著者
笠原 正治 高橋 豊 増山 博之 橘 拓至
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

P2Pネットワークに代表されるオーバレイネットワークにおいては,トランスポート層より上位のオーバレイレベルでの制御によってデータ転送が行われるため,オーバレイネットワークにおけるファイル転送遅延は論理ネットワークと物理ネットワークの双方のトポロジーに大きく依存すると考えられる.研究期間においては,まず最初の検討として,物理ネットワークとして4ノード・4ルータで構成される代表的な4種類のトポロジーを考え,論理ネットワークと物理ネットワークのトポロジー構成がファイル転送遅延に与える影響について,2層型待ち行列網モデルを用いて評価を行った.数値例において,物理トポロジーと論理トポロジーが一致する場合に遅延が小さくなる傾向にあること,また論理トポロジーの形状によっては物理トポロジーに依らず負荷に対して遅延が急激に増大することが観察された.次にP2P上の実時間サービスとしてSkypeに着目し,呼設定処理に対する動的負荷分散機構の有効性を解析的に検証した.具体的には,一般ユーザの参加を非斉時ポアソン過程でモデル化し,ノード数とスーパーノード数で規定される2変数確率過程が満たす微分方程式を導出した.数値例より,P2P型のユーザ管理方式を用いたサービスではクライアント・サーバ型方式よりも安定したサービス品質を保障できることが示された.最後に,フラッディング検索機構を有するファイル共有型P2Pネットワークに対し,4端末・4ルータ物理網より構成されるP2P網を二層型待ち行列網でモデル化し,論理レベルと物理レベルのトポロジー不一致性とフラッディング検索機構がファイル取得時間に与える影響を定量的に評価した.数値実験より,高いノード次数を持つネットワークトポロジは低負荷時において性能が高い一方,高負荷時には急激に性能が劣化することが判明した.