著者
樫野 悦子 鯉沼 実佐江
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.122, 2005

目的 鮮明な赤色色素となる貴重な動物染料のコチニールは,カイガラ虫科エンジ虫の虫体に存在する色素で,中南米の砂漠に生育するサボテン等に寄生して成長するが,産卵前に採取して乾燥状態で輸出される。天然物であるため採取量は限定され,飼育拡大も困難であることから、その色素の有効な色素獲得の研究が望まれる。そこで,染色用染料としてのコチニールの有効な抽出の基礎データーを得るために、本研究ではコチニール抽出に及ぼす無機酸添加と加温時の影響をpH変換法を用いて検討を行った。方法 無機酸添加剤は,硫酸,硝酸,リン酸等を用い,希釈した各溶液にて初期値pH2.0,2.5,3.0,4.0にpH計を用いて調整した溶液50mlを容量100mlの二口フラスコにとり,冷却管を付けて電気定温湯煎器で25℃,40℃,60℃,80℃,90℃の各温度に設定後,田中直染料店より購入してデシケーター保管したコチニール乾燥虫体0.5gを加え,一定濃度で30分間抽出し,大気中で30分間自然冷却後,ろ別した抽出液の可視部吸光度測定により吸収スペクトル波長曲線と最大波長を求め,最大吸収波長が大きく異なる場合は,新たに同種の無機酸又は数種の塩基を加えて490nm付近でpH3.0又は525nm付近でpH7.0となるように調整しつつ,かつ50倍に希釈して,再度同様に測定した。結果 pH変換法でコチニール抽出液のpHをpH3.0及びpH7.0に変換すると,最大波長は490nm付近及び525nm付近となる。どちらの最大波長においても無機酸添加と加温によるコチニール抽出は初期値pH4.0の80℃,90℃抽出の場合に水のみの抽出よりも高い吸光度で添加効果が認められ,pH変換法による比較は異なる2種の最大波長で有効であった。
著者
樫野 悦子 藤井 富美子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.533-539, 2005-08-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
24

3種類のシクロデキストリン(α-, β-, γ-CD)を用い, 油性物質として, コレステロール, トリオレイン, アルキル鎖長の異なる飽和脂肪酸のラウリン酸, ミリスチン酸, パルミチン酸, ステアリン酸, 及び不飽和脂肪酸のオレイン酸の7種類を用いて, CDによる油性物質の包接について検討した.CDを水に溶解し, 油性物質をエタノールに溶解した後, 両者を混合して包接し, 包接された油性物質を溶媒に溶解してTLG-FID法により, それぞれの油脂成分を定量した.α-CDは, オレイン酸を包接するがコレステロール, トリオレインを包接しなかった.β-CDは, コレステロールを包接した.γ-CDは, オレイン酸, コレステロール, トリオレインを包接した.これらの結果よりCDは油性物質を選択的に包接することがわかった.α-CDによる脂肪酸の飽和包接量及び結合定数は, 脂肪酸の鎖長の増加につれて増大し, 鎖長が長いほど安定な包接化合物となった.一方, β-CDとコレステロールの系での飽和包接量は, β-CDの水に対する溶解度が低いため少ないが, 結合定数は大きく, コレステロールはβ-CDに安定に包接された.しかし, γ-CDと油性物質の系では, γ-CDの断面積が大きすぎるため, その包接量は全体に少ないことがわかった.