著者
綿谷 安男 榎本 雅俊
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

大きなヒルベルト空間に含まれる小さい部分空間の相対的な位置関係を研究した。それもn個の部分空間の配置を考えた。重要なのは直和に分解できない直既約な配置である。n=1,2の時はすでに解けているが、有限次元に限れば、n=3,4の場合も完全に分類されている。しかし、無限次元だとn=3や4の場合すら未解決である。今回の研究はこの問題を線形作用素の研究との類似を考察するという新しいアイデアで攻略した。さらにquiver(有向グラフ)の頂点をヒルベルト空間に、辺を線形作用素に対応させるヒルベルト表現の理論を開始した。拡大ディンキン図形に対してその無限次元直既約ヒルベルト表現の存在を証明した。
著者
綿谷 安男 幸崎 秀樹 榎本 雅俊
出版者
九州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

Gelfand-Ponomarevは有限次元空間の4個の部分空間の直既約な配置について、完全分類を行った。全体空間が無限次元のヒルベルト空間の場合は榎本氏と代表者の共同研究で4つの部分空間の既約な配置の非自明な具体例を無限個構成することができた。今回の研究では、さらに、有向グラフ(quiver)に沿ったヒルベルト空間の部分空闇の配置の研究を試みた。有向グラフ(quiver)の頂点と辺をヒルベルト空間とその間の作用素として表すヒルベルト表現を研究する。特に包含写像を考えれば、部分空間を有向グラフに沿って配置する問題を含んでいる。有限次元空間では、直既約な表現が有限個しかないのはディンキン図形のAn,Dn,E6,E7,E8に限るというGabrierの定理がある。この定理を関数解析の手法で無限次元化するのが、大きな目的である。鏡映関手とその双対性を無限次元のヒルベルト空間の枠組みで構成したい。無限次元の直既約なヒルベルト表現の非存在を仮定して,quiverがディンキン図形のAn,Dn,E6,E7,E8に限られることは、去年度に示すことができた。しかしその逆である、quiverがディンキン図形のAn,Dn,E6,E7,E8であれば、無限次元の直既約なヒルベルト表現が存在しないということは、ようやくAnの時に示せたのが本年の成果である。さらにBrennerによる3つの部分空間の配置の標準分解を無限次元で特別なときに示せた。拡大ディンキン図形の無限次元の直既約なヒルベルト表現にたいしては、不足数という数値的不変量をFredholm作用素の指数を使ってE6,E7の時に導入することができた。