著者
横山 登志子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.57-70, 2021

<p>本論文の目的は,ドメスティック・バイオレンス(DV)の被害を受けた女性・母子の緊急一時保護の実態調査と追跡調査から支援課題を検討することである.緊急一時保護の実態調査結果からは,①複合的困難ゆえの短期間調整の難しさ,②「生命の危惧あり」の多さ,③子どもの被害の見えにくさ,④被害女性の生活経験にみる生活困難,⑤自立的な生活再建層を中心に予想される不安定さ,⑥継続する生活困難であった.また追跡調査からは約7割のケースで連絡がとれず生活基盤の不安定性が継続している可能性が示唆されたほか,電話が通じたケースでもほとんどのケースでさらなる転居がみられた.以上のことから,支援課題を3点指摘した.①複合的困難と転居に対応する連携強化,②子どもの被害に焦点を当てた支援,③アフターケアの強化である.</p>
著者
横山 登志子
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.24-34, 2004-11-30

本論では,歴史的に社会防衛的色彩の強い精神保健福祉領域の「現場」で,ソーシャルワーカーがどのような援助観を醸成させているのかについてソーシャルワーカーの自己規定に着目して,以下の点について考察している.第1にソーシャルワーク理論史にみるソーシャルワーカーの自己規定では,クライエントを自らとは異なる「他者」としてとらえてきたことについて論じた.そして,専門的自己と個人的自己は分離することができないものであることを指摘した.第2にソーシャルワーカーのインタビューから「現場」に立ち会う者としての個人的自己の強いコミットメントが示唆されたことを述べた.以上の点から,静的・理想的な専門的自己のありようを示す援助関係論から,「現場」のリアリティーが失われない動的・状況密着性が高い個人的自己をも内包した援助関係論を構築する必要性が示唆されることについて述べた.
著者
横山 登志子
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部紀要
巻号頁・発行日
vol.11, pp.19-25, 2004

本稿の目的は、ソーシャルワーク(以下、SW)におけるナラティヴ・アプローチの貢献と、問題や課題についての議論を整理し、筆者の意見を提示することである。SWにおけるナラティヴ・アプローチの貢献は次の4点である。(1)SWの知識の権威性について「問い」を投げかけた点、(2)クライエントの生きたローカルな知識が注目された点、(3)価値実践としてのSWを考えるきっかけになった点、(4)ソーシャルワーカーは何をどのような立場から援助を行うのかについての自己言及性が求められた点である。問題・課題は次の3点である。(1)理論と介入の一貫的な説明、(2)物語の二分法に関してのリアリティーある説明、(3)SWに関する反省的実践(研究)の必要性である。特に3点目の課題について、SW理論史でソーシャルワーカーがどのように規定されてきたのかに関する批判的検討の必要性と、実践経験においてソーシャルワーカーがどのような自己規定の変容を経験しているのかについて明らかにすることが重要であることを述べた。