著者
榎本 光信 今井 忍 八木 洋 上松瀬 勝男
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.587-595, 2003-11-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
28
被引用文献数
2 1

【目的】洞不全症候群 (SSS) に対して陽性変時作用を有するシロスタゾールが, SSSにおける工過性高度心房停止を抑制しうるかを検討した.【方法, 結果】対象はSSS23例.シロスタゾールを3カ月間内服前後でホルター心電図検査を施行した.20/23例で内服後2.5秒以上の心停止は消失し, 症状は改善した上有効20例の内服前の最大心房停止間隔 (max.PP) は3.4±1.3秒であった.心停止が残存した無効3例では内服前のmax.PPはいずれも6秒以上と高度に延長しており, 内服後も効果が不十分のためペースメーカ植込み術を施行した.内服前に施行した心臓電気生理検査では, 心房頻回刺激により全例洞房ブロックを認め, 4.2±3.4個の孤立性洞結節電位を伴い洞結節回復時間 (SRTi) は5, 518±3, 808msecと延長した.シロスタゾール有効例では内服3カ月後, 心房頻回刺激により洞房ブロックは改善しSRTiは1, 765±550msecと短縮した.【結語】シロスタゾールは洞房伝導を改善し, SSSにおける工過性心房停止の抑制効果を認めた.