著者
森 勝義 高橋 計介 尾定 誠 松谷 武成
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

1.マガキ液性因子の同定マガキの生体防御機構に関わると推測される液性因子を生化学的に特定した。まず、血リンパから210kDaのサブユニットからなるホモ二量体の420kDaのフィブロネクチンの精製に成功した。また、血リンパに少なくとも3種類存在すると考えられたレクチンのうち、約630kDa(22kDaと23kDaのサブユニットからなるヘテロポリマー)のEレクチンと約660kDa(21.5kDaと22.5kDaのサブユニットからなるヘテロポリマー)のHレクチンを精製した。さらに、殺菌因子として消化盲襄から17kDaのリゾチーム分子を精製し、食細胞による食菌後の殺菌に強く関与するミエロペルオキシダーゼがマガキ血球で初めて同定された。2.各因子の特性と細胞性因子との関係マガキフィブロネクチンはヒト、ニジマスフィブロネクチンとは血清学的に交差性はなかったものの、共通の細胞認識領域を持つことから、創傷部への細胞の誘導接着への積極的関与が推察された。Eレクチン、Hレクチンを含むそれぞれの活性画分に細菌に対する強い凝集作用が認められると同時に、凝集活性の見られない他の多くの細菌への結合も確認され、レクチンの幅広い異物認識機能が明らかになった。しかし、細菌への結合とそれに続く食作用のこう亢進との関連で期待された、オプソニン効果は見られなかった。精製された消化盲襄由来のリゾチームは、その特性からこれまで報告してきたリゾチーム活性を示した分子であり、外套膜由来リゾチームも同一成分であると考えられた。一方、至適pHが異なり、従来のリゾチームが示したのとは異なる細菌に対しても細菌活性を示す成分が消化盲襄に局在し、リゾチームとの関係に興味がもたれた。リゾチーム活性は血球には認められていないが、食菌後の殺菌を担う次亜塩素酸合成を仲介するミエロペルオキシダーゼの存在が証明され、細胞性の殺菌機構の一端が明らかとなった。
著者
李 〓 森 勝義
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.115-119, 2006-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
17

中国沿岸では, およそ20種類のカキが生息し, 養殖対象としては主に近江ガキ (Crassostrea ariakensis) , 皺ガキ (C. plicatula) , マガキ (C. gigas) , 大連湾ガキ (C. talienwhanensis) と僧帽ガキ (Saccostrea cucullata) の5種類である。中国におけるカキ養殖は約2000年の歴史があるが, 1990年代以後, 人工種苗生産技術の発達とともに生産量と養殖面積は毎年上昇し続けた。2002年におけるカキ養殖の総生産量は殻付で362.55万tで, 貝類総生産量の37.6%を占め, 第1位である。しかし, ここ数年赤潮多発などの養殖海域の環境悪化, 大量斃死, 養殖ガキの質の低下などの問題が現れてきた。これらの問題点を克服し, 持続性のあるカキ養殖を行うためには, 合理的な養殖管理・漁場開発の実施, 病気予防対策の強化, 優良品種の開発などの対策が考えられる。