著者
梶田 幸宏 岩堀 裕介 村松 由崇 斉藤 豊
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.389-392, 2017 (Released:2017-09-20)
参考文献数
10

エコーを用いて,腱板断裂患者,凍結肩患者,反復性肩関節脱臼患者,健常人の第5頸椎(以下C5)神経根の断面積を比較検討した.対象は腱板断裂患者36例,凍結肩患者16例,反復性肩関節脱臼患者10例と,健常人100人とした.エコーを用いて頚椎横突起レベルのC5神経根の断面積を算出し,各疾患の患健側,健常人の間で比較した.腱板断裂では患側は7.8mm2±2.7mm2,健側は7.9mm2±3.0mm2,凍結肩では患側は8.7mm2±2.7mm2,健側は8.3mm2±2.4mm2,反復性肩関節脱臼では患側は6.6mm2±2.3mm2,健側は6.2mm2±2.1mm2,健常人では7.0mm2±1.9mm2であった.全群において両側間で有意差がなかった.健常人に比べ腱板断裂,凍結肩では,患健側とも有意に肥大を認めた.腱板断裂患者と凍結肩患者ではC5神経根は患側・健側ともに健常人と比較して肥大していた.肩関節由来の痛みにC5の肥大が関与することが示唆された.
著者
伊藤 岳史 岩堀 裕介 筒井 求 梶田 幸宏 花村 浩克
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.598-601, 2017

16歳女性,ハンドボール選手.ハンドボール中に右肩水平外転肢位を強制され,右肩関節が亜脱臼した.その後,右肩脱臼不安感が持続するため当科受診した.外傷性肩関節前方不安定症と診断し,Bankart損傷とSLAP損傷および関節上腕靭帯上腕骨側剥離(HAGL)損傷の鏡視下修復術を行った.術後に腋窩神経固有支配領域の知覚低下と三角筋麻痺を確認し,針筋電図検査にて三角筋に脱神経電位を認めたため,術後3か月時に腋窩神経剥離術を行った.HAGL修復に用いた縫合糸が腋窩神経を貫通し結紮していた.糸を除去した上で神経剥離術を行った.神経症状は良好に改善し,再手術後6か月でハンドボールに完全復帰した.HAGL損傷の鏡視下修復術の際には腋窩神経損傷の危険性を念頭に置いて慎重に行う必要がある.
著者
梶田 幸宏 岩堀 裕介 高橋 亮介 村松 由崇
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.350-353, 2017

<p> 超音波を用いて尺骨神経の前内側への移動量を肩の外転角度と肘の屈曲角度を変えて検討した.対象は健常人10名20肘で,超音波を用いて肘部管の短軸像を描出.上腕骨滑車から尺骨神経中央までの距離(TUD)を肩関節外転60・90・120度,肘関節屈曲30・60・90・120度の計12肢位で比較検討した.</p><p> 肘関節屈曲30・60・90・120度のTUDは各肩関節外転角度で利き手側と非利き手側の各肢位で有意差はなかった.肩関節の各外転角度において肘関節屈曲30度と比較して120度では有意にTUDは増加した.</p><p> 肘関節の屈曲角度を深くすることで,尺骨神経は有意に内側に移動したが,肩関節外転角度の影響は受けていなかった.肘部管における尺骨神経の位置の変化には肩関節の外転運動は関与しないことが示唆された.</p>
著者
尾関 圭子 飯田 博己 岩本 賢 中路 隼人 三浦 祐揮 梶田 幸宏 村松 由崇 木村 伸也 岩堀 裕介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1269, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに】近年,野球競技への女性参加が増え,その競技レベルは向上しつつある。野球選手の身体特性については,男性を対象にした報告は多数あるが,学童女子に関する報告は少ない。我々は,2014年から学童女子野球選手を対象にメディカルチェックを行っている。そして,2015年スポーツ傷害フォーラムにおいて,学童女子選手は男子と同等の肩後方タイトネスを有していることを報告した。今回は,学童女子野球選手における肩・肘及び下肢の関節可動域を,男子と比較し報告する。【方 法】対象は,女子は2014~2016年度ガールズベースボールトーナメントに参加した,愛知県代表選手43名(平均年齢11.3±0.5歳)とした。男子は2015年度名古屋市小学生軟式野球選手の野球検診で,当院の検診に参加した67名(平均年齢11.9±0.4歳)とした。方法は,ROM測定を以下の項目について両側行った[肩関節:90°外転位外旋・90°外転位内旋・90°屈曲位内旋・水平屈曲,肘関節:屈曲・伸展,股関節:内旋・伸展・SLR]。90°外転位外旋と内旋の和をTotal Arcとして求めた。各測定項目を,男女間および投球側と非投球側間で比較した。統計処理には,Mann WhitneyのU検定を用いた(p<0.05)。【結 果】1.男女の比較:90°外転位内旋・Total arc・水平屈曲・股関節内旋・股関節伸展・SLRにおいて,投球側・非投球側ともに女子の方が有意に大きかった。また,非投球側の肘関節伸展は,女子の方が有意に大きかった。2.投球側と非投球側の比較:男女ともに投球側の90°外転位内旋・水平屈曲・90°屈曲位内旋・肘屈曲が有意に小さかった。女子では,投球側の肘伸展が有意に小さかった。また,男子では投球側の股関節内旋が有意に小さかった。【結 論】男女ともに投球側の肩関節90°外転位内旋・水平屈曲は減少しているが,女子の方がROMは大きかった。つまり,一見ROMが良好に保たれている女子においても,男子と同等に投球側の肩後方タイトネスを生じており,注意を要すると考える。肘関節伸展可動域について,男女の比較では,女子の方が非投球側が大きかったが,投球側は男子と差がなかった。また,投球側・非投球側の比較では,男子では差がなく,女子では投球側が減少していた。つまり,女子の方が投球側の肘屈筋群にタイトネスを生じていることが示唆された。下肢のROMは,女子の方が男子よりも全て大きかった。また,女子では左右差を認めなかったが,男子の股関節内旋は投球側で小さい,あるいは非投球側で大きかった。総じて,女子で上肢のROM左右差が男子より大きく,下肢では左右差を生じていなかった。以上から,性差の他に,女子の野球動作が上肢に依存している可能性も考えられた。今後は,動作分析を加えてさらに検討していきたい。