著者
周藤 芳幸 金山 弥平 長田 年弘 師尾 晶子 高橋 亮介 田澤 恵子 佐藤 昇 大林 京子 田中 創 藤井 崇 安川 晴基 芳賀 京子 中野 智章
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

当該年度は、前プロジェクト「古代地中海世界における知の伝達の諸形態」の最終年度に当たっており、そこで既に策定されていた研究計画を着実に進めるとともに、現プロジェクト「古代地中海世界における知の動態と文化的記憶」の本格的な展開に向けて新たな模索を行った。具体的には、図像による知の伝達の諸相を明らかにするために、図像班を中心に研究会「死者を記念する―古代ギリシアの葬礼制度と美術に関する研究」を開催し、陶器画による情報の伝達について多方面からの共同研究を行った。また、9月3日から7日にかけて、国外の大学や研究機関から古代地中海文化研究の最先端で活躍している13名の研究者を招聘し、そこに本共同研究のメンバーのほぼ全員が参加する形で、第4回日欧古代地中海世界コロキアム「古代地中海世界における知の伝達と組織化」を名古屋大学で開催した。このコロキアムでは、古代ギリシアの歴史家の情報源、情報を記録する数字の表記法、文字の使用と記憶との関係、会計記録の宗教上の意義、法知識や公会議記録の伝承のメカニズム、異文化間の知識の伝達を通じた集団アイデンティティの形成、神殿などのモニュメントを通じた植民市と母市との間の伝達など、古代地中海世界で観察される知の動態をめぐる様々な問題が議論されたが、そこからは、新プロジェクトの課題に関して豊富なアイディアと示唆を得ることができた。これについては、その成果の出版計画の中でさらに検討を重ね、今後の研究の展開にあたって参考にする予定である。これに加えて、当該年度には、知の伝承に関する基礎データを獲得するためにエジプトでフィールドワークを行ったほか、9月にはダラム大学名誉教授のピーター・ローズ博士、年度末にはオックスフォード大学のニコラス・パーセル教授の講演会を企画・開催するなど、国際的なネットワークの強化にも努めた。
著者
高橋 亮介 有泉 陽介 岸根 有美 冨田 誠 小田 智三
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.6, pp.817-824, 2017-06-20 (Released:2017-07-15)
参考文献数
32
被引用文献数
1

背景: 扁桃周囲膿瘍は重症な合併症を生じる可能性から適切な対応を要する. 目的: 当地域の扁桃周囲膿瘍の原因菌と薬剤耐性を評価する. 化膿性扁桃炎治療後に扁桃周囲膿瘍へ進展した頻度と処方抗菌薬の関連を検討する. 対象と方法: 2010年4月から2016年3月の扁桃周囲膿瘍214例の前医抗菌薬を, また2010年4月から2014年3月の119例の原因菌と薬剤耐性を診療録から記述した. 次に2010年4月から2016年3月の化膿性扁桃炎397例の扁桃周囲膿瘍進展頻度について過去起点コホート研究を施行した. さらに化膿性扁桃炎, 扁桃周囲膿瘍既往有無での解析も施行した. 結果: 扁桃周囲膿瘍への前医処方はセファロスポリン系37% (31/84処方), キノロン系抗菌薬25% (21/84処方) であった. 膿汁培養ではレンサ球菌属67% (98/66株), 嫌気性菌13% (13/98株) であった. 全検出菌の45% (42/94株) がキノロン系抗菌薬に耐性を示した. 化膿性扁桃炎へのキノロン系抗菌薬処方群が他抗菌薬処方群と比較し, 治療後に扁桃周囲膿瘍へ進展した頻度が有意に高値 (リスク比11.8, p=0.032) であった. 既往がある症例の検討も同様の結果であった. 結論: 化膿性扁桃炎, 扁桃周囲膿瘍の既往がある化膿性扁桃炎へのキノロン系抗菌薬投与は慎重を要することが示唆された. 今後さらなる検討が望まれる.
著者
梶田 幸宏 岩堀 裕介 高橋 亮介 村松 由崇
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.350-353, 2017

<p> 超音波を用いて尺骨神経の前内側への移動量を肩の外転角度と肘の屈曲角度を変えて検討した.対象は健常人10名20肘で,超音波を用いて肘部管の短軸像を描出.上腕骨滑車から尺骨神経中央までの距離(TUD)を肩関節外転60・90・120度,肘関節屈曲30・60・90・120度の計12肢位で比較検討した.</p><p> 肘関節屈曲30・60・90・120度のTUDは各肩関節外転角度で利き手側と非利き手側の各肢位で有意差はなかった.肩関節の各外転角度において肘関節屈曲30度と比較して120度では有意にTUDは増加した.</p><p> 肘関節の屈曲角度を深くすることで,尺骨神経は有意に内側に移動したが,肩関節外転角度の影響は受けていなかった.肘部管における尺骨神経の位置の変化には肩関節の外転運動は関与しないことが示唆された.</p>
著者
高橋 亮介
出版者
龍谷大学
雑誌
龍谷大学大学院文学研究科紀要 (ISSN:13433695)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.109-126, 2010-11-27
著者
高橋 亮介
出版者
公益財団法人史学会
雑誌
史學雜誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.115, no.2, pp.169-193, 2006-02-20

Egypt saw a great expansion in the popularity of the local custom of brother-sister marriage during the first two centuries of the AD era, especially among metropolites, a privileged class in the Roman province. Why did this custom unfamiliar to the Romans flourish under Roman rule? How did the practice of sibling marriage function in Romano-Egyptian society? These are the questions this article addresses. Previous scholarship has attributed the reason for such popularity to the introduction of a rigid status system, under which provincial elites needed to prove their ancestry in order to acquire privileged status. Sibling marriage allegedly made the proof easier. However, another perspective is worth considering; that is, the economic function of brother-sister marriage. While scholars have admitted that sibling marriage contributed towards preventing the fragmentation of family property, this function has not been sufficiently explored in the historical context of the transition from Ptolemaic to Roman society. The question to be asked is how the significance of family property changed. Changes in the local administrative system and their effect on the economic situation of the provincials, especially their land holding system, stand out as particularly suggestive. Rome's rule over her empire depended not on a highly centralised bureaucracy down to the lowest level of local administration (like that of Ptolemaic Egypt), but on indirect control through cities, and especially their wealthy elites. When Egypt was made a Roman province, therefore, the Romans set out to create there a wealthy elite class by legitimating and expanding the private ownership of land. While these landowners had fiscal privileges and relatively large properties, they were expected to expend their wealth on local administration. They needed to be keenly concerned about the management of their property, in order to leave their offspring enough to perform the public services which accompanied their status. In terms of the motivation for brother-sister marriage, what needs most emphasis is women's acquisition of land as the result of its privatisation. Although some provincial families tried to limit women's acquisition of land through inheritance or dowry, it seems that, nevertheless, landholding by women considerably increased. Brother-sister marriage was an effective method to prevent fragmentation of family property in this situation of a significant increase of property coming into the possession of women. The Roman policy of governing the province indirectly was therefore responsible for the expansion of the local custom of brother-sister marriage. This article shows the complexity of the impact of Roman rule on a society and how the history of a local, non-Roman, custom also became part of the process of "Romanisation."
著者
高橋 亮介
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度は以下の研究を行った。ローマ期テプテュニスの家族史研究については、先々年度に作成した論文「ある家族の衰退」を大幅に書き改め、現在印刷中である。また同論文の英語版を外国の学術雑誌に投稿し、審査中である。また博士論文の他の部分についても改訂を進めた。また2006年に発表した邦語論文「ローマ期エジプトにおける兄弟姉妹婚」の改訂英語版Brother-Sister Marriage and Inheritance Strategies in Greco-Roman Egyptをロンドン大学のRowlandson博士と共に作成し、英国の学術雑誌Journal of Roman Studiesに掲載した。ここでは邦語論文以後に発表された研究を批判的に検討し、新たな論点を盛り込みつつ自説を再論した。ザウィエト・スルタン採石場のグラフィティ研究に関しては、前年度の調査概報を公刊し夏期に現地調査を行った。さらにグラフィティの二言語併用状況の歴史的性格を明らかにすべく、プトレマイオス朝行政における二言語併用文書の使用実践について考察し、アコリス遺跡調査の公開研究会で報告「プトレマイオス朝の行政と文字:二言語併用文書をめぐって」を行った『史学雑誌』第118編第5号「2008年の歴史学界」で「古代ローマ」の項目を執筆し、2008年に出版された古代ローマ史に関する邦語文献の紹介・批評を行った。鷲田睦朗氏と共訳したムーリツェン「民衆/民会の権力:ローマ政体への新しいアプローチ」は共和政期ローマの政治体制を論じたもので、ヘレニズム諸王国を下し地中海世界全域にわ社たる帝国を成立させたローマ理解を深めるものである。これらはエジプトを地中海世界の文脈でとらえる作業の一環社として位置付けることができる。
著者
森 芳樹 吉本 啓 稲葉 治朗 小林 昌博 田中 慎 吉田 光演 沼田 善子 稲葉 治朗 小林 昌博 高橋 亮介 田中 愼 沼田 善子 吉田 光演 中村 裕昭
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

文法理論の拡張にあたって実用論を援用しようとする試みは少なくない。本プロジェクトでは意味論を諸インターフェイスの中心に据えて、コンテクストと文法の相互関係についての研究を進めた。記述上の対象領域としては情報構造とアスペクト, 時制, モダリティー(ATM)を選択し、一方では, パージングを基盤に置いた構文解析を言語運用の分析と見なすDynamic Syntax(DS)の統語理論的な可能性を検討した。他方では、形式意味論・実用論と認知意味論・実用論の双方の成果を取り入れながらテクスト・ディスコースとコンテクストの分析を進めた。 なお本プロジェクト期間中に、当研究グループから4本の博士論文が提出された。