著者
山村 喜之 梅本 一史 鈴木 友啓 加藤 航平 武藤 潤 中西 喜嗣 吉岡 達也 村川 力彦 大竹 節之 大野 耕一
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.933-937, 2015 (Released:2016-10-31)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

再発直腸癌に対するmFOLFOX6療法により,高アンモニア血症を経験したので報告する.症例は73歳,男性.直腸癌に対してハルトマン手術を施行した.術後補助化学療法としてUFT/UZELを6カ月間内服した.術後9カ月に腹膜播種を認めたため,バイパス手術施行後にmFOLFOX6療法を施行した.治療開始2日目に意識障害を認め,MRIを施行したが,異常所見は認めなかった.血液検査では高アンモニア血症を認めた.5-FUに起因する高アンモニア血症による意識障害と診断し分岐鎖アミノ酸投与と持続的血液透析を施行した.翌日には意識障害および血中アンモニア値は改善した.mFOLFOX6やFOLFIRI療法など高容量の5-FUを投与した際に,意識障害を認めた場合は,高アンモニア血症に留意すべきである.
著者
村川 力彦 梅本 一史 鈴木 友啓 加藤 航平 山村 喜之 大野 耕一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.2289-2292, 2015 (Released:2016-03-31)
参考文献数
14

症例は61歳,男性.腹痛にて近医を受診,胆石症と診断された.術前精査で,横行結腸肝弯曲部に早期大腸癌を認めたが,内視鏡的切除が困難なため,手術目的で紹介となった.手術は腹腔鏡下結腸右半切除術および胆嚢摘出術を施行した.術中,胆嚢管内に腫瘤を認めたため,腫瘍を含め切除した.切除標本では胆嚢管に14×10mmの黄色調の亜有茎性腫瘍を認めた.病理組織学的検査で腫瘍細胞は核が円形から卵円形を呈し,好酸性顆粒状胞体を有し,胞巣状・索状・リボン状に増殖していた.免疫染色ではsynaptophysin陽性,chromogranin A陽性,CD56陰性,Ki-67指数は3-4%であった.以上より胆嚢管カルチノイドと診断した.腫瘍は核分裂像・脈管侵襲・神経周囲浸潤を認めなかったが,線維筋層への浸潤を認めた.術後4年6カ月再発なく経過している.
著者
友近 晋 梅本 一
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所報告
巻号頁・発行日
vol.14, no.185, pp.471-558, 1939-11

有限な幅を持つ非壓縮性完全流體の二次元的噴流の中に置かれた平面翼の受ける力を理論的に研究することは,理論的に興味あるばかりでなく,實際問題の立場からも極めて重要である.何故かなれば,この問題はGottingen型風洞の中に矢高の小さい薄い翼型を斷面に持つ翼模型を置く樣な實際の場合と緊密な關聯があるからである.この問題は,既に十年以上も前に,佐々木達治郎博士により適當な等角寫像を應用して嚴密に解かれたが,諸種の量に對する嚴密な式が極めて複雜であるために,同博士は唯迎角が10°である場合のみの數値計算を遂行されたに過ぎなかつた.その後,佐々木博士はその理論的結果を我國に於ける幾つかのGottingen型風洞に於いて同一の翼模型に就いてなされた實驗結果と比較されたが,爾來迎角が10°以外の他の値を採る場合に就いての嚴密な數値計算は遂行されてゐない樣である.然しながら,迎角の種々の値に對する嚴密な數値計算を遂行して,噴流の自由表面が平面翼の揚力に及ぼす干渉が迎角と共に如何に變るかを吟味することは興味あることと思はれる.斯樣な吟味をすることが本論文の目的の第一のものである.一方に於いて,噴流の中に置かれた翼の受ける揚力の問題はKαRMαN, GLαUERT及びPISTOLESIによつて夫々近似的に取扱はれ,揚力に對する近似式が互に異なれる形で與へられてゐるが,もつと合理的な近似式は嚴密な式からも導出することが出來る筈である.この樣に揚力の嚴密な式からその近似式を導出することが本論文の第二の目的である.本論文の主な目的は上述の二つであるが,便宜上,問題を嚴密に解くために必要な等角寫像に關する議論から敢へて出發し,嚴密な種々の計算を遂行して先づ揚力その他の量に對する嚴密な一般式を求めた.そして,特に平面翼の中點が上流無限遠に於ける噴流の中心線上にある樣な實際的に重要な場合を考へ,迎角が5°,10°,15°である場合に對する非常に面倒な嚴密な數値計算を遂行して,平面翼の揚力が噴流の自由表面のために如何なる影響を受けるか,又その影響が迎角と共に如何に變るかを吟味した.平面翼の幅を2α,無限遠に於ける噴流の幅をD,噴流の中で平面翼の受ける揚力をL,又同じ翼が無限に擴がつてゐる流れの中に置かれた場合に受ける揚力をL_0とすると,L/L_0なる比の値は2α/Dなる比の値が増すに從つて減少することが知れる.又,2α/Dの或る一定値に對するL/L_0の値は迎角βの値が増すに從つて,極めて僅かではあるが,増加することが知れる.然し,その樣な増加の割合は極めて小さいので,βが5°,10°,15°の樣な實用的範圍の値を採る時には,此等の場合に對してL/L_0を縱軸に採り2α/Dを横軸に採つて描いた曲線は,特に2α/Dが0.15より小さい時には,殆んど互に重なつてゐると看做すことが出來る.次に,揚力及びその他の量に對する嚴密な式から出發し,相當面倒且つ困難な近似計算を遂行することによつて,平面翼の中點が上流無限遠に於ける噴流の中心線上にある場合に就いて,揚力の近似式を2α/Dの羃級數の形で求めた.斯樣な近似計算は著者の一人友近が1934年英國Cαmbridgeに滯在中他の研究の餘暇に遂行したものであるが,最近計算を再吟味しすべての結果の正しいことを確めた次第である.L/L_0に對する吾々の近似式によつて計算したL/L_0の近似値と,同じ量に對する嚴密な値とを比較して,吾々の近似式の適用範圍を吟味した.迎角βの値の如何に關係なく,2α/Dが大體0.2より小さい場合には,吾々の近似式は正確な値に充分近い樣な良い値を與へることを知つた.本論文に於いて求めた種々の量に對する嚴密な式は極めて複雜であるから,嚴密な數値計算を遂行することは非常に困難である.吾々は,迎角βが5°,10°及び15°なる三つの場合に就いて,副變數qの幾つかの値に對し嚴密な數値計算を遂行したが,同樣の計算を他の場合に繰返へすことは殆んど實現不可能に近い位である.この意味に於いて,實用的な場合にL/L_0に對して相當良い近似値を與へるところの吾々の近似式は實際的立場から見て重要であると思ふ尚ほ,吾々の近似式は平面翼の場合に對する揚力その他の種々の量の嚴密な式から導出したものであるが,矢高の小さい薄い翼に對しては適用しても差支へないであらう.又,二次元的噴流の中に置かれた平面翼を取扱つて得られた吾々の近似式は,Gottingen型風洞の中に矢高の小さい薄い翼型の斷面を持つた翼模型を置く場合に對しても,大した誤なしに,適用することが許されるであらう.實際,吾々の理論的結果を,約十年前我國に於ける幾つかのGottingen型風洞に於いて遂行された同一の翼模型に對する實驗結果と比較した結果によると,豫想の通り,吾々の近似式はGottingen型風洞の中に翼模型を置く樣な實際の場合にもかなり良く適用されるのである.