- 著者
-
森内 健行
- 出版者
- 東京農工大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2008
本研究は環境にやさしい次世代モバイル用エネルギー源として,光合成バクテリアを利用し,光エネルギーのみで持続的発電が行える,長寿命,マイクロバイオ燃料電池の実用化へ向けたプロトタイプの開発とその性能評価を目的としている.本年度は特にマイクロバイオ燃料電池の出力向上および長寿命化に向け,以下の研究を実施した.(1)電池の高出力化に向け,C-MEMS(Carbon-Micro Electro Mechanical Systems)技術を用い多孔質カーボン電極を作成し,マイクロバイオ燃料電池に適用し性能評価を行った.多孔質カーボン電極を用いることで,2.14μW/cm^2と従来研究と比較して8倍の高出力化を行うことができた.(2)電気化学測定の一つである,サイクリックボルタンメトリー(CV)を用い,ポリアニリン電極の酸化還元電位,及び,ポリアニリンによる細菌からの電子抽出を評価した.ポリアニリン電極の酸化還元電位は標準水素電極(SHE)に対して,+0.3V付近を示した.実際にポリアニリン電極を細菌溶液(シアノバクテリア+リン酸緩衝液)中に入れ,CV測定を行ったところ,細菌を入れる前と後で,+0.45V付近における酸化電流が大幅に増加していることが確認できた.これより,ポリアニリンによる細菌からの電子抽出を実験的に検証することができた.(3)電池の長寿命化に向け,培地還流システムの試作,及び,その評価を行った.本研究では細菌から電子を抽出することで発電を行っており,発電に伴い細菌の活性が低下し,電池寿命が短くなるという問題があった.そこで,電池内の細菌を循環させることで,活性の高い細菌から持続的に発電を行える培地還流システムを提案し,電池に適用した.培地還流システムを用いることで,従来研究と比較して3倍以上の長寿命化を達成でき,本システムの有効性を示すことができた.