著者
田辺 直仁 豊嶋 英明 林 千治 和泉 徹 松本 一年 関 奈緒 渡部 裕 小玉 誠 相澤 義房
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.111-117, 2006-03-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
13

突然死を発症後24時間以内の急性死と定義した場合の発生率は, 年間人口10万対114 (愛知県, 全年齢) , 15歳以上の145 (新潟県, 15歳以上) との報告がある.また, これらを含む4調査では, 男性に多いこと, 年齢とともに発生頻度が高くなることなどの共通した特徴が認められる.40~59歳の発生率 (年間人口10万対) は男性が52~89, 女性17~29であり, 主要死因死亡率に比べても高く, この働き盛りの年代で年間約1.2~2万人が突然死していると推計される.新潟市・長岡市の調査では突然死の約20%に虚血性心疾患, 13%に他の心疾患の関与が疑われ, 死因が確定できない例も37%認められた.意識消失での発症が約40%あり, 自宅や職場など普段の生活の場での発症や, 安静時や睡眠時の発症が多かった.排尿・排便時の発症が約9%認められ, 排尿・排便が発症の誘因となった可能性がある.危険因子としては高血圧や高血圧性臓器障害, 喫煙が重要であり, 過去1週間のストレスや睡眠時間の減少も突然死と関連していた.平成16年の新潟県中越地震では被災後1週間に突然死が有意に増加しており, 強いストレスが突然死の誘因となることの有力な証拠と考えられる.
著者
犀川 哲典 中川 幹子 高橋 尚彦 原 政英
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.149-155, 2001-03-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
30

標準12誘導心電図の最大QT間隔と最小QT間隔の差と定義される“QT dispersion” (QT間隔のばらつき) が各種の心疾患の予後と関連するとされ注目されている, しかし一方QT dispersionの概念に疑問も提出されている.疫学的研究でもQT dispersionは予後と相関しないとの報告もなされ, 賛否両論がでている, QT dispersionは心筋細胞の細胞膜電流を担うイオンチャネルの不均一分布によると考えられる.よって心臓再分極時間の空間的“ばらつき”そのものに疑義はない, 問題はそれを体表面でとらえることができるか?である.理論的な考察でもCampbellらが当初提唱したQT dispersionは近年問題ありとされ, 新しい指標あるいは体表面心電図の処理方法が開発され報告されている.本稿ではQT dispersionに関する現状と問題点を整理する.今後の研究の一助になれば幸いである.
著者
古賀 義則
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.132-140, 2001-03-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
16
被引用文献数
2

巨大陰性T波 (GNT) は心尖部肥大型心筋症が認識される端緒となった心電図所見で, 心尖部壁厚とGNTの深さが良く相関することから心尖部の限局性肥厚を反映した所見と考えられている.心電学的には心尖部での再分極過程が遅延するために心尖部から心基部 (右上方) へ向かうTベクトルが増大しGNTを形成すると考えられる.この再分極過程の遅延の機序として心尖部への興奮伝播が遅れることが体表面電位図による検討で示されているが, 活動電位持続時間についての電気生理学的検討はない.しかし肥大した心筋細胞や心不全や心筋症による病的心筋細胞では活動電位持続時間が延長すると報告されている.一方BMIPP心筋シンチ像では心尖部は欠損像を示し, 長期観察例ではGNTはR波の減高と共に消失し, 心筋の変性脱落が進行すると考えられる.したがって本症の心尖部心筋細胞は肥大した病的細胞と考えられ活動電位持続時間が延長していることが推測される.この結果心尖部の再分極過程が遅延しGNTが形成されると考えられるが, 今後は細胞レベルの電気生理学的検討やイオンチヤネルの研究を期待したい.
著者
伊藤 敦彦 羽田 勝征 高橋 尚彦 犀川 哲典 山下 武志 安喰 恒輔 速水 紀幸 稲葉 秀子 浅田 健一 村川 裕二
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.640-644, 2002-11-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
7

心房細動を有する患者ではしばしば心房粗動 (AFL) を合併する, 発作性心房細動 (PAF) の薬物治療において, Ic群薬は他のI群薬に比べAFLの出現率が高いか否かを検討した.重篤な器質的心疾患や心機能低下を欠く患者179人 (平均年齢58±11歳) の薬物治療中19人にAFLが認められた, 性別, 年齢, 左房径, あるいはβ遮断薬やカルシウム拮抗薬の併用はAFLが記録される割合と関連はなかった.Ia, b群薬とIc群薬では統計的には有意ではないが, 後者の投与中に多くのAFLが記録された (8%対15%) , 投薬前にすでにAFLが記録されている症例で治療中にAFLを認める頻度は52% (12/23) と高く, AFLの既往がない患者での4% (7/156) を大きく上回っていた (p<0.0001) .また, AFL既往例に限れば, Ic群薬投与中はIa, b群薬投与中よりAFLを認める症例が多かった (36%対78%) .以上より, PAF治療中のAFLの出現には治療前のAFLの既往が大きな要因であるが, Ic群薬投与中により多くの症例でAFLが出現する傾向があった.
著者
藤田 禎規 岸 良示 中沢 潔 高木 明彦 長田 圭三 龍 祥之助 宮津 修 渡邉 義之 西尾 智 松田 央郎 石川 由香子 三宅 良彦 中村 雅 望月 孝俊
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.737-743, 2006-09-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
10

症例は52歳, 女性.心室細動 (Vf) による心肺停止状態となり, 植込み型除細動器 (ICD) 植込み術を施行した.以後Vf発作は認めなかったが, 発作性心房細動 (Paf) によるICDの不適切作動を頻回に認めた.Pafは多剤無効でアミオダロンを使用したが, 甲状腺機能亢進症を生じたため継続不能となった.アミオダロン中止により, 再びPafによるICDの不適切作動を認めた.このため薬物コントロールは困難と考え, カテーテルアブレーションによる房室プロツク作成術および心房リードの追加を行いDDIRペーシングとした.その後はICDの不適切作動は認めなかったが, 7カ月後に失神発作を生じた.ICD記録では, 頻拍イベントは認めなかったが, 入院後の心電図モニターで失神前兆と一致して心停止を認めた.心房波は75bpmの自己調律で, ICDの心内心電図記録から, 心房波のオーバーセンシングによる心室ペーシング抑制と考えられた.
著者
青峰 正裕 大和 孝子
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.10-15, 2002-01-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
20
被引用文献数
4 4

女子大学生 (252名) を対象として, 身体の各部に冷えを訴える冷え症者 (冷え症群) と, 冷えを自覚しない正常者 (正常群) の身体的特徴と標準肢誘導心電図を比較した.冷え症群では体脂肪量, 皮下脂肪厚, 体脂肪率は正常群と比べて, いずれも有意に低下しており, 体脂肪が低い傾向にあった.また, 除脂肪体重も正常群に比し有意に低く, このことは身体を構成する筋肉量も少ないことを示唆しており, したがって体重, BMIも低く, 冷え症群は痩せ型の傾向があった.心電図波形を正常群と冷え症群で比較した場合, QT時間とR-R間隔を除いて他の心電図波形には有意な差は観察されなかったが, 両ファクターはともに冷え症者で延長していた.また, 脈拍数は冷え症群では有意に低下しており, R-R間隔の延長がQT時間の延長を招き, それが冷え症群における心拍数の減少を引き起こしていることが考えられ, QT時間を先行するR-R間隔で補正したQTcを両群間で比較すると, 有意差は消失した.このように冷え症者は一般に痩せ型であり, 徐脈傾向で, 心電図ではQT時間とR-R間隔の延長が観察される傾向があることが明らかになった.最後に冷え症と自律神経障害との関係を論じた.
著者
沢山 俊民
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.447-450, 2001-07-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
9

川崎医科大学循環器内科に入院し, 冠動脈造影で冠狭窄部位が特定された患者を対象に, マスター負荷試験の成績を解析したところ, 以下のように虚血性U波の有用性が見い出された.1.従来のST・T異常例に虚血性U波例を加算すれば, 心筋虚血の検出率は心筋シンチや負荷エコー所見に勝るとも劣らないものと思われた.2, 心電図検査では弱点とされていた後壁虚血も, 右冠動脈疾患か左回旋枝疾患かの鑑別も含めてT波とU波の組合せ所見で検出可能である.3.U波異常は, トレッドミル法によらなくても, より簡便なマスター2階段法で検出可能である.
著者
勝木 桂子 相原 直彦 伊達 裕 武村 珠子 住田 善之 和田 光代 鎌倉 史郎 下村 克朗
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.291-300, 1997-05-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
19
被引用文献数
1

心室内伝導障害例での持続型心室頻拍 (SVT) の発生予知に時間解析法による加算平均心電図 (SAEOG) が有用であるかを検討した.SAECGを施行した心室内伝導障害例70例を, 12誘導心電図から右脚ブロック型を示す36例 (RBBB群) と左脚ブロック型を示す34例 (LBBB群) に分類し, SVTの既往の有無 [SVT (+) 群, SVT (-) 群] でSAEOG各指標を検討した.RBBB群ではTQRSD, LAS40, RMS40の3指標とも, LBBB群ではRMS40のみでSVT (+) 群とSVT (-) 群との間に有意差が認められた.SVT (+) 群を分離するための診断基準は, RBBB群ではTQRSD≧160mseo, LAS40≧40mseo, RMS40≦14μVとなり, 川頁に感度77%, 85%, 77%, 特異性78%, 70%, 74%で, LBBB群ではRMS40≦14μVとなり, 感度82%, 特異性87%で良好な診断精度であった.以上より, SAEOG各指標はLPの診断基準を新たに設定することにより, 心室内伝導障害例においてもSVTの予知が可能であると結論される.
著者
鷲塚 隆 池主 雅臣 広野 崇 杉浦 広隆 小村 悟 渡部 裕 保坂 幸男 太刀川 仁 田邊 靖貴 古嶋 博司 藤田 聡 岡村 和気 和泉 大輔 小玉 誠 相澤 義房
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.87-93, 2005-01-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

【背景】拡張相肥大型心筋症 (DHCM) に伴う持続性心室頻拍 (VT) 例の臨床象について検討を行い報告する.【対象】DHCMに伴う持続性心室性不整脈例5例 (平均年齢60±9歳, 男性5例) .DHCMの定義はHCMから進行性に左室駆出率50%未満に低下した症例とした.【結果】左室拡張終期径 (6.1±0.7cm) は拡大し, 左室駆出率は0.36±0.09と低下していた, 安静時心電図上の胸部誘導V50rV6での最大R波高は1.1±0.4mVと減高していた, いずれの症例もDHCMに移行後初めて持続性VTが記録された.臨床的には5例とも単形性持続性VTであり, 計7波形が認められたが, 心臓電気生理検査 (EPS) では3例で誘発されず, 誘発された2例では多形性VTが誘発された, 全例で植込み型除細動器 (ICD) 植込みを行い, うち3例では経過中, 単形性心室頻拍に対してICD作動を認めた.【結語】VTは, 拡張相に移行後初めて出現し, 全例単形性VT例であった.しかし, EPSでの評価が困難であることは通常のHCM例と類似し, 二次予防にはICD治療が第一選択と考えられた.
著者
榎本 光信 今井 忍 八木 洋 上松瀬 勝男
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.587-595, 2003-11-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
28
被引用文献数
2 1

【目的】洞不全症候群 (SSS) に対して陽性変時作用を有するシロスタゾールが, SSSにおける工過性高度心房停止を抑制しうるかを検討した.【方法, 結果】対象はSSS23例.シロスタゾールを3カ月間内服前後でホルター心電図検査を施行した.20/23例で内服後2.5秒以上の心停止は消失し, 症状は改善した上有効20例の内服前の最大心房停止間隔 (max.PP) は3.4±1.3秒であった.心停止が残存した無効3例では内服前のmax.PPはいずれも6秒以上と高度に延長しており, 内服後も効果が不十分のためペースメーカ植込み術を施行した.内服前に施行した心臓電気生理検査では, 心房頻回刺激により全例洞房ブロックを認め, 4.2±3.4個の孤立性洞結節電位を伴い洞結節回復時間 (SRTi) は5, 518±3, 808msecと延長した.シロスタゾール有効例では内服3カ月後, 心房頻回刺激により洞房ブロックは改善しSRTiは1, 765±550msecと短縮した.【結語】シロスタゾールは洞房伝導を改善し, SSSにおける工過性心房停止の抑制効果を認めた.
著者
清水 渉 相庭 武司 栗田 隆志 里見 和浩 横川 美樹 岡村 英夫 野田 崇 須山 和弘 相原 直彦 鎌倉 史郎
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.147-157, 2008-03-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
17

Brugada症候群には一部の患者ではSCN5Aなどの遺伝子変異が同定され, 遺伝性不整脈疾患にもかかわらず, 若年発症はまれで40~50歳にかけて初発することや, 常染色体優性遺伝形式をとるにもかかわらず男性に圧倒的に頻度が高いという性差など, 未解決な点も多い.動脈灌流右室心筋切片に高感度光マツピング法を応用したBrugadaモデルにより, ST上昇や心室細動 (VF) 第1拍目の心室期外収縮には, 心外膜-心内膜細胞間の電位勾配と心外膜細胞間のphase 2 reentryが関与するが, VFが持続するためには, 軽度の伝導 (脱分極) 異常が必要であるとされている, SCN5A陽1生Brugada症候群患者ではSCN5A陰性患者に比べ, 心電図の脱分極指標 (PR, QRS時間) が長く, 平均10年間の経過観察でこれらの延長度も大きいことが報告され, 特にSCN5A陽性例で, 加齢による脱分極異常がVFの晩期発症に関与する可能性が示唆されている.男性優位の性差には, 右室心外膜細胞の第1相notchが雌に比べ雄で大きいことが関与していると動物実験で報告されている, また, Brugada症候群男性患者では, 年齢を一致させた対照男性に比べて, 外向き電流を増加させる男性ホルモン (テストステロン) レベルが有意に高く, 体脂肪率が低いことが報告されており, テストステロンの関与も示唆されている.
著者
北風 政史 真田 昌爾 浅沼 博司 野出 孝一 南野 哲男 高島 成二 中篠 光章 篠崎 芳郎 盛 英三 葛谷 恒彦 堀 正二
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.103-111, 2000-03-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
24

先行する短時間心筋虚血 (ischemic preconditioning) は, 長時間虚血により生じる心筋壊死サイズを縮小する.本研究では, 麻酔開胸イヌを用いそのメカニズムを検討した.その結果, 1) ischemic preconditioningによる心筋梗塞サイズ縮小効果には, アデノシン産生酵素活性化が関与する, 2) protein kinase C活性化に加えてATP感受性K+チャネル開口がアデノシン産生酵素活性化に関与する, 3) 細胞膜・ミトコンドリアに存在するATP感受性K+チヤネルが独立して相加的にischemic preconditioningに関与する, ことが明らかになった.以上の結果より, ischemic preconditioningによる心筋保護作用にはアデノシンーアデノシン産生酵素・protein kinase C・ATP感受性K+チャネル開口が連関している可能性が示された.
著者
河村 剛史 柴田 仁太郎 和田 寿郎
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.675-682, 1984-11-01 (Released:2010-09-09)
参考文献数
15

Rosenbaumらの左脚後枝ブロックの心電図診断基準が, 左脚後枝ブロック単独のものか, あるいは右脚本幹ブロックを合併したものかを明確にするために, カニクイザル8頭を用いて, 実験的に左脚後枝群障害, 次いで右脚本幹障害を作成し, 心表面マッピング, ベクトル心電図を用いて検討を加えた。早期興奮部位であった左室後面が左脚後枝障害にて最終興奮部位に変わり, この部位に一致して最大QRSベクトルは左後下方に偏位した。右脚本幹障害が加わると, 最終興奮部位は右室房室間溝側に変わり, 最大QRSベクトルは著明な右軸偏位を示した。従って, Rosenbaumらの左脚後枝ブロックの診断基準は, 右脚本幹ブロックを合併した場合の基準であり, 左脚後枝ブロック単独では右軸偏位は示さず, むしろ後方偏位を示した。
著者
中山 仁
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.99-105, 1995-03-31 (Released:2010-09-09)
参考文献数
14

電位依存性イオンチャネルのいくつかが相次いでクローニングされたことが引き金となって, 精力的な研究が展開された.その結果, チャネル分子の機能をその構造から論じることが可能になりつつある.「膜電位に依存したチャネルの開閉によって, 特定のイオンが選択的に膜を透過する」と特徴づけられる電位依存性イオンチャネルの基本機能は, 電位センサー部, 活性化ゲート部, 不活性化ゲート部, およびイオン選択性フィルター部によって担われると考えられるが, これらの構造部がどんなものか, 次第に明らかになってきた.またこれらの構造部の一部は, Ca拮抗薬や神経毒の結合部位と密接なつながりをもつこともわかってきた.この分野の進歩のようすを概説する.
著者
本間 覚 山口 巖
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.31-37, 2002-01-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
6
著者
神谷 香一郎
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.9-14, 2004-01-23 (Released:2010-09-09)
参考文献数
29

β遮断薬が心不全患者の予後を改善することは, 大規模臨床試験で明らかにされている.β遮断薬の作用は多岐にわたっており, 心肥大, 線維化, アポトーシス, 酸化ストレス, レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系などを介して心臓リモデリングを抑制するほかに, 抗不整脈作用も関与すると考えられるがその詳細は明らかでない, β遮断薬の抗不整脈作用は, 当然のことながらその発生機序にβ受容体刺激が関与する不整脈に対して発揮される, β1受容体刺激は, アデニルシクラーゼ・サイクリックAMP系そしてプロテインキナーゼAを活性化する.その結果, Ca2+チヤネルのみならず, IKsチヤネルそしてIfチャネルなど多くのイオンチャネルをリン酸化してこれらのチャネルを介する電流を増加させる.Ca2+電流の増大は房室結節やプルキンエ線維の自動能を亢進し, 心房や心室で遅延および早期後脱分極をもたらす.自動能の亢進にはIf電流の増大も関与するとされている.β遮断薬はこれらの自動能亢進の責任イオン電流を正常化することにより抗不整脈作用を示す.リエントリー性不整脈に対しても, 房室結節と副伝導路を含む大きなリエントリー回路などの場合には抗不整脈作用を示す.またQT延長も認められることからIII群抗不整脈薬作用も期待される.特にカルベジロールは, β遮断薬としての上記クラス作用のほかに直接的にイオンチヤネルを抑制する可能性がある.本稿では, 心不全や不整脈に対するβ遮断薬の薬効について, β遮断薬に共通するクラス作用, そしてカルベジロール固有のイオンチャネルへの急性・慢性作用, に分けて述べる.
著者
志賀 剛 笠貫 宏
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.77-83, 2002-03-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
13

アミオダロンは強力な抗不整脈作用を有しているが, その薬物動態は複雑である, 脂溶性が高く脂肪組織などに広く分布し, その除去半減期は14~107日と長いという特徴がある.このため, 早期の効果発現を期待して初期負荷を行うという考えがある.日本では400mg/日2週間の初期負荷と200mg/日の維持量が勧められている.初期負荷量として800~1200mg/日の高用量を用いると血中濃度が高く推移し, より早い効果発現が期待できる一方, 催不整脈作用等の発現が懸念される.一般的には400mg/日による初期負荷が安全で効果的と思われる.日本における適応は, 生命の危険がある心室頻拍・心室細動あるいは肥大型心筋症に伴う心房細動の再発性不整脈である.欧米に比し, 低用量であり, 低い血中濃度でありながら, その効果は劣っていない, 一方, 心外副作用として肺毒性や甲状腺障害が多く, 眼毒性, 皮膚毒性, 神経毒性は少ない特徴がある.常に有効性と安全性を考慮した投与設計が必要である.
著者
白井 徹郎 笠尾 昌史 井上 清
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.284-290, 1997-05-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
16

心室性不整脈発生と自律神経機能, 特に交感神経活性との関連については以前から注目されているが, 自然発作時における交感神経活性の意義については未だ充分に明らかにされていない.そこで非持続性心室頻拍 (NSVT) およびtorsade de pointes (TDP) 出現前のRR時間および心拍変動を分析し, これら不整脈発生に及ぼす交感神経活1生の影響と予後との関連につき検討した.検討は1) NSVT84例においてNSVT1日出現回数, 最大連発数, 先行洞調律RR時間, 先先行洞調律QT時間, 連結時間等のNSVTに関連したあるいはNSVT出現に関連したHolter心電図所見と長期予後との関係, 2) NSVT21例のNSVT出現前における心拍変動スペクトラル解析からみた交感神経活性と予後との関連, 3) Holter心電図にて単形性NSVTとTDPを頻回に記録し得た二次性QT延長例での心拍変動とTDP発生との関連の3点につき行った.その結果NSVT84例中5例で心臓性急死 (SCD) を認め, これらの先行RR時間は特発性の予後良好例に比し有意に短く, 交感神経活1生優位の状態でNSVTが出現していたと推定された.NSVT出現前10分間でLow frequency power/High frequency power (LF/HF) 比が有意に上昇した交感神経関与群9例では, 非関与群12例に比しVTrateは有意に高く, SCDあるいは心室細動発生率が高い傾向にあった.いずれの検討においても予後不良例は陳1日性心筋梗塞あるいは拡張型心筋症の重症基礎心疾患を有していた.二次性QT延長例においてはVT出現前6心拍においてshort-long-shortサイクルを繰り返しつつその程度が強まるcascade現象を示し, 且つVT開始時のVTrateが高いとTDPになりやすい傾向を認めた.このVT開始時のVT rateの亢進は交感神経活性優位の状態を間接的に示していると考えられた.基礎に重症心疾患があり, NSVT発生に交感神経活性が関与している例でのVT rateは高く, 予後不良となる可能性が示唆された.二次性QT延長例ではcasoade現象を認め, VT開始時に交感神経活性優位の状態にあるとTDPが出現しやすいと考えられた.
著者
関口 守衛
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.250-254, 1999-05-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
20

不整脈, 伝導障害を主徴とする心筋症 (EOM) が存在するとの想定のもとに573症例について心内膜心筋生検を施行, その中で右心房心内膜心筋生検例を行った27症例中13例 (48%) に有意な心筋病変を認め, 右心室には病変が著明でなかったことから心房心筋症atrial cardiology (ACM) という概念を提唱するに至った自主研究内容を紹介した.ACMでは何故心房に病変の局在があるのか?遺伝子異常が関係あるのか?など今後の研究課題であることを強調した.