著者
土井 健史 井上 豪 橘 敬祐
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ヒストンH3K9を特異的にメチル化するSETDB1について、その酵素機能を制御する分子機構を解析した。(1)SETDB1のモノユビキチン化修飾がH3K9me3活性を介して、遺伝子発現を制御していることを明らかにした。また、その制御機構に関わる因子として、クロマチン制御因子であるTRIM28を同定した。(2)核内のSETDB1がプロテアソーム阻害剤と核外排出阻害剤によって増加し、それに関わる候補因子を見出した。(3)SETDB1-MCAF1のX線結晶構造解析を行うため、蛋白質の精製および結晶化を試みた。本研究で明らかとなった知見は、SETDB1を標的とした新たながんの治療薬の開発につながる。
著者
橘 敬祐 近藤 昌夫
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.20-26, 2020-01-25 (Released:2020-04-25)
参考文献数
63

イツの哲学者ヘーゲルは、事物の螺旋的発展の法則を提唱している。これは、事物の発展はあたかも螺旋階段を昇るように進むという法則であり、技術の進歩に伴い、古く懐かしいものが新たな価値等を伴って再び現れてくることを意味している。さて、単細胞生物から多細胞生物への進化の過程において、生物は生体内外を隔てるバリアとして上皮を獲得してきた。上皮は化学物質、細菌、ウイルス等の生体外異物の生体内侵入を防ぐこと等で恒常性維持に深く関わっている。当然のことながら、上皮は薬の吸収障壁となるため、古くから上皮バリア制御は薬物吸収促進の基本戦略となっている。実際、すでに半世紀以上前には、キレート剤によるヘパリンの粘膜吸収促進の報告がなされ、上皮バリア制御による吸収促進のコンセプトは提起されていた。1982年になると上皮バリアの脂質ミセル説が提唱され、中鎖脂肪酸等を用いた吸収促進技術の開発につながっている。その後、1993年のオクルディンの発見に端を発した上皮バリアの生物学の急速な進展に伴い上皮バリアの分子基盤が詳らかにされ、今まさに吸収促進技術が螺旋的発展を遂げつつある。本稿では、上皮バリアの生物学の発展に伴う吸収促進技術の螺旋的発展を概説し、バイオ医薬のDDS技術としての現状と課題を議論したい。