著者
榛葉 繁紀
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

肥満ならびにメタボリックシンドローム患者数急増の原因は多種多様であり、シフトワークもその一つとして考えられる。シフトワークによるメタボリックシンドローム発症のメカニズムは明らかではないが、体内時計の乱れがその一つとして疑われている。そこで本研究では、体内時計システムのマスターレギュレーターであるBMAL1の機能とメタボリックシンドロームとの関係を明らかにする目的でBMAL1欠損(KO)マウスを作製し、その解析を行った。全身性BMAL1 KOマウスは、低体重、脂質異常症、高コレステロール血症、空腹時血糖の上昇ならびに各組織への著しい脂質の蓄積を示した。また高脂肪食負荷により著しい体重増加を示した。さらにBMAL1欠損は耐糖能の低下を生じ、その原因として膵ラ氏島の矮小化とそれに伴うインスリン分泌不全が示された。これらの結果は、臓器間クロストークにBMAL1(すなわち体内時計システム)が関与する事を示すとともに、全身の体内時計システムの調和が乱れることによりメタボリックシンドロームが発症することを示唆している。
著者
榛葉 繁紀
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.794-800, 2012-11-01 (Released:2013-11-01)
参考文献数
36

ヒトも含め地球上に存在する多くの生物は,いわゆる「お日様に従った生き方」をするために体内時計を有しており,そのため多くの生理機能は概日リズム(サーカディアンリズム)を示す.しかしながらグローバリズムが席巻する現代,効率重視の昼夜交代勤務(シフトワーク),東西飛行(時差ぼけ)などにより,このサーカディアンリズムに大きな負荷が課されている.多くの疫学研究により不規則な生活が生活習慣病の発症につながっていること,そして基礎研究により,そのメカニズムとしてサーカディアンリズムの形成因子である時計遺伝子の機能異常が明らかにされてきた.ここでは時計遺伝子ならびにその関連因子のノックアウトマウスの解析をもとに体内時計と疾患との関係について考察したい.
著者
榛葉 繁紀
出版者
日本大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

近年、生活リズムの乱れが、肥満やメタボリックシンドロームのリスクファクターであることが疫学調査より明らかとなってきた。我々は、サーカディアンリズムのマスターレギュレーターである転写因子Brain and Muscle Arnt like protein1(BMAL1)が脂肪細胞の機能を調節することを報告した(Shimba et al PNAS 2005)。また、メタボリックシンドローム患者の脂肪組織においてBMAL1機能の異常が報告されており、さらにはSNP解析によりBMAL1機能不全と糖尿病ならびに高血圧発症との関係が疑われている。これらの結果は、BMAL1が代謝調節に積極的に関与していること、さらにはその機能異常がメタボリックシンドローム発症へと通ずることを示唆している。そこで本研究ではBMAL1機能の異常とメタボリックシンドローム発症との関係を明らかとすることを目的として、BMAL1ノックアウト(KO)マウスの解析を行った。雄性C57B1/6JマウスならびにBMAL1 KOマウスを通常あるいは高脂肪食下において5週間飼育した。常法に従い、インスリン感受性、耐糖能ならびに血液生化学検査を行った。遺伝子発現の変化はGeneChipを用いて解析した。通常餌飼育下においてBMAL1 KOマウスは野生型マウスに比較して低体重の傾向を示したが、高脂肪食給餌により野生型マウス以上に著しい体重の増加を示した。またそれに伴い脂肪肝、高コレステロール血症ならびに顕著な皮脂の分泌を示した。またBMAL1 KOマウスの耐糖能は、通常ならびに高脂肪食飼育下のいずれにおいても低下を示した。また各組織における遺伝子発現の変化はこれら表現系を支持するものであった。以上の結果よりBMAL1の機能異常が、メタボリックシンドローム発症へのリスクファクターとなることが示唆された。