著者
服部 憲幸 森田 泰正 加藤 真優 志鎌 伸昭 石尾 直樹 久保田 暁彦
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.804-810, 2010-09-15 (Released:2010-11-09)
参考文献数
11

2009年に世界規模で流行した新型インフルエンザA/H1N1に劇症型心筋炎を合併した症例を,経皮的心肺補助装置(PCPS: percutaneous cardiopulmonary support)による循環補助を含む集中治療にて救命した。症例は24歳,女性。2009年11月,近医でインフルエンザA型と診断され,オセルタミビルの投与を受けた。2日後には解熱したが発症5日目に頻回の嘔吐と下痢が出現,翌日当院へ救急搬送された。心電図上II,III,aVF,V3-6の各誘導でST上昇を認め,クレアチンキナーゼ,トロポニンTも上昇していた。心臓超音波検査でも壁運動が全体的に著しく低下しており,心筋炎と診断した。当院受診時にはインフルエンザA型,B型ともに陰性であった。ICUにて大動脈内バルーンパンピング(IABP: intra-aortic balloon pumping),カテコラミンによるサポート下に全身管理を行い,合併した急性腎不全に対しては持続的血液濾過透析(CHDF: continuous hemodiafiltration)を行った。来院時にはインフルエンザ抗原が陰性であったことからオセルタミビルの追加投与は行わなかった。一般的なウイルス感染も想定して通常量のγグロブリン(5g/day×3日間)を投与した。しかし翌朝心肺停止となりPCPSを導入した。PCPS導入直後の左室駆出率は11.0%であった。第4病日にPCPSの回路交換を要したが,心機能は次第に回復し,第7病日にPCPSおよびIABPを離脱した。第8病日にはCHDFからも離脱した。気道出血および左無気肺のため長期の人工呼吸管理を要したが,第15病日に抜管,第17病日にICUを退室し,第33病日に神経学的後遺症なく独歩退院した。インフルエンザ心筋炎は決して稀な病態ではなく,新型インフルエンザにおいても本邦死亡例の1割前後は心筋炎が関与していると思われる。本症例も院内で心肺停止に至ったが,迅速にPCPSを導入し救命できた。支持療法の他は特殊な治療は必要とせず,時期を逸さずに強力な循環補助であるPCPSを導入できたことが救命につながったと考えられた。
著者
服部 憲幸 森田 泰正 加藤 真優 志鎌 伸昭 石尾 直樹 久保田 暁彦
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.804-810, 2010-09-15
参考文献数
11

2009年に世界規模で流行した新型インフルエンザA/H1N1に劇症型心筋炎を合併した症例を,経皮的心肺補助装置(PCPS: percutaneous cardiopulmonary support)による循環補助を含む集中治療にて救命した。症例は24歳,女性。2009年11月,近医でインフルエンザA型と診断され,オセルタミビルの投与を受けた。2日後には解熱したが発症5日目に頻回の嘔吐と下痢が出現,翌日当院へ救急搬送された。心電図上II,III,aV<SUB>F</SUB>,V<SUB>3-6</SUB>の各誘導でST上昇を認め,クレアチンキナーゼ,トロポニンTも上昇していた。心臓超音波検査でも壁運動が全体的に著しく低下しており,心筋炎と診断した。当院受診時にはインフルエンザA型,B型ともに陰性であった。ICUにて大動脈内バルーンパンピング(IABP: intra-aortic balloon pumping),カテコラミンによるサポート下に全身管理を行い,合併した急性腎不全に対しては持続的血液濾過透析(CHDF: continuous hemodiafiltration)を行った。来院時にはインフルエンザ抗原が陰性であったことからオセルタミビルの追加投与は行わなかった。一般的なウイルス感染も想定して通常量のγグロブリン(5g/day×3日間)を投与した。しかし翌朝心肺停止となりPCPSを導入した。PCPS導入直後の左室駆出率は11.0%であった。第4病日にPCPSの回路交換を要したが,心機能は次第に回復し,第7病日にPCPSおよびIABPを離脱した。第8病日にはCHDFからも離脱した。気道出血および左無気肺のため長期の人工呼吸管理を要したが,第15病日に抜管,第17病日にICUを退室し,第33病日に神経学的後遺症なく独歩退院した。インフルエンザ心筋炎は決して稀な病態ではなく,新型インフルエンザにおいても本邦死亡例の1割前後は心筋炎が関与していると思われる。本症例も院内で心肺停止に至ったが,迅速にPCPSを導入し救命できた。支持療法の他は特殊な治療は必要とせず,時期を逸さずに強力な循環補助であるPCPSを導入できたことが救命につながったと考えられた。
著者
Hoshino Masami Haraguchi Yoshikura Hirasawa Hiroyuki Mizushima Iwanori Tanaka Chie Morita Yasumasa Yokoi Takehito Sakai Motohiro 星野 正己 ホシノ マサミ 水島 岩徳 ミズシマ イワノリ 田中 千絵 タナカ チエ 森田 泰正 モリタ ヤスマサ 横井 健人 ヨコイ タケヒト 酒井 基広 サカイ モトヒロ 原口 義座 ハラグチ ヨシクラ 平澤 博之 ヒラサワ ヒロユキ
出版者
千葉医学会
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.149-161, 2006-06-01
被引用文献数
1 3

Seven non-septic and twenty-two septic ICU patients with glucose intolerance were investigated by using bedside-type artificial pancreas (AP). IC was measured by the glucose clamp method (GC) in which BG level was clamped at 80mg/dL with two step insulin infusion rate (IIR) of 1.12 and 3.36mU/kg/min. Results: 1) IC could be estimated by the following formula: IC (mL/kg/min) =⊿IIR/⊿I≒2240/(I3-I1), (⊿IIR (mU/kg/min): difference of the amount of exogenous insulin infusion, ⊿I (mU/L): difference of the blood concentration of exogenous insulin, I1 (I3): blood concentration of insulin when IIR is 1.12 (3.36) mU/kg/min), because the difference between blood concentration of endogenous insulin when IIR was 1.12 mU/kg/min and that when IIR was 3.36mU/kg/min was small enough to be neglected. 2) IC was increased in 11 septic patients (50%) and was within normal limits in 8 septic patients (36%). 3) Among the factors which have been reported to influence IC in chronic diseases (age, body mass index, hyperlipidemia, blood lactate level, thyroid hormone, growth hormone, cortisol, organ dysfunction and its related parameters, etc.), only cardiac index was positively correlated with IC (y=3.3x+4.0, n=22, r=0.63, P<0.002).Conclusions: Measurement of IC on critical patients was established with our modified GC with two step insulin infusion. Hyperdynamic state was considered to be closely related to the increased IC.