著者
野川 敏史 高山 芳幸 齋藤 正恭 横山 敦郎
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.170-178, 2015

<b>目的</b>:部分欠損症例において,インプラント支持補綴装置(ISFP)と部分床義歯(RPD)が欠損隣接歯の予後に及ぼす影響を比較・検討することを目的として後ろ向きコホート研究を行った. <br><b>方法</b>:北海道大学病院歯科診療センター義歯補綴科にて,2003年から2011年の間に,ISFPまたはRPDを装着し,補綴治療終了後1年以上経過し,年1回以上のリコールに応じている患者を対象とした.全部床義歯装着者や診療録の不備により不適当と判断したものは除外した.調査項目は,性別,年齢,補綴方法,残存歯数とし,欠損隣接歯では,歯種,根管治療の有無,歯冠補綴・修復の有無,同名対合歯の有無を調べた.エンドポイントは抜歯,および何らかのトラブル(破折,脱離,齲蝕,根尖性歯周炎,辺縁性歯周炎)があった時点としてKaplan-Meier法により生存率,トラブル未発生率を算出した.補綴装置間の比較にはlog-rank検定を用い,有意水準は0.05とした.<br><b>結果</b>:対象患者は501名(ISFP:41名,RPD:460名)であった.欠損隣接歯の5年生存率は,ISFPで97.5%,RPDは90.9%であり有意差は認められなかった(<i>P</i>=0.060).トラブル未発生率は,ISFPで89.3%,RPDは70.5%であり有意差が認められた(<i>P</i>=0.008).<br><b>結論</b>:本研究において,補綴装置の選択が欠損隣接歯の予後に影響を及ぼすことが示唆された.
著者
高山 芳幸 横山 敦郎 齋藤 紘子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

まず骨質を表すパラメータ(皮質骨厚,海綿骨のヤング率)を種々変化させた有限要素解析を行い,骨の最大ひずみを評価値として応答局面を作成した.次に,インプラントのサイズを最適化手法を用いて検討したところ,海綿骨のヤング率が0.5GPa以下の場合,インプラントのサイズを大きくしても生理的なひずみの限界値を超え,インプラント先端部周囲の海綿骨に最大歪みがみられた.しかし,CTデータから構築したモデルによる解析では,最適化計算の結果と比較して,歪みの値はやや低く,最大相当歪みの現れる位置が異った.これは,CTから作成したモデルでは,骨の物性が部位によって大きく異なっていたことが原因と考えられた.
著者
湯田坂 雅子 横山 敦郎
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ナノカーボン(NC)は体内でマクロファージに取り込まれることが多く、過剰に取り込まれると細胞死をひきおこす。細胞死が起こる際には、活性酸素(ROS)産生が亢進するので、そのメカにズムについて検討した結果、ROS産生亢進はミトコンドリアの膜障害が関係していることが明らかとなった。NCによる細胞死メカニズム解明と同時に、NCの表面被覆剤を検討し、表面被覆剤の量に最適値があること、表面被覆剤が細胞死を起こす場合があることなどを明らかにした。また、マクロファージによる貪食を阻害する効果的なNC表面修飾剤を見出し、その効果を細胞実験とマウス実験で確認した。
著者
野川 敏史 高山 芳幸 齋藤 正恭 横山 敦郎
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.170-178, 2015

<b>目的</b>:部分欠損症例において,インプラント支持補綴装置(ISFP)と部分床義歯(RPD)が欠損隣接歯の予後に及ぼす影響を比較・検討することを目的として後ろ向きコホート研究を行った. <br><b>方法</b>:北海道大学病院歯科診療センター義歯補綴科にて,2003年から2011年の間に,ISFPまたはRPDを装着し,補綴治療終了後1年以上経過し,年1回以上のリコールに応じている患者を対象とした.全部床義歯装着者や診療録の不備により不適当と判断したものは除外した.調査項目は,性別,年齢,補綴方法,残存歯数とし,欠損隣接歯では,歯種,根管治療の有無,歯冠補綴・修復の有無,同名対合歯の有無を調べた.エンドポイントは抜歯,および何らかのトラブル(破折,脱離,齲蝕,根尖性歯周炎,辺縁性歯周炎)があった時点としてKaplan-Meier法により生存率,トラブル未発生率を算出した.補綴装置間の比較にはlog-rank検定を用い,有意水準は0.05とした.<br><b>結果</b>:対象患者は501名(ISFP:41名,RPD:460名)であった.欠損隣接歯の5年生存率は,ISFPで97.5%,RPDは90.9%であり有意差は認められなかった(<i>P</i>=0.060).トラブル未発生率は,ISFPで89.3%,RPDは70.5%であり有意差が認められた(<i>P</i>=0.008).<br><b>結論</b>:本研究において,補綴装置の選択が欠損隣接歯の予後に影響を及ぼすことが示唆された.
著者
横山 敦郎 安田 元昭 山本 悟 網塚 憲生
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

咬合に起因する微小動揺がオッセオインテグレーションに与える影響を明らかにすることを目的に、ラット上顎臼歯を抜歯後、チタンスクリューを即時埋入し、1週間後に咬合接触を付与し、咬合接触を与えないラットを対照群とし、組織化学的検索を行うとともに、マイクロアレイを用いて遺伝子発現の比較を行った。咬合接触を付与したラットにおいてはスクリュースレッド間の骨梁幅は有意に太くなり、スクレロスチン陽性骨細胞率は低下していた。遺伝子発現については、骨形成やBMP調整に関与する遺伝子が発現していた。これらの結果から、抜歯後即時埋入早期に与える適度の咬合負荷は、オッセオインテグレーションを早めることが示唆された。
著者
横山 敦郎 安田 元昭
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究においては,歯根膜幹細胞の種々の細胞への分化に関する成長因子の同定および分化した細胞の遺伝子発現様式の差異を明らかにすることを目的に,以下の研究を行った.WKAウィスター系5週齢雄性ラットから,下顎切歯を抜去し,15%FBSおよび抗生剤を含むα-MEM中に静置し,2週後まで初代培養し,アウトグロースした細胞を歯根膜細胞として回収した.回収した細胞を,デキサメサゾン(Dex),アスコルビン酸(Asc),βグリセロフォスフェイト(βGP)を含む培地とこれらを含まないコントロールの培地の2種の培地で2週間培養し,骨関連タンパクであるオステオカルシンと歯根膜特有のタンパクであるXII型コラーゲンについてRT-PCRを行いmRNAの発現を検索した.XII型コラーゲンの発現は,コントロールとDexを含む培地の両者に同様に認められたが,オステオカルシンはDexを含む培地で著しく強く発現していた.この結果から,Dexで骨芽細胞に誘導される幹細胞が,採取された歯根膜細胞には含まれることが明らかとなった.この結果をもとに,Dexを含む培地,b-FGFを含む培地およびこれらを含まないコントロール培地の3種の培地で歯根膜細胞を3日培養した後,RNAを回収し,DNAマイクロチップで網羅的にmRNAの発現を解析した.その結果,mRNAの発現は,b-FGFを含む培地とコントロールの培地では,ほとんど差異が認められなかったが,Dexを含む培地とでは差異が認められた.この結果から,b-FGFは歯根膜幹細胞を分化させることなく増殖させ,またDexは,歯根膜幹細胞を骨芽細胞へ分化させることが示唆された.