著者
植田 知子 Tomoko Ueda
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-16, 2013-05-31

杉浦家は寛文3年(1663)創業の、呉服太物小間物類を取扱った京都の商家(屋号、大黒屋)である。同家には江戸期に作成された2種類の家法がある。1つは3代杉浦三郎兵衛利軌(法名、宗夕。1702~44)が記した「定目」で、もう1つは4代杉浦三郎兵衛利喬(法名、宗仲。1733~1809)が記した「家内之定」「家業之定」である。これらはこれまでに、岡光夫・宮本又次・藤田彰典氏らが商家の家訓として紹介しているが、三氏の紹介した家法にはその条目数や内容に違いが認められる。本稿はその理由について検討したものである。
著者
植田 知子
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.1-20, 2008-11

大黒屋又兵衛は、江戸後期から明治初期にかけて主に古手・呉服問屋として江戸で活躍した商人である。店舗は江戸富沢町に設けていたが、住居は一貫して江州高島郡霜降村に定め、当時の商人番付にも名を連ねた富商の一人である。しかし、その活躍に比べて商人としては未詳の部分が多く、又兵衛の出自や商人となった経路等についての解明はほとんど進んでいない。本稿は、杉浦大黒屋関連諸史料の検討と、大黒屋又兵衛の菩提寺における聞き取り調査から、大黒屋又兵衛が京都商人杉浦大黒屋の別家の一人であることを明らかにしたものである。
著者
植田 知子
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.1-20, 2011-05

京都の呉服商杉浦三郎兵衛家(屋号、大黒屋。創業寛文三年(一六六三))では、初代の頃から別家制度が採られたと見られるが、それは明治期にも維持され続けた。小稿は、明治期に別家制度を廃止した商家があるなかで大黒屋がどのように別家制度を維持し、また、別家制度の中身がどのように変化したのかを考察したものである。今回検討した結果からは、学校教育の普及や徴兵制による影響が大黒屋の雇用や昇進面に及んだことがうかがえ、それらが「登り」の制度の形骸化と、別家の若年化をもたらした一因であることが見えてきた。