著者
井口 壽乃 森脇 裕之
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.3_81-3_88, 2022-01-31 (Released:2022-02-05)
参考文献数
28

本研究の目的は,名古屋市で 1989 年から 1997 年に全5回開催された国際ビエンナーレ「アーテック」(ARTEC)の歴史的意義を明らかにすることにある。アーテックが開催されたおよそ 10 年間は、インターネット社会の到来以前の高度情報社会を背景としたアートとデザインの転換期にあたる。この展覧会の意義は,いわゆる現代芸術の一つのジャンルとしての「メディアアート」の形成にとどまらず,1980 年代から国が主導する地域産業の高度化に寄与する特定事業構想に基づいて名古屋市が推進する「デザイン都市名古屋」の文化政策に貢献したことが指摘できる。 本稿では,第1にアーテックと同時に開催された世界デザイン博覧会および世界デザイン会議 ICSID と名古屋市の地域的課題の関連を考察する。第2に,アーテック企画者の森茂樹と山口勝弘に注目し,ハイテクノロジー・アート国際展からアーテック開催までの過程における彼らの役割を明らかにする。第3に,名古屋市の都市政策,および通産省の政策とハイテクノロジー・アートの関係を考察する。最後に,アーテックは国と地域経済,都市のイメージづくりと文化創造,そして芸術の国際化が複雑に関連した文化事業であったと結論づけた。
著者
秋田 純一 森脇 裕之
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.74-80, 2009 (Released:2009-08-12)
参考文献数
6

近年,その豊かな表現力や高い演出効果から,広報告知や広告媒体として大型のディスプレイを見かける機会が多くなった.しかし,建築物に取り付けるタイプの大型ディスプレイの場合は予算的・作業工程面の制約が多く,従来では,単発的なイベントや,変則的な形状では採用を見送られるケースも多く見受けられる.また,クリスマス時期のイルミネーションに用いられるライン状に並んだ光源の点滅制御では,限定的な点滅パターンを上回るような表現効果を得ることが難しい.本稿では,このようなニーズをふまえ,簡単な構成で自由に画素を配置し,規模の大きい画面を構築できる汎用性の高いディスプレイシステムGuerrila Displayの設計について述べる.このような自由度の高いシステムにより,大型映像によるダイナミックな空間演出がより身近なものになるばかりでなく,従来は実現が困難であった曲面や不定形な形状物への設置なども容易になり,飛躍的に演出表現の幅が拡がることが期待できる.