著者
森脇 優司
出版者
一般社団法人 日本痛風・尿酸核酸学会
雑誌
痛風と尿酸・核酸 (ISSN:24350095)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.129-134, 2019-12-20 (Released:2019-12-20)

アルコールはアセトアルデヒドを経て,酢酸からアセチルCoAへと代謝されるが,その際ATP の過剰消費が起こり,アデニンヌクレオチドの分解が亢進して,尿酸が上昇すると考えられている.またNADの消費によって解糖系が抑制される結果,ATP の産生障害が起こることもその一因となることが示唆されている.一方,アルコールの消費によってNADH が産生され,乳酸からピルビン酸への酸化が抑制される結果,蓄積した乳酸が,近位尿細管管腔側に発現している尿酸トランスポーター(URAT1)を介して排泄される際に,尿酸の吸収が起こり,尿酸値は上昇する.さらにビールに多く含まれるプリン体も尿酸上昇の一因となる.アルコール摂取量の増加に伴って高尿酸血症の頻度は増加する.20歳以上の男女1万5000人を対象とした米国国民健康栄養調査研究や,本邦での6年間の前向き研究によると,アルコールの消費量と血清尿酸値との間には相関が認められる.また同じアルコール量ではビールの摂取が尿酸値に対する影響が最も強いことが明らかにされているが,ワインはビールや蒸留酒と比べて血清尿酸値への関与は低いようである.この原因としてワインに多く含まれるポリフェノールによるキサンチンオキシダーゼの抑制作用,尿酸排泄促進作用などが推定される.しかしアルコール飲料はプリン体の有無にかかわらず,それ自体の代謝に関連して血清尿酸値を上昇させる.
著者
前防 昭男 松森 正温 森脇 優司 中野 孝司 山出 渉 安室 芳樹 鍋島 健治 波田 寿一 東野 一彌
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.457-461, 1985

ビルハルツ住血吸虫症は,血尿を主訴とする寄生虫疾患で,アフリカや中近東などの熱帯地方がその流行地である.今回,我々は,世界旅行中,熱帯地方滞在の際に感染したと考えられるビルハルツ住血吸虫症を経験したので報告する.患者は33才の日本人男性. 1976年より世界旅行に出発,アフリカ,東南アジア,アメリカ大陸などを旅行していた. 1983年1月,メキシコ滞在中に血尿に気づくも放置していた.同年5月,日本へ帰国後も血尿持続し,精査のため入院.尿沈渣にて多数の赤血球および寄生虫卵を認め,その虫卵よりビルハルツ住血吸虫症と診断した.血液学的には好酸球増加および血清IgEの高値を認めた.また,膀胱粘膜の生検にて粘膜内にも虫卵を認めた.治療として酒石酸アンチモン剤を投与し尿中の虫卵が陰性化し退院した.本症は,流行地では2000万~3000万人もの患者が存在してるにもかかわらず,本邦ではほとんど認めることのできないまれな輸入寄生虫疾患であるが,海外渡航が頻繁に行なわれるようになつた現在,特に本疾患流行地に滞在していた場合には,血尿を認めた時には鑑別すべき疾患の一つになりえる.
著者
高橋 澄夫 井野口 卓 華 常祥 堤 善多 森脇 優司 山本 徹也
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.211-215, 2006 (Released:2012-11-27)
参考文献数
15

It is well known that patients with gout frequently have acidic urine, a major risk factor for urolithiasis. However, the underlying mechanism of acidic urine in patients with gout remains unclear. Recently, uric acid nephrolithiasis has been reported to be a factor contributing to of renal manifestation of metabolic syndrome. Therefore, to clarify the mechanism of acidic urine in patients with gout, we investigated the relationships between urinary pH and other components of metabolic syndrome. Patients with a 24-hour urinary pH below 5.5 showed higher or greater levels of blood pressure, serum triglyceride, blood sugar, plasma insulin, and visceral fat area, compared with those with a 24-hour urinary pH above 5.5. In addition, there were negative relationships between 24-hour urinary pH and serum triglyceride, visceral fat area, and HOMA index. PPAR a agonist, bezafibrate, significantly raised the 24-hour urinary pH in gout patients in accordance with a reduction in serum triglyceride concentration and HOMA-R, probably through improvement of insulin resistance. These findings suggest that insulin resistance plays at least a partial role in the development of acidic urine in patients with gout.