著者
中村 晋平 二村 伸一 前野 和也 葭谷 耕三 棚橋 光彦
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.178-185, 2011-05-25 (Released:2011-05-28)
参考文献数
12
被引用文献数
2

木材の3次元成形技術は国産針葉樹材の利用拡大および,プラスチック代替資源としての木材利用に大きく寄与できる可能性を持つ技術の一つである。しかし,これまでに原料として用いられて来た半固定材はR方向に圧縮を加えた柾目材のみであり,木目の美しさ等を最大限に生かすことが出来なかった。本研究では,2段階の圧縮工程を経ることにより陥入を生じることなくT方向へ木材を圧縮することを実現し,湿潤条件下において100%程度の伸び率を有する板目材を得ることに成功した。また,まさ目材および板目材の半固定材を成形し,これらを原料として木材単板からのスピーカーコーンの成形を試みた。0.4 mm厚および0.5 mm厚の柾目材を用いた場合80%程度の成形成功率を示し,板目材を用いた場合でも50%程度の成功率を示した。音圧周波数特性の測定の結果,これらが市販ウッドコーンに匹敵する音響特性を有することが示された。
著者
横山 慎一郎 足立 良富 棚橋 光彦
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.506-514, 2015-09-20 (Released:2015-12-30)
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

高圧水蒸気圧搾蒸留とは,木材圧縮成形の原理を利用し,蒸気釜内で原料を圧縮成形し,その際生じる圧搾汁の蒸留分を回収するものである.本研究では,スギ(Cryptomeria japonica)およびヒノキ(Chamaecyparis obtusa)枝葉部から,アロマオイルとして用いる精油および固形燃料を,同一工程で作出する技術の確立を目的に,高圧水蒸気圧搾蒸留処理の条件について検討を行った.高圧水蒸気圧搾蒸留処理により,常圧蒸留にて10時間で抽出される量(3.80および11.4 g/㎏)以上の精油(13.2-15.6および26.4-33.6 g/㎏)が40分間で得られることが明らかとなった.また,180℃(1.0 MPa)よりも140℃(0.4 MPa)で処理をした方が,得られる精油の匂い成分が常圧水蒸気蒸留と類似しており,かつ抽出量も多かった.本処理残渣のかさ密度は,スギ枝葉部で約18倍(440 ㎏/㎥),ヒノキ枝葉部で約7倍(460 ㎏/㎥)に向上した.さらにこれらの残渣は,廃棄物固形化燃料としての規格を満たしていた.
著者
棚橋 光彦 大田 親義 則元 京
出版者
岐阜大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1992

新しい木材の加工法として高圧水蒸気による木材の圧縮成形加工技術の発展に向けて,装置やプレス治具の開発および処理条件の検討を行った。この装置を用いることにより丸太から切削せずに直接角材に圧縮成形することを可能とした。特に軟化条件や変形を固定するための処理条件、減圧及び冷却条件などについて検討した。また処理条件を検討する際,高温高圧水蒸気下で木材を圧縮成形している時点での木材内部の温度及び応力の測定を経時的に行い、プレスによって木材中に発生した応力が水蒸気処理の過程で減少していく状況を追跡し、変形を完全に固定する条件を明らかにした。また種々の形状への圧縮成形加工についても検討し,断面が6角やロッグハウス用に組み合わせられるように凹凸のほぞ加工を施した形状への圧縮加工、立体トラス用の金属との接合部材用に1方向にのみ圧縮し、表面のみを圧密化した角材などの製作を試みた。さらに木材を種々の形状の治具でプレスすることによる木材表面の加飾性などについて検討し実用規模での応用の可能性について検討した。また木材に大変形を与えられる事を応用して、小径木や枝材などの未利用材を丸太のまま数本接着剤を用いて集成する事により大きな板材や大断面集成材の製造を試みた。樹皮を除いた場合はJIS規格を充分満たす接着強度が得られ、スギのような軟質材から硬質広葉樹のように表面硬度の硬い板材の製造が可能となった。しかし、小径木から樹皮を除去するのは手間がかかるため、樹皮付きのままで集成材に成形することを試みた。接着剤としては樹皮への浸透性の高いものが要求されるため、含浸用の接着剤を使用し、処理条件の検討を行った。樹皮付きでも集成材の製造が可能であり、おもしろい断面形状のものが得られたが、樹皮と木材との境界部分の強度が弱く、この点については今後接着剤の種類を変えて適正なものの選抜や、新しい接着剤の開発が必要である。また接着剤を使用しないで、圧縮変形を用いて物理的な接着剤による集成材の製造についても検討した。接着したい木材にドリルで孔をあけておき、細い角材を通して圧縮する事により、物理的に数本の太鼓挽きした小径木を一枚の板に成形した。これによって接着剤を使用しない簡単な集成材の製造が可能となった。このように圧縮成形技術によりこれまで利用法の無かったスギ間伐材を効率よく利用できる方法を開発でき、新しい木材工業が発展できるものと期待している。
著者
薩如拉 中村 晋平 葭谷 耕三 棚橋 光彦
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.193-200, 2012
被引用文献数
7 1

竹材の利用用途の拡大を目指し,丸竹を外皮及び内皮をつけたまま完全展開し,平板化することを試みた。3-5年生のマダケ(円周240-275mm)を高圧水蒸気で軟化し,横型圧入装置を用いて外周を徐々に絞り込みながら内周220mmのパイプ内に圧入した。得られた圧縮丸竹に軸方向に沿って一か所割れ目をいれ,温水(70-80℃)中で加熱しながら平板状に展開した。予備展開された竹材をステンレス製の治具にはさみ,プレスによって完全に平板に展開した。圧縮時の最適軟化条件は140℃-30分処理であり,圧縮の成功率および平板展開の成功率により,最適圧縮率は14%-19%であった。これは圧縮により試料の外径が未圧縮の試料の内径よりも小さくなることで,展開時に要求される内周の伸びを満たすことができるために完全平板展開を容易に実現できたものと考えられる。平板化された竹材を180℃-4分の高圧水蒸気で形状固定処理を行い,完全平板展開竹材を得ることに成功した。