- 著者
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森 英子
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.56, pp.90, 2004
目的 標準経済理論によれば、収入は金額の多寡・時期・定期不定期などに拘らず無差別であるはずである。しかし、日常生活では違和感が大きい。標準経済理論では無名の抽象金額に過ぎず、限界消費性向したがって貯蓄率も唯一つ一定と仮定する。心理的にはそれぞれの収入の受けとめ方は独自のものであり限界消費性向・貯蓄にまわるものも様々である。換言すれば私達は複数の主観的収入支出口座(勘定)を設置している。 方法 標準経済理論の代表的モデルはフランコ・モジリアーニの「ライフサイクル理論」である。現在の収入・資産・将来の期待される収入を合わせ、その資金から一律平均年収入金額を算出し、その金額を消費する。(死後に残さない) 生涯のあらゆる時期の消費は等しい。しかし、実地に試すとまったく妥当せず、心理を加味した種々のモデルが作成されているが、実地試みの具体例をもって収入の限界消費性向の差異・そこから主観的勘定を推測する。 結果 (1)主観的勘定は経常所得勘定イー当座預金口座 資産勘定ロー長期金融資産 将来所得勘定ハ イの限界消費性向は限界消費性向1に近く、ハのそれは0に近く、ロはイとハの中間にある。即ち、イロハ間の代替可能性は低いのが現実である。(2)消費は生涯の年平均所得でなく、経常所得の変動と相関が深い。収入でも臨時収入か予期していた収入かで限界消費性向は異なる。(2)「ライフサイクル理論」では、人は不屈の意志で実行するが、人々は自己規制が利かないと自覚しているので、保険に加入し途中解約不可不利の金融商品を選び、手もと流動資金が不足しても借入を極力避ける。賢明鉄人の行動をモデルにしているか、愚鈍意志薄弱人の行動を描いているかである。