著者
梁 洪淵 斎藤 一郎 森戸 光彦 美島 健二 井上 祐子
出版者
鶴見大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

目的:口腔の老化度指標を確立することを目的に抗加齢医学に基づいた全身と口腔の老化度検査を行い両者の比較検討をする。背景:「健康と若さを保ちながら年を重ねることを可能にする医学」として抗加齢医学の確立が望まれ、健康増進のための指導や療法は「健康日本21」を実現させるための新たな予防法としての取り組みであることから、歯科領域においても抗加齢歯科医学の実践が急務である。一方、本学ドライマウス外来を受診した2600人の統計解析の結果より、ドライマウスの大半は生活習慣病や服用薬剤の副作用等により発症していることが明らかとなり、さらに唾液分泌障害の要因の一つに酸化ストレスが関与している事も判明した。これらのことを背景に本研究では口腔と全身の老化度の関係を検討する。対象:本学アンチエイジング外来を受診した30名を対象に下記の検査を実施した。方法:検査項目口腔の老化度検査 1.唾液分泌量 2.現在歯数 3.カンジダ菌検査 4.歯周組織検査 5.咬合力 6.反復唾液嚥下テスト 7.唾液CoQ10検査全身の老化度検査 1.血液検査(酸化ストレス、ホルモン等) 2.脈波伝播速度 3.体組成検査 4.骨密度 5.握力 6.脳機能検査 7.毛髪検査評価:過去の文献より口腔の老化度に関する項目を設定し、口腔と全身の老化度を測定することにより両者の老化度の関連を評価した。結果:全身ならびに口腔の検査を実施した結果、次の項目に相関が認められた。握力と安静時唾液分泌量(r=0.5770 p=0.03)、総テストステロンと安静時唾液分泌量(r=0.6607 p=0.05)、BMIと安静時唾液分泌量(r=-0.5752 r=0.03)、ウエスト/ヒップ比と安静時唾液分泌量(r=-0.5933 p=0.03)、PWVと現在歯数(r=-0.4958 p=0.005)、骨密度と現在歯数(r=0.4011 p=0.02)以上の結果から、口腔の老化度検査は全身の老化度を把握する一つの指標となる可能性が示唆された。