著者
小林 敬明 森口 聡子
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.42-57, 2018-12-20

本研究の目的は,ITプロジェクトマネジメントにおけるスケジューリング作業の効率向上によるプロジェクトマネージャの負荷軽減である.一般にプロジェクトの納期とコストはトレードオフの関係にあり,優先度はプロジェクトがおかれた環境や状況次第で変化する.そこで本研究では,(1)納期,(2)要員の重複タスク日数,(3)要員数の3式の目的関数を最小化するための多目的遺伝的アルゴリズムを用いた自動スケジュール生成ソフトウェアを提案する.メタヒューリスティクスを用いたプロジェクトスケジューリング手法に関する多くの先行研究があるが,本研究ではITプロジェクトスケジューリング特有の目的関数と制約条件に着目する.本研究のモデルでは,パレートフロントの一部を厳密解として少ない計算量で得ることができ,それらを初期集団に組み込むことで探索効率を向上できることを示す.プロジェクトマネージャは,提案するソフトウェアで生成された複数の準最適解のなかから,プロジェクトの状況にあったスケジュールを選択することができる.提案するソフトウェアは,一般的なPCを用いて現実的な時間内でスケジュールを生成する.数値実験およびインタビューにより,提案するソフトウェアがプロジェクトマネージャの負荷軽減に有効であることを示す.
著者
佐々木 大祐 関 二郎 宮前 陽一 黄 基旭 永沼 章 神吉 将之 西原 久美子 平本 昌志 由利 正利 梅野 仁美 森口 聡 見鳥 光 廣田 里香
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.39, pp.P-17, 2012

腎乳頭部壊死(RPN; Renal Papillary Necrosis)は糖尿病や,鎮痛剤・抗癌剤等の服用等によって生じる腎障害の一つであり,薬剤の開発や臨床的使用に支障を来すことがある。しかしこれまでヒトにおいてRPNの発生初期から鋭敏に変動するバイオマーカー(BM)は知られていない。そこで我々は,トキシコプロテオミクス(TPx)及びトキシコゲノミクス(TGx)の技術を利用してRPNを検出するための新規BMを探索した。<br> 2-bromoethylamine hydrobromideによるRPNモデルラットを作製し,その尿をTPx解析に,剖検後摘出した片腎の乳頭部をTGx解析に用いた。もう一方の片腎では病理組織学的検査を実施し,各BM候補と比較検証した。更に腎臓内障害特異性確認のため,puromycinやcisplatin等で糸球体或いは近位尿細管を障害させたモデルラットでの結果と比較した。<br> RPNモデルラットのTPx解析の結果,急性期炎症性蛋白質を複数含む計94種の蛋白BM候補が得られた。TGx解析の結果,アポトーシスシグナルやIL-1シグナルの活性化,酸化ストレスの亢進等をうかがわせる遺伝子群の変化が認められた。特にfibrinogenとC3はTPx解析及びTGx解析から共に検出されたため,これらはRPNと関連した着目すべきBMと考えられた。しかし障害部位特異性検討の結果,尿中のfibrinogenとC3は近位尿細管障害でも増加することが判明した。よって,fibrinogen及びC3はRPNを検出することは可能であるもののRPN特異的ではなく,近位尿細管の障害をも検出するBMであり,これら急性期炎症性蛋白質の増加は腎臓内障害部位における炎症関連シグナルの活性化に起因するものと考えられた。<br> 現在,RPNを特異的かつ鋭敏に検出するBMを残りの92候補から見出すべく,各候補に対する検討を実施中である。
著者
佐々木 大祐 宇波 明 関 二郎 宮前 陽一 黄 基旭 永沼 章 神吉 将之 西原 久美子 平本 昌志 由利 正利 梅野 仁美 森口 聡 見鳥 光 廣田 里香
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.40, 2013

腎乳頭部壊死(RPN; Renal Papillary Necrosis)は,糖尿病患者や鎮痛剤・抗がん剤等の服用等によって生じる腎障害の一つであるが,発症初期からヒトのRPNを鋭敏に検出するバイオマーカー(BM)の報告はなく,薬剤の開発や臨床的使用を困難にしている。そこで我々は,トキシコプロテオミクスの技術を利用してRPNを早期検出するための新規BMを探索した。<br>2-bromoethylamine hydrobromide(BEA)を雄ラット各5例に単回腹腔内投与(0,3,10,30,100mg/kg)し,投与直後から24時間蓄尿後剖検した。血液化学的検査及び腎臓の病理組織学的検査の結果,30mg/kg以上の投与群でBUNの増加やRPNが認められた。これらの結果を基に尿検体を4グループ(対照群,10mg/kg・RPNなし,30mg/kg・RPN有・BUN正常値,30mg/kg・RPN有・BUN増加)に分けプール尿を調製した。それらを脱塩濃縮後,トリプシン消化及びiTRAQラベル化し,2次元LC-MS/MSによるグループ間比較定量分析を実施した結果,RPNの認められた動物の尿中で増加していた94種の蛋白質BM候補を見出した。<br>次に,これらのBM候補のうち変動の程度が大きかった25候補について,まずは早期診断BMとしての可能性を検討した。BEAを雄ラット各8例(対照群は各6例)に単回腹腔内投与(0,30,100mg/kg)し,投与直後~6時間(0-6h)蓄尿後に剖検する群,0-6h及び投与後6時間~24時間(6-24h)蓄尿後に剖検する群をそれぞれ設けた。投与後6時間の剖検群ではRPNは認められなかったが,投与24時間ではいずれの投与群でもRPNが観察された。6-24h蓄尿について各BM候補をMultiple reaction monitoring法にて定量した結果,いずれのBM候補もRPNの認められた動物の尿中で増加していた。そのうちの4種のBM候補は,24時間後にRPNの認められた動物の0-6h蓄尿中でも増加傾向が見られたため,RPNが発症する前に変動するBM候補である可能性が考えられた。