著者
村岡 修 田邉 元三 森川 敏生 二宮 清文 松田 久司 吉川 雅之
出版者
天然有機化合物討論会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
no.51, pp.1-6, 2009-09-01

Salacinol and kotalanol are new class of potent glycosidase inhibitors, isolated by presenters from Ayruvedic traditional medicine Salacia reticulata, having the unique zwitter-ionic structure comprising of 1-deoxy-4-thio-D-arabinofranosyl cation and the sulfate anion in the alditol side chain. Elucidation of the stereostructure of kotalanol, which has long been unknown and very recently approved by Pinto and co-workers by the synthesis, by the independent manner involving the degradation of natural kotalanol is presented. In the detradation of 2, characteristic deprotective cyclization of heptitols to anhydroheptitols was found to occur to a large extent. Structural elucidation of salalprinol, one of the sulfonium analogs recently isolated from the same species, by the synthesis is also presented. Revisions of the structures of new constituents from Salacia species, neosalacinol and 13-membered cyclic sulfoxide, recently reported as constituents responsible for the α-glucosidase inhibitory activity by Minami and Osaki and co-workers, respectively, are presented. In relation to this study, synthetic route of de-O-sufonated salacinol, which was proved as potent as 1, has been developed. Finally, conditions for the quantitative analysis of 1, 2, and their de-O-sulfonates (3 and 4) by LC-MS for the qualitative evaluation of Salacia extracts is discussed.
著者
吉川 雅之 P0NGPIRIYADACHA Yutana 來住 明宣 蔭浦 禎士 王 涛 森川 敏生 松田 久司
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.123, no.10, pp.871-880, 2003-10-01
参考文献数
27
被引用文献数
15 63

デチンムル科(Hippocerateaceae)Salacia属植物は,インド,スリランカを始め,タイやインドネシアなどの東南アジア,ブラジルなどの熱帯地域に広く分布し,約120種が知られている.スリランカ,インド,タイなどに多く自生するSalacia(S.)reticulata,S.oblonga及びS.chinensis(syn.S.prinoides)は,つる性の多年性木本で,その根部や幹は,インドやスリランカの伝統医学であるアーユルヴェーダを始め,中国やタイの伝承医学などにおいて天然薬物として利用されてきた.スリランカでは,S.reticulataの根皮は,リウマチ,淋病及び皮膚病の治療に用いられるほか,特に糖尿病の初期の治療に有効であると伝承されている.インドでは,S.reticulataやS.oblongaの根部が,リウマチ,淋病,皮膚病及び糖尿病の治療に用いられている.S.chinensisは,S.prinoidesと同一植物であると言われており,インドや中国及びタイ,インドネシアなどの東南アジアに広く分布している.インドにおいては,S.prinoidesは糖尿病の治療のほかに,堕胎,通経,性病の治療に用いられている.一方,中国伝統医学では,S.prinoidesはサラツボクと称され,リウマチ性関節炎,腰筋の疲労,体力の虚脱や無力感の改善に用いられている.タイにおいてはS.chinensisの幹の煎じ液が緩下や筋肉痛の緩和によいとされているが,糖尿病や肥満の治療に用いられることはない.我々は,代表的な生活習慣病の1つで,現在日本人の約1割が発病又はその予備軍と言われている糖尿病あるいはその主たる因子の1つとされている肥満の予防に役立つ機能性素材を世界各地の薬用食物に求めて解明研究を進めている.その探索研究の一環として,スリランカ産S.reticulata及びインド産S.oblongaの幹及び根部エキスにショ糖負荷ラットにおける強い血糖値上昇抑制活性を見出し,その作用メカニズムが糖質加水分解酵素阻害作用であることを明らかにした.また,活性成分として,新奇なチオ糖スルホニウム硫酸分子内塩構造を有するsalacinol(1)及びkotalanol(2)を単離するとともに,1や2が,市販のα-glucosidase阻害薬と同等の強いα-glucosidase阻害や糖の吸収抑制作用を示すことを見出した.また,糖尿病性合併症である白内障や神経障害に関与するポリオール代謝系の律速酵素であるaldose還元酵素に対する阻害作用成分を探索したところ,Salacia属植物から活性成分としてmangiferin(3)及び数種のトリテルペン類を見出した.さらに,肥満及び肝障害など種々の生活習慣病に関連した活性評価を行い,3やポリフェノール成分などに活性を見出している.これまでに,タイ産S.chinensisの成分として,茎からdulcitol,proanhocyanidin及びleucopelargoninの2量体が単離され,葉からはproanthocyanidinが単離されている.また,インド産S.prinoidesから多数のトリテルペン成分が報告されている.最近,Salacia属植物の幹部や根部がダイエット素材としていわゆる健康食品に利用されるようになっている.しかし,これらのSalacia属植物は,現在のところいずれも栽培化に成功しておらず,もっぱら野生品が供給されているのが現状で,基源植物の同定を始め採取地や採取時期などが明確でないことも多い.また,抗糖尿病関連の活性が伝承されていないタイ産S.chinensisが,ダイエット素材として利用されている.今回,タイ産S.chinensisの80%含水メタノール抽出エキスについて,スリランカ産S.reticulataとインド産S.oblongaとの比較のもとに,抗糖尿病作用や炎症に関連した活性評価試験として,i)糖負荷ラットにおける血糖値上昇抑制作用(in vivo,ii)ラット小腸刷子縁膜由来及びパン酵母由来α-glucosidase阻害活性,iii)ラットレンズ由来aldose還元酵素阻害活性(in vivo),iv)アマドリ化合物及び終末糖化産物[advanced glycation end-products(AGEs)]生成抑制活性,v)DPPH及びO^-_2ラジカル消去活性,vi)マウス腹腔マクロファージからのリポ多糖(LPS)誘発一酸化窒素(NO)産生抑制活性について検討した.また,S.chinensisの80%含水メタノール抽出エキスからsalacinol(1)を単離,同定するとともに,タイ各地で入手したS.chinensisについてラット小腸由来α-glucosidase阻害活性を比較した結果について報告する.
著者
森川 敏生 松尾 一彦 八幡 郁子 二宮 清文 村岡 修 中山 隆志
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2014

<p>1.はじめに</p><p> ケモカインは,白血球やリンパ球などの免疫担当細胞の細胞遊走を誘導するサイトカインとして広く認識されており,現在までにヒトにおいては50種類近くのリガンドと18種類のシグナル伝達型受容体が知られ,さらに5種類のスカベンジャー/デコイ型受容体も存在する.ケモカインにはよく保存された4つのシステイン残基が存在し,そのうちのN端側の2つのシステイン残基が形成するモチーフにより,CXC,CC,CX3CおよびXCの4つのサブファミリーに分類される.これらのケモカインは免疫応答の制御にとどまらず,アレルギー疾患,自己免疫疾患,感染症やがんの病態発症においても重要な役割を果たしていることが明らかとなっている.近年,種々の疾患の発症や増悪などのキーファクターとなるケモカインおよびその受容体が解明されるにつれ,新たな創薬ターゲットとしてケモカイン受容体アンタゴニストの探索が精力的に展開されている.アレルギー疾患の発症や増悪に関与するケモカイン受容体として,CCR3,CCR4およびCCR8が挙げられる.これらのなかでCCR3は,好酸球の最も主要な遊走制御因子であり,好酸球,好塩基球およびTh2細胞の一部に選択的に発現する (Figure 1).<sup>1,2)</sup> </p><p> </p><p> </p><p> 我々はアレルギー疾患をはじめとした難治性炎症性疾患の新たな治療薬シーズの探索研究として,これまでにi.肥満細胞のモデル細胞であるラット好塩基球性白血病細胞(RBL-2H3) を用いた抗原刺激による脱顆粒抑制活性およびTNF-αおよびIL-4産生抑制活性,ii.マウス受身浮腫アナフィラキシー (PCA) に対する抑制作用 (in vivo),iii.マクロファージ様 RAW264.7 細胞を用いたリポ多糖 (LPS, lipopolysaccharide) 誘発一酸化窒素 (NO) あるいはiNOS 発現抑制活性,およびiv. HL-60 細胞由来好中球様細胞からの fMLP (N-formylmethionyl-leucyl-phenylalanine) 刺激による脱顆粒抑制活性,などを指標として検討してきた.<sup>3)</sup>これらの生物活性評価試験において見いだされた天然資源について,単一のケモカイン受容体のみを遺伝子工学的に過剰発現し樹立したケモカイン受容体安定発現細胞株を用い,細胞遊走阻害活性を指標として種々のケモカイン受容体に対するアンタゴニストの探索を行った.その結果,薬用のみならず香辛料として食用にも用いられるメース[ニクズク科(Myristicaceae) 植物Myristica fragrans Houtt. 仮種皮]のメタノール抽出エキスに,CCR3選択的なアンタゴニスト活性を見いだしたことから,その活性寄与成分の探索に着手した.</p><p>2.メタノール抽出エキスのケモカイン受容体アンタゴニスト作用試験</p><p> マウスB細胞株L1.2 細胞を用い各種ケモカイン受容体を過剰発現させた細胞株を樹立し,ケモタキシスチャンバーを用いた細胞遊走抑制作用を指標にアンタゴニスト作用を評価した.すなわち,各発現細胞を細胞遊走バッファー (0.5% BSA,20 mM HEPES pH7.4,RPMI-1640 without phenol red) で洗浄を 2 回行った後,8 × 10<sup>6</sup> cells/mL となるように懸濁した.リガンドとなるケモカインを細胞遊走バッファーで希釈して下部ウェル</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
中村 誠宏 森川 敏生 加藤 泰世 李 寧 長友 暁史 池 桂花 大串 輝樹 浅尾 恭伸 松田 久司 吉川 雅之
出版者
天然有機化合物討論会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
no.48, pp.535-540, 2006-09-15

During the course of our characterization studies on bioactive saponins, the saponin fraction from the flowers, seeds of Camellia sinensis and C. japonica were found to show biological activities (gastroprotective, inhibitory effect on serum triglyceride (TG) elevation, and platelet aggregating effects, and so on). Therefore, we tried to isolate various bioactive saponin constituents from Camellia sinensis and C. japonica. 1. Camellia sinensis We have isolated nine new compounds [floratheasaponins A-I] from the flowers, twenty-three new compounds [theasaponins A_1-A_5, C_1, E_3-E_<13>, F_1-F_3, G_1, G_2 and H_1] from the seeds, and six new compounds [foliatheasaponins I-VI] from the leaves of C. sinensis. Floratheasaponins from the flowers were found to inhibit serum TG elevation in olive oilloaded mice. Theasaponins A_2 and E_2 showed inhibitory effects on ethanol-induced gastric mucosal lesions in rat, and their effects were stronger than that of reference compound, cetraxate hydrocholoride. 2. Camellia. Japonica We have isolated nine new compounds [camelliosides A-D, sanchasaponins A-D] from the flowers and six new compounds [camelliasaponins A_1, A_2, B_1, B_2, C_1, and C_2,] of C. japonica. Camelliosides, A and B showed gastroprotective and platelet aggregating effects. In addition, camelliasaponins B_1, B_2, C_1, and C_2 were found to exhibit inhibitory activity on ethanol absorption.