著者
森 信成
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1960, no.10, pp.65-79, 1960-03-31 (Released:2009-07-23)

人間・歴史・世界の問題は言いかえれば自由と必然 (外的必然事としての偶然性をもふくめて) の関係の問題ということになるであろう.そして人間についてはとくに自由が、歴史については必然性が、世界については両者の具体的な関係が、換言すれば理論と実践 (実践のとくに道徳的な理解をもふくめて) の関係が、現実の具体的把握とむすびつけて問題とされていると解してよいであろう.またこの関係において、歴史認識における一元論、二元論、多元論があらわれ、そのことから歴史的発展を動かすもの、窮極原因は何かが問われているといってよいであろう.自由と必然の問題は、それが哲学の根本問題である唯物論か観念論かの問題の直接的表現であるという意味においても、また戦後の思想対立が自由の概念を基軸として、近代主義的エゴの自由と人類と平等に基礎をおく民主主義的自由という二つの自由の対立として展開されているという意味においても.現在きわめて重要な意義をもっている [註] 唯物論と観念論が戦後たがいに交らざる平行線のかたちをとったことの主たる理由は、唯物論が自由の唯物論的把握を積極的に展開せず.観念論の側からの不断の問題提起にもかかわらず自由とは必然性の洞察であるというただそのことだけをくりかえすにとどまってきたところにあったといってよいであろう.
著者
森 信成
出版者
大阪市立大学大学院文学研究科
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.37-50, 1965-01

ことわりがき : 昨年春以来、公然たるかたちをとってあらわれるにいたった中ソの思想的、政治的対立は、世界政治に深刻な影響を与えている。本稿は、本誌に中ソ論争の理論的内容を紹介するために、中共の代表的イデオローグである周揚の、中共派の主張を要約した、いわばその結語ともいうべき「哲学、社会科学工作者の戦斗的任務」(『前衛』一九六四年四月号所収)をとりあげ、批判したものである。……