著者
室賀 清邦 高橋 計介
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.535-541, 2005 (Released:2005-08-24)
参考文献数
69
被引用文献数
3 3

カキの生食などによって起こるノロウイルス食中毒は重要な非細菌性急性胃腸炎の一つであり,これまでに医学や食品・環境衛生学分野で多くの研究がなされてきたが,水産学分野での研究は乏しい。しかし,衛生的なカキ養殖システムを構築するためには水産学領域における研究が必要である。本総説では,内外の研究論文に基づき,ノロウイルスおよびその感染症の概要,感染経路,カキにおけるノロウイルス汚染,および浄化処理法について紹介した。最後に,カキにおけるウイルス取り込み機構などの基礎的研究の必要性を論じた。
著者
森 勝義 高橋 計介 尾定 誠 松谷 武成
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

1.マガキ液性因子の同定マガキの生体防御機構に関わると推測される液性因子を生化学的に特定した。まず、血リンパから210kDaのサブユニットからなるホモ二量体の420kDaのフィブロネクチンの精製に成功した。また、血リンパに少なくとも3種類存在すると考えられたレクチンのうち、約630kDa(22kDaと23kDaのサブユニットからなるヘテロポリマー)のEレクチンと約660kDa(21.5kDaと22.5kDaのサブユニットからなるヘテロポリマー)のHレクチンを精製した。さらに、殺菌因子として消化盲襄から17kDaのリゾチーム分子を精製し、食細胞による食菌後の殺菌に強く関与するミエロペルオキシダーゼがマガキ血球で初めて同定された。2.各因子の特性と細胞性因子との関係マガキフィブロネクチンはヒト、ニジマスフィブロネクチンとは血清学的に交差性はなかったものの、共通の細胞認識領域を持つことから、創傷部への細胞の誘導接着への積極的関与が推察された。Eレクチン、Hレクチンを含むそれぞれの活性画分に細菌に対する強い凝集作用が認められると同時に、凝集活性の見られない他の多くの細菌への結合も確認され、レクチンの幅広い異物認識機能が明らかになった。しかし、細菌への結合とそれに続く食作用のこう亢進との関連で期待された、オプソニン効果は見られなかった。精製された消化盲襄由来のリゾチームは、その特性からこれまで報告してきたリゾチーム活性を示した分子であり、外套膜由来リゾチームも同一成分であると考えられた。一方、至適pHが異なり、従来のリゾチームが示したのとは異なる細菌に対しても細菌活性を示す成分が消化盲襄に局在し、リゾチームとの関係に興味がもたれた。リゾチーム活性は血球には認められていないが、食菌後の殺菌を担う次亜塩素酸合成を仲介するミエロペルオキシダーゼの存在が証明され、細胞性の殺菌機構の一端が明らかとなった。
著者
室賀 清邦 高橋 計介
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

17年度および18年度の2年間の研究成果は以下の通りである。1.マガキにおける粒子取り込み直径1μmの蛍光標識ビーズを用いてマガキにおける粒子取り込みについて実験を行ったところ、実験開始30分後には粒子は消化盲嚢細管に達し、消化細胞内にも取り込まれることが観察された。水温10℃の場合に比べ、20℃の場合はより効率よくビーズが取り込まれることが確かめられた。2.天然マガキおよびムラサキイガイにおけるノロウイルス汚染状況東北地方のある港において1年間にわたり、毎月1回天然のマガキおよびムラサキイガイを採取し、ノロウイルスの汚染状況を調べた。いずれの種類においても、汚染率は12月から3月の冬季に高く、夏季には低くかった。また、ノロウイルス汚染率は下水処理場に近い水域で採集された貝で高いことが分かり、汚染源は下水処理場であると推定された。3.養殖マガキにおけるノロウイルス汚染17年度は2箇所、18年度は5箇所の葉殖場において、マガキのノロウイルス汚染率を調べ、いずれにおいても冬季に最高50%程度の高い汚染率を示すことが確認された。また、それぞれの養殖場の夏季における大腸菌群数を指標とした海水の汚染の程度と、冬季のカキにおけるノロウイルス汚染率の間に、ある程度の相関性が認められた。4.養殖マガキの血リンパの酵素活性10ヶ月に亘り、2ヶ月間隔で6回サンプリングを実施し、養殖マガキの血リンパにおける酵素活性を測定したところ、血漿からは16種類の酵素が、血球からは17種類の酵素が検出された。これらの酵素は、年間を通じて常に高い活性を示す酵素群、常に低い活性を示す酵素群、および活性の季節変動を示す酵素群に分けられた。5.浄化処理方法の検討10℃で48時間流水浄化処理を行った場合は、浄化前後におけるノロウイルス汚染率に差はなかったが、25℃で48時間流水浄化処理を行ったマガキでは僅かではあるが汚染率の低下がみられた。