著者
倉谷 和彦 増山 博之 笠原 正治 高橋 豊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.203, pp.87-92, 2008-09-04

近年,インターネットを利用した実時間通信サービスとして,Peer-to-Peer (P2P)技術に基づいたユーザ管理機構をもつSkypeが注目を集めている.Skypeではユーザノードから選ばれたスーパーノードによってユーザ情報の管理,呼設定,Network Address Translation (NAT)越えの中継がなされており,スーパーノードはユーザノード数に応じてその数を動的に増減させることで負荷の分散を図っている.本稿ではこの機構に着目し,スーパーノード利用型P2P実時間通信網の負荷分散性能を解析的に検証する.具体的には,一般ユーザの参加を非斉時ポアソン過程で表現したM(t)/M/∞待ち行列モデルでユーザノード数の状態確率を計算する.数値例より,ピアノード数が大規模に変動する環境下においても,スーパーノードに対する負荷を高めることなく実時間サービスを提供できることが明らかにされた.
著者
増山 博之
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.671-677, 2014-11-01

「解けない」待ち行列の系内客数分布や待ち時間分布は,しばしば,ある種の構造化マルコフ連鎖の定常分布として数値的に求めることになる.しかし,その構造化マルコフ連鎖の遷移確率行列が無限次元である場合には,何らかの方法で遷移確率行列を切断してから,計算機実装を行う必要がある.無論,切断された遷移確率行列から得られる定常分布は,本来求めるべき定常分布に対する「近似」である.本稿では,「最終列増大切断」によって得られる定常分布の誤差上界と,その導出に必要となる確率行列の「単調性」について述べる.また,関連する結果についても言及する.
著者
笠原 正治 高橋 豊 増山 博之 橘 拓至
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

P2Pネットワークに代表されるオーバレイネットワークにおいては,トランスポート層より上位のオーバレイレベルでの制御によってデータ転送が行われるため,オーバレイネットワークにおけるファイル転送遅延は論理ネットワークと物理ネットワークの双方のトポロジーに大きく依存すると考えられる.研究期間においては,まず最初の検討として,物理ネットワークとして4ノード・4ルータで構成される代表的な4種類のトポロジーを考え,論理ネットワークと物理ネットワークのトポロジー構成がファイル転送遅延に与える影響について,2層型待ち行列網モデルを用いて評価を行った.数値例において,物理トポロジーと論理トポロジーが一致する場合に遅延が小さくなる傾向にあること,また論理トポロジーの形状によっては物理トポロジーに依らず負荷に対して遅延が急激に増大することが観察された.次にP2P上の実時間サービスとしてSkypeに着目し,呼設定処理に対する動的負荷分散機構の有効性を解析的に検証した.具体的には,一般ユーザの参加を非斉時ポアソン過程でモデル化し,ノード数とスーパーノード数で規定される2変数確率過程が満たす微分方程式を導出した.数値例より,P2P型のユーザ管理方式を用いたサービスではクライアント・サーバ型方式よりも安定したサービス品質を保障できることが示された.最後に,フラッディング検索機構を有するファイル共有型P2Pネットワークに対し,4端末・4ルータ物理網より構成されるP2P網を二層型待ち行列網でモデル化し,論理レベルと物理レベルのトポロジー不一致性とフラッディング検索機構がファイル取得時間に与える影響を定量的に評価した.数値実験より,高いノード次数を持つネットワークトポロジは低負荷時において性能が高い一方,高負荷時には急激に性能が劣化することが判明した.
著者
倉谷 和彦 増山 博之 笠原 正治 高橋 豊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.524, pp.187-192, 2008-02-28

近年,Session Initiation Protocol (SIP)ベースのインターネット電話に代わる電話サービスとして,Peer-to-Peer (P2P)技術に基づいたユーザ管理機構をもつSkypeが注目を集めている.Skypeではユーザ情報はユーザノードから選ばれたスーパーノードによって管理されており,ユーザノード数に応じてその数を動的に増減させることで負荷の分散を図っている.本稿では,このユーザ管理機構に着目し,呼設定処理に対するP2P型動的負荷分散機構の有効性を解析的に検証する.具体的には,一般ユーザの参加を非斉時ポアソン過程でモデル化し,ユーザノード数の満たす状態確率微分方程式に対してStationary Peakedness Approximation法によって時間依存の状態確率を計算する.数値例より,P2P型のユーザ管理方式を用いたサービスでは,能力の高い中央サーバを用いた場合のクライアント・サーバ型方式に匹敵し,初期設定時間の観点から見て安定したQoSの保証が実現できることが示された.