療スタッフが曝露される唾液,胃液および腸液における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)陽性割合を明らかにすることを目的とした.【方法】本研究は単一施設における横断研究であり,2020年6月1日から7月31日まで,横浜市立大学附属病院でGIEを受けた患者を対象とした.すべての研究参加者は3mlの唾液を提出した.上部GIEの場合,10mlの胃液を内視鏡を通して採取し,下部GIEの場合,10mlの腸液を内視鏡を介して採取した.主要評価項目は唾液,胃液および腸液中のSARS-CoV-2の陽性率とした.また,SARS-CoV-2の血清特異的抗体や患者の背景情報についても検討した.【結果】合計783検体(上部GIE:560および下部GIE:223)を分析した.唾液検体のPCRでは,全例が陰性であった.一方で,消化管液検体においては2.0%(16/783)がSARS-CoV-2陽性であった.PCR陽性症例とPCR陰性症例の間では,年齢,性別,内視鏡検査の目的,投薬,抗体検査陽性率に有意差は認めなかった.【結論】無症候性の患者において,唾液中に検出可能なウイルスを持たない患者であっても,消化管にSARS-CoV-2を有していた.内視鏡検査の医療スタッフは処置を行う際に感染に留意する必要がある.本研究はUMIN 000040587として登録されている.
著者
梁 明秀
出版者
日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
雑誌
日本プロテオーム学会大会要旨集 日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
巻号頁・発行日
pp.108, 2009 (Released:2009-09-14)

タンパク質のリン酸化は増殖や分化といった数多くの細胞の機能を調節する上で極めて重要なメカニズムの1つである。しかしながら、いかにしてリン酸化されたタンパク質がリン酸化に引き続いて機能を大きく変化させるかという機構については不明な点が多かった。ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1はリン酸化されたセリン/スレオニン-プロリン(Ser/Thr-Pro)というモチーフに結合し、そのペプチド結合を介してタンパク質の構造をシス・トランスに異性化させることにより、リン酸化タンパク質の機能を調節する新しいタイプのレギュレータである。 この 新規の“リン酸化後”調節機構は標的タンパク質の活性、細胞内局在、安定性等を変化させ、リン酸化タンパク質の機能発現に重要な役割を果たす。最近の研究により、Pin1は乳癌や前立腺癌などの悪性腫瘍およびアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患の病態形成に極めて重要な役割を果たすことが明らかになった。また、Pin1ノックアウトマウスを用いた研究により、Pin1は上記疾患のみならず、網膜変性症、精子低形成症、自己免疫疾患などの難治性疾患の形成に関与することも示唆されている。このようにPin1が多くの疾患に関与するのはなぜであろうか? それはPin1がエフェクター因子として直接疾患形成に関与するわけではなく、あくまでもリン酸化タンパク質の調節因子として、リン酸化を介した疾患形成因子の機能発現に関与しているからであると考えられる。実際に、Pin1 の基質となる機能タンパク質は、臓器、細胞ごとにその種類が異なり、また同一の組織や細胞内においても正常時と疾患時ではPin1基質タンパク質のリン酸化状況やPin1との結合性も異なる。 我々はこのPin1 の特性を生かし、Pin1を分子プローブとして用いることにより、難治疾患の形成に直接関与する責任分子や関連するシグナル伝達系の同定を試みている。本演題ではPin1のベーシックな機能や構造について概説するとともに、Pin1を介した疾患形成の分子メカニズムについて最近の知見を紹介する。