著者
橋本 智也
出版者
京都光華女子大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

研究目的本研究の目的は、日本の大学が「データに基づいた中途退学防止策」を検討する際に活用できるモデルを構築することであった。研究方法研究目的の達成のため、日本と米国の制度・環境の違いを考慮しつつ、日米の大学で行われている中途退学防止に関する研究・実践を調査・整理し、日本の多くの大学が応用できる内容を検討した。日本については、雑誌論文を中心に網羅的な文献調査を行った。米国については、日本への応用可能性を考慮して、日本の現状(知見の共有・蓄積が不十分な状況)に類似した年代に焦点を絞って調査した。また、IRに携わる専門職協会(Association of Institutional Research)の開催する国際大会に参加し、情報収集を行った。研究成果日本の文献では、主なものとして、以下の文献が知見の共有・蓄積に役立つと考えられる。丸山(1984)は、中途退学を説明するモデルについての米国の先行研究を整理するとともに、それらのモデルを基に、日本の調査データを用いて、各学部の環境要因が学部の退学者数・退学率に与える影響を検証している。また、姉川(2014)は、中途退学を扱っている各種調査の結果を整理するとともに、先行研究で中途退学と関連があるとされた要因について、公開データを用いて検証を行っている。米国の文献では、主なものとして、以下の文献が役立つと考えられる。Spady(1970)は従来の研究について、経験的な知見の間につながりがないことを指摘し、理論的基盤を持つ共通の枠組みの中で経験的知見を統合していく必要があることを主張している。Tinto(1975)は学生が大学に学術的・社会的に統合されるかが中途退学の有無に影響するという具体的なモデルを提唱し、その後の研究・実践が発展する基礎となっている。日本と状況が類似した年代の米国の枠組み・方法を応用し、研究・実践の知見を統合・共有することで、日本の取り組みが、より効果的・効率的に進められると考えられる。
著者
橋本 智也 白石 哲也
出版者
四天王寺大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

日本のIRは担当者の量的拡大による導入期を過ぎ、現在はIR活動の質的向上が急務となっている。IR活動が有効に機能するためには専門性を備えた人材がいるだけでは不十分であり、その専門性が各大学の文脈の中で活用される必要がある。本研究は①「大学が期待する成果」、②「必要となる専門性」、③「IR担当者が実際に持つ専門性」の相互構造に着目し、IRの専門性が大学の文脈に合致して活用されるための促進要因と阻害要因を解明する。さらに自大学がIRに期待している内容を明確化するためのルーブリックを開発する。本研究により大学側の期待とIR担当者の専門性のミスマッチを解消し、日本のIRを有効に機能させることを目指す。
著者
橋本 智也
雑誌
研究報告教育学習支援情報システム(CLE)
巻号頁・発行日
vol.2015-CLE-15, no.1, pp.1-5, 2015-01-24

大学には,質を伴った学修時間の増加・確保と,改善を組織的に継続させる内部質保証の体制整備が求められおり,その実現のためにはデータに基づく検証システム (institutional research;IR) の確立が有効とされる.しかし,その具体的な分析方法,組織的な取り組み方については,研究の蓄積が十分ではない.そこで,本研究では,学生の学修時間を質・量ともに向上させるための組織的な取り組みを行った.具体的には,学生の学修時間と成績・意欲の関係について分析を行い,その結果を学内で共有した.さらに改善のための取り組みを進めている.その具体的な分析方法と実施体制を報告し,取り組み内容が一定の条件の下,他大学でも応用可能であることを示す.