- 著者
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上地 玲子
玉井 浩
井手 友美
- 出版者
- 一般社団法人 日本小児神経学会
- 雑誌
- 脳と発達 (ISSN:00290831)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.2, pp.121-124, 2018 (Released:2018-03-28)
- 参考文献数
- 3
ダウン症児は, 身体的な疾病疾患や知的および身体的な発達・発育の遅れを有する. 我々は, ダウン症児の発達の遅れの一因に, 筋の低緊張が考えられることに着目した. 多くのダウン症児は通常でも開口状態が多く, また 「食事」 「会話」 「呼吸」 「睡眠」 に深く関係する口について不安を抱えることが多い. そこでダウン症児のQOLの向上を目的としたプログラム創出を目指した第一歩として, 簡単で安全, 口の機能向上が期待できる器具を使用した口輪筋トレーニング (1回3分1日4回目標) を実施し, その安全性および発達の変化についての有効性を評価した. 口輪筋トレーニングを10名 (4.0~6.9歳) のダウン症児に実施し, 試験参加者全員が安全に実施でき, トレーニングが各家庭で可能であることが確認できた. トレーニング非実施群 (通常療育群) 6名 (6.1~9.1歳) を対象として比較したところ, 握力が高くなり, 口唇閉鎖力も高い傾向が見られた. また実施群においては, 新版K式発達検査では, トレーニング回数が平均3回/日以上の児で発達の向上が認められ, みつば式言語発達検査では, トレーニングの回数と言語発達に有意な相関があった. さらに, トレーニング実施により, 発語がクリアになる, 食事や嚥下がスムーズになった, 指示がよく通るようになった, 歩行が安定した, 表情が豊かになった, 風邪をひきにくくなった, などの感想が得られ, QOLの向上に期待できるトレーニングであることが示唆された. 一方で, トレーニング回数の確保 (1日3回以上) が課題であることが明らかとなったことからも, 一定の回数以上のトレーニングに何らかの工夫が必要と考えられ, 継続性の担保が不可欠であることが明確となった.