- 著者
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橋本 勉
竹内 徳猪
- 出版者
- 日本草地学会
- 雑誌
- 日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, no.3, pp.182-187, 1968-10-20
積雪地帯においては,越冬作物を秋に刈取ると雪害を助長するので,イタリアンライグラスについて,秋の刈取り後の貯蔵養分の消長と雪害ならびに春の生育収量について試験を行なった。鳥取在来を9月2日に播種し,10月25日に全区刈取った。そして1区は根雪までそのままとし,II区は11月10日,III区は11月26日,IV区は12月10日に,それぞれ第2回刈取りを行ない,根雪始めまでの日数を変えるようにした。根雪日数は84日であった。結果の概要は次のとおりである。1.雪害程度は試験区間に明らかな差がみられ,I区は被害がほとんどなかったが,II,IV区は40〜60%,III区は最も甚しく80%以上であった。2.雪害程度がそのまま収量に現われ,生草,風乾収量ともI>II≒IV>III区の順であった。3.株(地際より3cm)におけるTACは刈取り後減少するが,I,II,III区とも5〜10日で最低に達し,以後増加に向かい,I,II区は2〜3週間で刈取り時と同程度まで回復した。しかし,気温が低くなってから刈取ったIII区は,刈取り後約1カ月を経てもTACの回復は十分でなかった。根雪直前における株のTACはI>IV>II>III区の順で,収量の順位と同じであった。4.全窒素は株より葉に多い。株における全窒素は刈取り後全般的に減少の傾向を示すが,根雪直前にはI<IV<II<IIIの順で,TACとは対称的であった。5. TACと全窒素との関係は,特に株において高い負の相関関係を示し,雪害が少ないI区ではTACが多くて全窒素が少なく,雪害の甚だしいIII区ではTACが少なくて全窒素が多かった。II,IV区はその中間であった。6.以上により秋の刈取りは,根雪始めより約1カ月半早く刈取るか,根雪直前に刈取るのがよいが,後者は危険を伴い易いので,実用には難点があろう。7.株においては,乾物率とTACが高い正の相関関係を示すので,耐雪性の指標とすることができると思われる。