著者
菱川 優介 桂 重仁 須長 正治
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3+, pp.141-144, 2017-05-01 (Released:2017-10-07)

色覚異常を持つ人の日常生活におけるトラブルとして,焼肉の焼け具合がわからないという報告がされている.このことから,色覚異常を持つ人は,一人で焼肉を行うことが難しいと言える.本研究では,2色覚の一人焼肉を補助すべく,焼肉が焼けたかどうかを知らせるアプリを作成した.実験では,肉の表面を測色すると同時に,3色覚と2色覚に焼肉の見た目の焼け具合を評価してもらった.焼肉の色変化の過程は,錐体刺激値LM平面にて特徴が現れていた.この変化過程は,2色覚に対してL軸またはM軸への射影となる.その結果,生肉の色が,肉が焼けていく過程の色変化のなかに埋もれてしまい,2色覚は色変化からでは焼け具合がわかりにくいことが示された.また評価結果をもとに,LM平面上にアプリによる焼け具合判断の閾値を設定した.作成したアプリと3色覚の判断がどれくらい一致するかを調べた.焼けた肉と焼けていない肉を,アプリが正しく判断する確率はそれぞれ63%と94%であった.また,焼けた肉,焼けていない肉に対して誤った判断をする確率はそれぞれ37%,6%であった.以上のことから,おおよそ正しく肉の焼け具合を判断するアプリを作成した.
著者
東 知宏 伊藤 裕之 須長 正治 妹尾 武治
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.521-524, 2016 (Released:2016-10-31)
参考文献数
7

Motion lines have been studied as expression of motion in static images. We investigated an effect of motion lines in apparent-motion displays. The smoothness of two-frame apparent motion was enhanced by presentation of a motion line between the frames, and even by simultaneous presentation of a motion line attached to an object in the first or the last frame. We additionally proved that the effect of motion lines becomes highlighted with an extended distance between apparent-motion components. The use of motion lines may contribute to production of various types of movies from the point of smoother motion impression with reduced computational load.
著者
京極 吾一 伊藤 裕之 須長 正治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.279, pp.11-13, 2010-11-06

描いた絵を裏返して見ると、そのまま表から見たときに比べて、明らかに歪んで見えることがある。これは絵を描く人々がしばしば直面する問題と考えられており、絵を描く機会のある学生に実際にアンケートをとったところ、ほぼ全員が「裏返して見ると歪んでいると感じることがある」と答えた。しかし、絵を描いた本人以外が見ても同様のことが起こるのか、必ず裏返しの絵の方が歪んで見えるのかなど、詳しいことは分かっていない。本研究では、身近な対象である「人の顔」の絵を用い、絵の反転と知覚される歪みの大きさとの関係を、他の要因も交えながら調べた。
著者
須長 正治 城戸 今日子 桂 重仁
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.209, 2018-09-01 (Released:2018-09-24)
参考文献数
16
被引用文献数
3

色覚異常の混同色でない色で配色し,その後,色覚異常が混同する色の間で色を変更するというカラーユニバーサルデザインとなる新しい配色手法が提案されている.しかし,この方法には,いくつかの問題点があるため,実用化されるまでには至っていない.そこで,本研究では,このカラーユニバーサルデザイン配色手法における問題点を明確し,その解決方法を提案した.さらに,市販の配色カードを用い,色見本セットを試作し,実用化に至るひとつの道筋を示した.
著者
須長 正治
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

3色覚が色覚正常と言われるのに対し,見分けられない色を持つ2色覚は色覚異常と言われ,3色覚よりも劣った色覚であるとみなされている.しかし,色覚特性の全ての面で,劣っているかどうかはわからない.そこで,本研究では,視覚探索課題を用い,S錐体刺激値差を手掛かりとした色探索に必要な時間を3色覚と2色覚で比較検討した.この際,目標刺激は妨害刺激の間のS錐体刺激値を持つ色とした.その結果,刺激全体が赤みがかるまたは緑みがかると,3色覚の視覚探索能が顕著に低下し,その探索時間は,2色覚よりも長くなった.すなわち,色覚特性に優劣はなく,それぞれに得意な環境,不得意な環境があることを意味する.
著者
楊 寧 須長 正治 藤 紀里子 伊原 久裕
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.2_19-2_28, 2019-09-30 (Released:2019-12-25)
参考文献数
9

本研究では,小画面ディスプレイ,特にApple Watchを想定し,その画面表示環境下にて,日本語フォントの可読性と判別性を測定した。さらに,フォントの形態属性および差分についても調査を行い,小画面表示に適した読みやすく見やすいフォントの属性を探った。可読性に関しては,短文,連続文(大),連続文(小)の3つの提示条件ともに,濃度と字面面積の大きさから影響を受けていることがわかった。ただし,白背景か黒背景かによって,字面面積と濃度の直接影響の有無はまちまちであった。判別性に関しては,混同しやすい文字対を選定し,文字対を特定できる実験方法を用いて実験を行った。その結果,各フォントの特定の文字対の判別性を確認できた。また,差分分析を行った結果,ひらがなより,カタカナや英数字のような単純な文字対については,差分からの影響が明確であり,特定の文字対の字形の特徴も確認できた。
著者
菱川 優介 桂 重仁 須長 正治
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3+, pp.141-144, 2017-05-01 (Released:2017-10-07)

色覚異常を持つ人の日常生活におけるトラブルとして,焼肉の焼け具合がわからないという報告がされている.このことから,色覚異常を持つ人は,一人で焼肉を行うことが難しいと言える.本研究では,2色覚の一人焼肉を補助すべく,焼肉が焼けたかどうかを知らせるアプリを作成した.実験では,肉の表面を測色すると同時に,3色覚と2色覚に焼肉の見た目の焼け具合を評価してもらった.焼肉の色変化の過程は,錐体刺激値LM平面にて特徴が現れていた.この変化過程は,2色覚に対してL軸またはM軸への射影となる.その結果,生肉の色が,肉が焼けていく過程の色変化のなかに埋もれてしまい,2色覚は色変化からでは焼け具合がわかりにくいことが示された.また評価結果をもとに,LM平面上にアプリによる焼け具合判断の閾値を設定した.作成したアプリと3色覚の判断がどれくらい一致するかを調べた.焼けた肉と焼けていない肉を,アプリが正しく判断する確率はそれぞれ63%と94%であった.また,焼けた肉,焼けていない肉に対して誤った判断をする確率はそれぞれ37%,6%であった.以上のことから,おおよそ正しく肉の焼け具合を判断するアプリを作成した.
著者
桂 重仁 須長 正治
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.189-200, 2017-09-01 (Released:2017-09-25)
参考文献数
9

色彩や色名はコミュニケーションの情報として日常的に使用されている.しかし,色覚異常を持つ幼児は,色覚という概念が理解できないため,困惑すると思われる.そのような幼児に対し,まず,家族や保育士が色覚異常に気づき,そして,対処することが望まれる.そこで,本研究では,幼児の色覚異常に気づくために,色覚異常特有のクレヨンの色使い,すなわち,混同して使われることがある色に着目し,色彩科学的見地から市販されているクレヨンの混同色の解析を行った.さらに,2色覚のクレヨンの混同のしやすさに対し,“混同色対指数”という新たな指標を導入し,クレヨンの混同色のランク付けを行った.そして,幼児のクレヨンの色使いにて混同色対指数0.6以上のクレヨンの混同が色覚異常の可能性を示すひとつの目安となることを論じた.
著者
楊 寧 須長 正治 藤 紀里子 伊原 久裕
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1_51-1_60, 2018

<p> 本研究は,「ユニバーサルデザインフォント(以下「UD フォント」と表記)」として開発されたフォントの評価を中心に総合的に検証し,合わせてフォントの形態的属性についても調査を行い,これらの相関性を分析考察することで,望ましいUDフォントのデザインに関する指針を得ることを目的とした。<br> UDフォントの評価は,従来の視認性,判別性,可読性の3つの評価項目に、積極的な評価項目とされていなかった美感性を加え、計4つの項目で行った。若年者,デザイン関連業務経験者,高齢者の合計90名を被験者とした。また,角ゴシック体,丸ゴシック体,明朝体から,合計60フォントを実験用フォントとして選定した。<br> 本稿では,実験のうち,美感性を取り上げて分析を行い,合わせて計測したフォントの形態属性との間の相関性を探った。その結果,濃度,字面面積,英数字の形態が,いずれのカテゴリーにおいても,見出しと本文フォントともに,美感性評価に強く影響していることがわかった。</p>
著者
菱川 優介 桂 重仁 須長 正治
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.141-144, 2017

色覚異常を持つ人の日常生活におけるトラブルとして,焼肉の焼け具合がわからないという報告がされている.このことから,色覚異常を持つ人は,一人で焼肉を行うことが難しいと言える.本研究では,2色覚の一人焼肉を補助すべく,焼肉が焼けたかどうかを知らせるアプリを作成した.実験では,肉の表面を測色すると同時に,3色覚と2色覚に焼肉の見た目の焼け具合を評価してもらった.焼肉の色変化の過程は,錐体刺激値LM平面にて特徴が現れていた.この変化過程は,2色覚に対してL軸またはM軸への射影となる.その結果,生肉の色が,肉が焼けていく過程の色変化のなかに埋もれてしまい,2色覚は色変化からでは焼け具合がわかりにくいことが示された.また評価結果をもとに,LM平面上にアプリによる焼け具合判断の閾値を設定した.作成したアプリと3色覚の判断がどれくらい一致するかを調べた.焼けた肉と焼けていない肉を,アプリが正しく判断する確率はそれぞれ63%と94%であった.また,焼けた肉,焼けていない肉に対して誤った判断をする確率はそれぞれ37%,6%であった.以上のことから,おおよそ正しく肉の焼け具合を判断するアプリを作成した.
著者
楊 寧 須長 正治 藤 紀里子 伊原 久裕
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1_51-1_60, 2018-07-31 (Released:2018-08-30)
参考文献数
13

本研究は,「ユニバーサルデザインフォント(以下「UD フォント」と表記)」として開発されたフォントの評価を中心に総合的に検証し,合わせてフォントの形態的属性についても調査を行い,これらの相関性を分析考察することで,望ましいUDフォントのデザインに関する指針を得ることを目的とした。 UDフォントの評価は,従来の視認性,判別性,可読性の3つの評価項目に、積極的な評価項目とされていなかった美感性を加え、計4つの項目で行った。若年者,デザイン関連業務経験者,高齢者の合計90名を被験者とした。また,角ゴシック体,丸ゴシック体,明朝体から,合計60フォントを実験用フォントとして選定した。 本稿では,実験のうち,美感性を取り上げて分析を行い,合わせて計測したフォントの形態属性との間の相関性を探った。その結果,濃度,字面面積,英数字の形態が,いずれのカテゴリーにおいても,見出しと本文フォントともに,美感性評価に強く影響していることがわかった。
著者
田中 彩乃 伊藤 裕之 須長 正治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.279, pp.87-91, 2010-11-06

立体視ディスプレイの技術革新により・テレビ放送・デジタルサイネージ等の広告媒体における立体表示の利用普及が予想される.そこで,手前と背景に提示される情報がそれぞれどのように認知されるのかを調べる必要があると考えた.本研究では,刺激を奥行きが異なる2つの面上に提示し,目標刺激と注視点の奥行きを変化させることで視認性の変化を調べた.その結果,提示時間と奥行きの関連性が認められた.提示時間が短い場合,手前の面から奥の面への順序での情報提示が,スムースな情報の把握に有利で,逆の順序では手前の情報の視認性が悪くなることがわかった.
著者
伊藤 裕之 須長 正治 レメイン ジェラード バスチアン
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、視知覚の様々な側面における順応と残効を調べた。たとえば、残像の形成、順応による形の知覚的変化、錯視的運動にあらわれる運動残効などである。我々は、残像は網膜上の光受容器の疲労パタンそのものではなく、脳活動を表すことを残像の形の変化から見出した。そして残像が現れたり消えたりするのは、脳内での視覚的要素間の相互抑制によることを発見した。また、運動残効の実験により、オップアートに見られる流れの錯視が、相対運動の検出によって決定されていることを示した。さらに、繰り返される動きに対するサッカードの学習についても調べた。これらの結果は、順応と残効がいかに脳の活動を知るのに有効かを証明している。