著者
楊 寧 須長 正治 藤 紀里子 伊原 久裕
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.2_19-2_28, 2019-09-30 (Released:2019-12-25)
参考文献数
9

本研究では,小画面ディスプレイ,特にApple Watchを想定し,その画面表示環境下にて,日本語フォントの可読性と判別性を測定した。さらに,フォントの形態属性および差分についても調査を行い,小画面表示に適した読みやすく見やすいフォントの属性を探った。可読性に関しては,短文,連続文(大),連続文(小)の3つの提示条件ともに,濃度と字面面積の大きさから影響を受けていることがわかった。ただし,白背景か黒背景かによって,字面面積と濃度の直接影響の有無はまちまちであった。判別性に関しては,混同しやすい文字対を選定し,文字対を特定できる実験方法を用いて実験を行った。その結果,各フォントの特定の文字対の判別性を確認できた。また,差分分析を行った結果,ひらがなより,カタカナや英数字のような単純な文字対については,差分からの影響が明確であり,特定の文字対の字形の特徴も確認できた。
著者
楊 寧 伊原 久裕
出版者
一般社団法人 芸術工学会
雑誌
芸術工学会誌 (ISSN:13423061)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.106-113, 2015 (Released:2018-12-19)

本研究は、日本語と中国語を併記した印刷物において、調和ある組版を実現するために必要な条件として、本文の読みやすさに着目し、両言語にとってそれぞれ読みやすい字間と行間の範囲を探り、その比較を行うことを目的とする。 まず、両言語の組版規則書それぞれ15冊を取り上げ、読みやすいとされる字間、行間の関係について整理した。その結果、中国語と日本語とでは、特に字間の設定に違いがあることがわかった。字間については、日本語ではほとんどがベタ組みを基本としているのに対し、中国語ではベタ組みの組み方以外に字間を若干開けるという考え方も見られた。行間については、半角アキから全角アキまでの範囲でほぼ一致していた。 次に、中国人と日本人それぞれを対象とした中国語と日本語の文字組で、字間と行間をインタラクティブに動かせる統一フォームをウェブ上で作成し、調査を行った。この比較調査から、両言語の読みやすい行間の設定範囲については、3/4アキから全角アキまでの範囲で一致しており、またこの範囲に対してより適していると想定される字間はベタ組みであった。日本語については予想される結果であったが、中国語については、字間を空けるほうが読みやすいとする経験則が必ずしも事実ではないことがあきらかとなった。 以上から、調和のある中国語と日本語を併記するうえで必要な条件としては、組版の読みやすさについては字間をベタ組み、行間を3/4アキから全角アキまでの範囲で適宜調整することで対応可能であることがわかった。また、この結果に基づいて、最後に両国語を併記したレイアウトサンプルを提示した。
著者
楊 寧 須長 正治 藤 紀里子 伊原 久裕
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1_51-1_60, 2018

<p> 本研究は,「ユニバーサルデザインフォント(以下「UD フォント」と表記)」として開発されたフォントの評価を中心に総合的に検証し,合わせてフォントの形態的属性についても調査を行い,これらの相関性を分析考察することで,望ましいUDフォントのデザインに関する指針を得ることを目的とした。<br> UDフォントの評価は,従来の視認性,判別性,可読性の3つの評価項目に、積極的な評価項目とされていなかった美感性を加え、計4つの項目で行った。若年者,デザイン関連業務経験者,高齢者の合計90名を被験者とした。また,角ゴシック体,丸ゴシック体,明朝体から,合計60フォントを実験用フォントとして選定した。<br> 本稿では,実験のうち,美感性を取り上げて分析を行い,合わせて計測したフォントの形態属性との間の相関性を探った。その結果,濃度,字面面積,英数字の形態が,いずれのカテゴリーにおいても,見出しと本文フォントともに,美感性評価に強く影響していることがわかった。</p>
著者
楊 寧 伊原 久裕
出版者
一般社団法人 芸術工学会
雑誌
芸術工学会誌 (ISSN:13423061)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.76-83, 2014 (Released:2018-12-04)

国際交流の盛んな現代において、多言語タイポグラフィの必要性が増しているが、複数の言語が併存する印刷紙面では、それぞれの言語の特性を理解しつつ調和を図ることが重要なデザイン課題となる。本研究では特に中国語と日本語の調和のとれたタイポグラフィのあり方を探る。日本語と中国語は、漢字という共通した文字言語を持っていることから、その組み合わせは容易なようだが、実際にはそれぞれ独自の組版ルールを有し、書体デザインも同じものはほとんどない。したがって、両国語の文字の組版ルールの比較検討によって共通化できる組版の範囲をあきらかにし、書体についても調和すると判断可能な書体の対照関係を求め、その根拠を示す必要がある。本研究では、このうち書体―本文用の標準的な書体―に着目し、中国語と日本語フォントの調和のとれた対照関係を探るために、共通文字種の漢字のみに着目し、日本語、中国語それぞれの書体デザインを同一基準で評価する方法を探った。終端処理など中国語と日本語の漢字には、細部の処理に違いがあるが、本研究では、予備調査での観察結果に基づいて、計量可能な属性である字幅と字高、字面率、フトコロ率を取り上げ、計測を行うことで、類似性を評価することにした。 書体は、中国語では宋体と方黒体、日本語ではそれに対応する明朝体と角ゴシック体から選び、計測結果をクラスター分析したところ、宋体と明朝体、方黒体と角ゴシック体それぞれを大きく3つのグループに分類でき、それぞれ字幅と字面率の数値が小さい特徴のグループ(A)、字幅と字面率の数値が中間的なグループ(B)、字幅と字高、字面率の数値が大きなグループ(C)の3つとなった。同じグループの書体では属性データが近似しており、類似性の高い書体デザインと判断できることから、これらの組み合わせが調和ある混植の条件となると仮定できた。実施した検証実験においてもグループ同士の照応性は比較的高かった。 以上から、本研究で提案する書体の類似性評価は中国語と日本語の調和ある混植を容易に実現する方法として有効であることがわかった。
著者
楊 寧 須長 正治 藤 紀里子 伊原 久裕
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1_51-1_60, 2018-07-31 (Released:2018-08-30)
参考文献数
13

本研究は,「ユニバーサルデザインフォント(以下「UD フォント」と表記)」として開発されたフォントの評価を中心に総合的に検証し,合わせてフォントの形態的属性についても調査を行い,これらの相関性を分析考察することで,望ましいUDフォントのデザインに関する指針を得ることを目的とした。 UDフォントの評価は,従来の視認性,判別性,可読性の3つの評価項目に、積極的な評価項目とされていなかった美感性を加え、計4つの項目で行った。若年者,デザイン関連業務経験者,高齢者の合計90名を被験者とした。また,角ゴシック体,丸ゴシック体,明朝体から,合計60フォントを実験用フォントとして選定した。 本稿では,実験のうち,美感性を取り上げて分析を行い,合わせて計測したフォントの形態属性との間の相関性を探った。その結果,濃度,字面面積,英数字の形態が,いずれのカテゴリーにおいても,見出しと本文フォントともに,美感性評価に強く影響していることがわかった。
著者
楊 寧 伊原 久裕
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.73, 2014 (Released:2014-07-04)

近年、日本語と中国語を併用した外国人向けのパンフレットや、説明書、対訳本などの印刷物が目につくようになった。このような多言語併記のためのタイポグラフィでは、いかに版面の「調和」をとるのかが重要な課題となっている。「調和」のとれた組版を実現するため、各言語の読みやすさを確保しつつ、それぞれの組み方の調整を図る必要がある。本稿では、字間と行間の関係に着目し、中国語の本文組みにおける読みやすい組み方について考察することとした。結果は以下のとおりである。本文組に対して、ベタ組から8分のアキまでの字間、4分の3のアキから全角までの行間の組み合わせがより読みやすいという結果が得られた。まだ、字間を少々広げることが好ましいと見なされている傾向が明らかとなった。