著者
侘美 靖 森谷 きよし
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.145-157, 2005 (Released:2006-02-18)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本研究は,中高年者が多数参加し,2月から約4ヶ月間にわたって週2回の踊り練習を継続する北海道のYOSAKOIソーランチームを対象に,踊りの運動強度としての心拍数(HR)と腰部位の合成加速度,また踊り練習への参加による運動量や体力向上を検討した.中年踊り子の演舞時HR最高値が180拍/分を超えるほど踊りの運動強度は高く,HRと腰部位加速度値は正相関していた.また,演舞中HR最高値は,練習時に比べ祭り時は20拍/分ほど高くなる場合もあり,緊張感と気象条件の影響が推察された.被験者NR(50歳女性)の練習日の1日当たりの歩数と運動によるエネルギー消費量は,非練習日に比べ有意に増加した.YOSAKOIソーラン祭り参加者の体力レベルは,約4ヶ月の間に改善していた.YOSAKOIソーラン踊り練習と祭りへの参加により,冬期に運動不足になりがちな寒冷地域に住む人々の健康増進に効果のあることが示唆された.
著者
侘美 靖 森谷 きよし
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.117-129, 2006 (Released:2007-03-13)
参考文献数
33
被引用文献数
1

本研究は,北海道の YOSAKOI ソーラン祭り参加者を対象に,練習及び祭りへの参加による感情及びメンタルヘルスの向上について調査することを目的とした.POMS テストの結果,約 4ヶ月の練習期間中にオーバートレーニングの様子は認められなかった.踊り練習前後の感情変化を Mood Check List-Short Form 1 により測定した結果,5, 15, 25回目練習日のいずれの時期においても快感情得点は練習後に有意に向上した.練習前に比べ練習後にリラックス感得点が有意に向上したのは15回目練習日以降であったが,対照群より低いレベルの変化であった.不安感得点に有意な変化は認められなかった.精神的健康パターン診断検査の結果,練習開始期に比べ,祭り後の心理的・社会的ストレス度は改善していた.YOSAKOI ソーラン祭りと練習への参加は,北国住民の感情及びメンタルヘルス改善に対する効果が期待される.
著者
橋本 好弘 森谷 きよし 大塚 吉則
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.109-119, 2008

消防活動は重装備の激しい活動であり,過労・ストレスによる隊員の死傷者が多い.本研究では,寒冷環境下における消防活動が隊員に及ぼす身体負担を経時的に分析し,休憩の必要性を検討した.北海道 S 市の消防隊員 71 名に対して 24 時間の拘束勤務中にホルター心電計を装着させ,消防活動中の心拍数変化を測定し,Wu <i>et al.</i>(2001)の maximum acceptable work duration(MAWD)でその負担を評価した.出動途上の平均最高心拍数は 145.5 拍/分であり,急激に心拍数が上昇していた.現場活動中の最大心拍数と活動時間には正の有意な(P<0.01)相関が認められた.小規模火災 2 件で MAWD を大きく超え,活動開始 5 分間の負担は平均で 92.6 並びに 93.6% heart rate reserve (HRR),活動全体の平均でも 72.3 と 70.2% HRR であった.災害現場での消防隊員の死傷事故減少には,寒冷環境下の小規模火災でも,火勢制圧後,隊員に休憩・交替を与え,過労・ストレスを軽減させる必要がある.<br>