著者
東山 考一 梨本 篤 佐々木 壽英 赤井 貞彦 加藤 清 佐野 宗明 筒井 光広
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.771-778, 1991-03-01
被引用文献数
13

80歳以上を高齢者とし,高齢者胃癌症例66例と74歳以下の胃癌症例4,066例との間で種々の臨床病理学的事項について比較検討し,高齢者胃癌の持つ外科治療上の問題点を追求した.その結果:1)両者間の切除率および胃全摘率に差はなかったが,切除直死率は74歳以下群の0.8%と比べて5.3%と高齢者群で有意に高く(p<0.05),22.8%の術後合併症の発生をみた.2)組織学的に分化型が多く,リンパ節転移陽性率は高い傾向にあった.3)両者の治癒切除例における5年生存率は他病死を除くと74歳以下群74.8%,高齢者群66.2%であるが,他病死を含むとそれぞれ72.1%,51.9%となり高齢者群で他病死が多くみられた.4)術後合併症の発生に関する危険因子として術前の肺活量(%vc)が参考になると考えられた.以上よりquality of lifeを考慮し高齢者胃癌では全身状態に問題がなければ治癒切除を目ざし,不良なものは無理をしない合理的な手術が望ましいと考えられた.